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コラム

川端 暁彦の千態万状Jリーグ

2016/4/25 16:01

「三者三様」U-23チームのJ3参戦はいかに(♯35)

明治安田生命J3リーグ。2014年に設置された新しいディビジョンに今季から「U-23チーム」が参戦している。FC東京、G大阪、C大阪の3クラブが参戦となったが、考え方や運用方法は「まさに三者三様」(G大阪運営スタッフ)となっている。

2014年のリーグ創設から、明治安田生命J3リーグには「Jリーグ・アンダー22選抜」が参戦してきた。リオ五輪代表チームの強化を大きな目的としていたこのチームは、リーグ各節ごとに試合に出られない、あるいは試合予定のない五輪世代の若手選手たちを招集。言うなれば試合のたびに急造チームを編成してゲームをこなしてきた。

 リオ五輪出場に大きく貢献した櫛引。「Jリーグ・アンダー22選抜」での経験が自信に繋がったに違いない
リオ五輪出場に大きく貢献した櫛引。「Jリーグ・アンダー22選抜」での経験が自信に繋がったに違いない

この試みが、特にGKのような試合経験を積みにくいポジションの選手にとって恩恵となったのは確かだ。1月のAFC・U-23選手権(リオ五輪アジア最終予選)における櫛引 政敏の活躍は記憶に新しいが、彼が単純に所属チームでポジションを失ったままこの大会に臨んでいたら、自信を持ってのプレーができたか疑わしい。また選考という意味でも、試合に出られていない選手たちの状態をチェックするという意味で手倉森 誠監督にとって重要な機会になった。

ただ一方で、代表チーム強化の文脈を離れて考えたときに、「若手育成」という意味では問題点も見え隠れしていた。個人的に最も大きな問題を感じていたのは、継続性の欠落である。選手やチームは「マッチ(試合)―トレーニング(練習)―マッチ(試合)」のサイクルで成長していくものだが、この方式では試合で出た課題をトレーニングに反映することは難しく、仮にできたとしても、次の週に試合があるかどうかは分からないという流れになる。個の成長という意味で、練習と試合がリンクしない方式には、どうしても限界があった。育成は長い目で選手を観ていくことが必要不可欠なのだが、「五輪に向けた選手選考」という色合いが強い中ではそれも難しかった。

現在Jリーグの副理事長を務める原 博実氏(当時・日本サッカー協会専務理事)が、Jリーグ・アンダー22選抜の発足に際して「理想はあくまでセカンドチーム保有だと思っている」と前置きしていたのも、こうした欠点があることを見越していたからだろう。リオ五輪の最終予選が終わり、もはや代表強化の文脈からもチームの必要性が薄くなった今季からJ-22選抜は解散。代わって、J1・J2のクラブがU-23チームを発足してJ3に参戦できる新たなレギュレーションが導入されることとなった。

勝つことにこだわる。F東23の安間監督の姿勢は若い選手たちに刺激を与え、真剣勝負の意味を唱えている
勝つことにこだわる。F東23の安間監督の姿勢は若い選手たちに刺激を与え、真剣勝負の意味を唱えている

参戦した3クラブ共にチーム最大の目的は「若手を鍛えること」にあるのだが、その対応は少し違っている。トップとU-23があくまで一体になったチームとして活動し、試合に際してトップに出る選手とJ3に出る選手を分けるFC東京のアプローチは、制度導入に際して強くイメージされていた方法だろう。一方、C大阪のようにU-23チームをU-12(小学生)・U-15(中学生)・U-18(高校生)の三世代に分かれている育成年代のチームとトップチームの間に設ける新チームとして位置付け、開幕前のキャンプから既に別チームとして活動し、強化してきたチームもある。G大阪はその中間狙いで、練習の質を下げないためにトップチームのトレーニングに参加する選手は限定しつつ、そこで出場機会のなかった選手はJ3に出すという方式だ。

 G大23でここまで6戦4発と結果を残している堂安。トップチーム昇格に向けさらなるアピールに燃えている
G大23でここまで6戦4発と結果を残している堂安。トップチーム昇格に向けさらなるアピールに燃えている

クラブごとの事情もあってどれが正しいと単純に言えるものでもないが、練習試合では味わえない「熱」をもったゲームが展開されているのは間違いない。私が取材したFC東京とG大阪のU-23対決では、FC東京U-23の安間監督が「今日のテーマは勝つことだけだ」と選手を煽って送り出し、レベル云々を超えた部分で熱戦が展開されることになった。こうした試合で場数を踏んでいくことはきっと選手の糧になるだろうし、真剣勝負だからこそ見えた課題についても、翌週からのトレーニングに反映されることも間違いない。

「19歳になった途端に真剣勝負の機会がなくなる」というのは、日本サッカー積年の課題。運用方法やレギュレーションを含めてU-23チームの在り方についてはまだまだ議論を重ねていくべきだろうが、G大阪のMF堂安 律が「もう腐ったりしないですよ。ここで健太さんにアピールするしかないんですから!」と言い切り、DF野田 裕喜が「成長している手ごたえはある。トップに上がったというニュースを(出身地の)熊本のみんなに届けないといけない」とハッキリ語る様子を観る限り、U-23チームのJ3参戦が若手にとってポジティブな刺激になっているのは確かなようだ。

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