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コラム

城福浩のサッカー観・戦・術~Supported by スカパー!

2016/1/8 12:30

「リスクマネジメント編」(#5)

みなさん、こんにちは。城福浩です。

『城福浩のサッカー観・戦・術』は、サッカーの戦術について、映像を交えながら解説しているコラムです。前回は守備側の立場に立ち、『動かされない守備』をテーマに解説しました。この連載の最終回となる第5回目は、前回と同様守備側の立場に立ち、ゴールを奪われないための攻撃時の『リスクマネジメント』をテーマに解説していきたいと思います。

■サッカーのおけるリスクマネジメントとは
まずは本題に入る前に、『リスクマネジメント』の概念について整理しましょう。リスクマネジメントとは、相手にカウンターをさせないための準備のことを指します。ボールを失った時にボールへプレッシャーを掛けに行くことが相手のカウンターに対する守備の対処法の一つですが、自チームが攻撃時でも相手のカウンター攻撃に備える準備を整えておくことも重要です。カウンター攻撃はゴールを奪うための有効な手段の一つですから、リスクマネジメントは失点を回避するための重要な守備戦術の一つでもあるのです。

■鹿島アントラーズの徹底したリスクマネジメント
それでは、具体的な映像を交えながら、リスクマネジメントについて解説いたします。今回の第5回目のコラム『リスクマネジメント編』では、8月29日に行われた明治安田生命J1リーグ 2ndステージ第9節 川崎フロンターレvs鹿島アントラーズと11月7日に行われたJ1リーグ 2ndステージ第16節 鹿島アントラーズvs横浜F・マリノスのゲームをピックアップしました。まずは映像をご覧ください。

まずは川崎Fvs鹿島のシーン①を見てみましょう。鹿島の攻撃時の場面で、鹿島のセンターバックがコミュニケーションを取り、相手選手のマークの確認をしています。このシーン①では相手のカウンターを浴びる場面にはつながりませんでしたが、相手のカウンター攻撃を食らうリスクを想定して、鹿島のセンターバックがその準備を怠らなかったワンシーンと言えるでしょう。

続いて鹿島vs横浜FMの試合に移ります。シーン②とシーン③を見てみましょう。このシーンでも鹿島は攻撃時にセンターバックがコミュニケーションを取り、相手選手のマークの確認をしています。横浜FMのカウンターに備え、相手選手との距離を縮めて、自チームが攻めている間でもすでにカウンターを受けた際の守備の準備をしています。

さらにシーン④を見てみましょう。鹿島の攻撃時にセンターバックがコミュニケーションを取り、相手選手のマークの確認をしています。さらに鹿島の最終ラインの選手はたとえ自分たちが攻撃をしている場面であっても、相手選手との距離を縮め、しっかりとマークに付いています。横浜FMの3選手が攻め残っている状況に対して、鹿島は両サイドバックが攻撃参加を自粛し、相手のマークに付き、最終ライン4枚がそのまま後ろに残っている形である上に、さらに1枚のセンターバックが後方に余っている徹底ぶりです。

そしてボールを失った瞬間、小笠原選手は自分がマークしていた選手へのパスコースを消しながら、ボール保持者へプレッシャーを掛けています。このプレーは目立ちはしませんが、非常に賢いプレーです。最後は小笠原選手のプレッシャーによって、パスコースが限定されたため、難なくセンターバックが相手の縦パスのインターセプトに成功しています。シーン④は自分たちの攻撃時でも、相手のカウンターに備えたリスクマネジメントが徹底されている場面と言えるでしょう。

鹿島はトニーニョ セレーゾ監督から石井 正忠監督に交代したあと、Jリーグヤマザキナビスコカップを制するなど、終盤戦に結果を残してきたチームです。第1回目の『相手を動かす~パスとポジショニングで動かす編~』では、鹿島の左右への揺さぶりで相手ゴールを脅かすシーンを解説しましたが、守備面でもゴールを奪われないための準備、すなわちリスクマネジメントをまったく怠っていないチームであることが今回のコラムを通じてご理解いただけたと思います。監督交代以降、鹿島が結果を残せた理由の一端をお分かりいただけたでしょう。

サッカー観戦をしている時、攻撃時においてはどうしてもその攻撃の方に目が行きがちですが、「攻撃している時にどう守備しているか?」という視点で見てみると、また新しい発見があるかもしれません。特に「ボールを失った後の奪うスピードが速い」と言われるチームがありますが、そういうチームほど「攻撃時の守備」には見応えがあると思います。

ここまで5回にわたって、攻撃側と守備側それぞれの立場に立ったサッカーの戦術について解説してきました。1つのボールを巡る22人の選手達が織り成す幾多のプレーに創造性や戦術が隠されています。ひとりでも多くの方にスタジアムまで足を運んでいただき、さらに視点を拡げて観ることでサッカーの魅力をより深く実感(体感)してもらいたいと熱望しています。

ありがとうございました! 

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