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コラム

城福浩のサッカー観・戦・術~Supported by スカパー!

2015/12/27 15:36

「選手の動きで動かす編」(#2)

みなさんこんにちは、城福浩です。

前回からスタートしました『城福浩のサッカー観・戦・術』は、サッカーの戦術について、映像を交えながら解説するコラムです。第1回目はサッカーの一番の魅力であるゴールシーンを生み出すために必要な『相手を動かす』戦術をテーマに、『パスとポジショニングで動かす』プレーについて解説しました。その続きとなる第2回は『選手の動きで動かす』プレーについて解説いたします。

『選手の動きで動かす』とは、第1回の『パスとポジショニングで動かす』ことと目的は同じで、ボールを受けようとする選手がポジションを移動し、相手のマークを引き付けることで、相手の最終ラインに影響を与えて、決定的なチャンスを生み出すことが目的になります。ある選手が動くことで、その選手のマーカーがボールに行くべきなのか、そのままマークすべき選手に付いていくべきなのか、それともパスコースを切ったほうがいいのか、混乱させることで最終ラインに影響を与えることができます。それでは『選手の動きで動かす』プレーについて、具体的な映像を交えながら、解説していきましょう。

■中村俊輔の存在感
一つ目の映像は2015年10月24日に行われた明治安田生命J1リーグ 2ndステージ 第15節 川崎フロンターレvs横浜F・マリノスにおける前半のワンシーンです。

丸印でかこった横浜FMの中村 俊輔選手の動きに注目してください。この場面では中村選手がボールを受けに行こうと外へ動くことで相手ディフェンダーを外につり出しています。そして、中村選手に川崎Fの選手が付いていくことで、中にスペースができました。さらに丸印が付いた選手は、味方からの縦パスが入った瞬間に、中村選手が空けたスペースを突いています。最後はポストプレーで落とされたボールをスペースへ侵入した選手がシュートを放ち、ゴールこそなりませんでしたが、決定的なシーンを作り出しました。

この中村選手の動きに相手ディフェンダーが付いていったことで、本来いるべきポジションにセンターバックがいない状況を作り出すことに成功しています。相手ディフェンダーの立場に立つと、その空いたスペースに本来はセンターバックがいるべきですが、そのポジションに居続けることで中村選手にパスを出される危険性があります。相手ディフェンダーはいるべきポジションにステイする(居続ける)という選択肢もありましたが、このエリアで中村選手にボールに触らせたくないと思わせるぐらいの存在感があるからこそ、付いていくという選択をしたのでしょう。中村選手がボールに触らなくとも最終ラインに影響を与えている、つまりこのシーンは『選手の動きで動かす』という戦術の典型的な例と言えるでしょう。

■川崎フロンターレの見事なゴール
二つ目は2015年9月19日に行われた明治安田生命J1リーグ 2ndステージ 第11節 川崎フロンターレvs名古屋グランパスにおけるワンシーンです。

中村 憲剛選手にボールが入ると同時に、川崎Fの2人の選手が矢印の方向に動くことで相手ディフェンダーを2人動かしています。そして2人の相手ディフェンダーを動かしたことによりできたスペースへ、別の選手が走り込み、ボールを受けます。それに加えてこの選手がスペースに走り込むことで相手ディフェンダーがサイドをカバーするために食い付き、センターにもスペースができました。さらにはセンターにできたそのスペースを他の選手が突き、サイドでボールを受けた選手が中の選手にパスを出し、そのパスをワンタッチでスペースに入ってきた選手へ展開。それをこれまたワンタッチでフリーで待つ大久保 嘉人選手へグラウンダーのパスを通して、ゴールへとつなげたシーンです。

中村選手にボールが入ったあと、相手ディフェンダー2枚が食い付いてスペースを空けた状態を見逃さずに、中盤の選手は見事にその動きに呼応しています。あれほど最終ラインにスペースが空いた理由は、2枚のディフェンダーが選手の動きに食い付いているため。攻撃側の観点で見れば、1本のパスで相手ディフェンダー2人を食い付かせることは意図どおりでしょうし、2度大きなスペースを見付けて、そこを突くなど、モビリティーにもあふれたプレーだと思います。攻撃側の視点に立てば、素晴らしいゴールシーンでした。

サッカーの醍醐味であるゴールを奪うためには、『相手を動かし、最終ラインを動かす』ことが重要で、今回のコラムでは『選手の動きで動かす』プレーが効果的な方法論の一つであることを話してきました。

今後、スタジアムやテレビ中継を問わずに、選手の動きで相手を動かし、最終ラインに影響を与えるプレーに注目する視点でJリーグを観戦してみると、今までとは異なるサッカーの世界が見えるかもしれません。

次回は『縦に剥がす』プレーについて解説いたします。次回もよろしくお願いいたします。

(#3へ続く)

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