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コラム

川端 暁彦の千態万状Jリーグ

2015/8/28 16:37

日本とアルゼンチンの「文化の衝突」に見えた国際経験の意味と価値(♯21)

8月27日、Jリーグが後援する『U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ』が東京都内のヴェルディグラウンドにて開幕を迎えた。スペインのFCバルセロナとRCDエスパニョール、U-12ベトナム代表、アルゼンチンのデポルティボ・カミオネーロスが来日。日本からは鹿島、浦和、大宮、柏、東京V、川崎F、横浜FM、名古屋、C大阪のU-12チームが参戦し、これにタウンクラブの2チームを加えた計16チームが30日の決勝を目指して熱戦を繰り広げている。

FCバルセロナなど各国から計4チームが来日
FCバルセロナなど各国から計4チームが来日

初日の模様を取材してみて、特に深い印象を受けたのはアルゼンチンから来たデポルティボ・カミオネーロスだ。歴史も浅く、ボカやリーベルのようないわゆるビッグクラブではないのだが、逆にアルゼンチンという国の「素」が見えたような感覚があった。

初戦でカミオネーロスと対戦したのは柏レイソルU-12。Jリーグのアカデミーの中でも指折りの競争力を持つチームが、未知の相手に挑んだ。序盤はカミオネーロスが柏の素早いボール回しに圧倒される形となり、3分と10分に早くも得点が生まれる。だが、カミオネーロスが柏のサッカーに慣れてくると、試合の様相がガラリと変わっていった。

球際に激しかったデポルティボ・カミオネーロスの選手たち
球際に激しかったデポルティボ・カミオネーロスの選手たち

ボール扱いにおいて、いわゆる「上手さ」を感じさせる選手はそう多くない。だが、とにかく戦う。食らい付く。激しくぶつかる。「球際でガツガツ来て、シンプルに激しい」(柏U-12・平山智規監督)相手に対し、柏のパスワークが乱れ始める。「足元に入り過ぎたようなボールは全部狙われた」(同監督)。自由なポゼッションを阻害されるなかで、徐々に試合のペースが変わっていく。19分にカミオネーロスが1点を返して見えなくなった試合は、33分のPKによる同点ゴールで混沌の深みにはまった。

U-15日本代表の森山佳郎監督は「日本は守備で“止まる文化”になってしまっている」と嘆いていたのを思い出す。アプローチをしても足元にあるボールを奪いに行かず、「止まる」。これに対し、アルゼンチンの選手はとにかくアグレッシブにボールへトライする。一歩間違えば危険なラフプレーだが、ためらう色は皆無。柏の選手たちが浮かべた戸惑いの表情は、「文化の違い」ゆえであり、それは同時に若年層で国際経験を積む意義も示していたように思う。

接戦を制し貴重な国際経験を積んだ柏U-12
接戦を制し貴重な国際経験を積んだ柏U-12

結局、試合は柏が決勝点を奪って決着するのだが、アグレッシブなドリブル突破から生まれたこぼれ球を蹴り込んだ形は、カミオネーロスに引き出されたもののようにも見えた。平山監督は「今年は勝ちたいという気持ちが薄くなっていることがあったが、今日は最後に『こいつらには絶対に負けられない!』という気持ちを出してくれた」と、同点に追い付かれてから子どもたちが見せた終盤の奮起を喜んだ。

近年、国際舞台におけるJクラブ、日本代表の苦戦が問題視されるようになってきたが、その原因はどこかの魔法使いがパッと解決してくれるようなものではあるまい。この大会のような場で若年層から地道に積み上げていくことこそ、未来に繋がる道だろう。

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