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コラム

北條 聡の一字休戦

2015/7/19 15:15

空中戦をめぐるJの弱みとジェイの強み(♯19)

サッカーで「頭を使え」と言えば、意味はふたつ。ひとつは頭脳で、もうひとつはヘディングのことですね。日本語に訳せば『頭』突き――。実際はヘッドバットというプロレス技の訳ですが。同じフットボールでも頭に「アメリカ式」が付くと、ヘディングは禁じ手。というか、ヘルメット着用ですね。かつてアメリカ人ジャーナリストが「なんと野蛮な!」とヘディングにケチをつけておりました。そう言えば、数年前に医学誌『ラジオロジー』で物騒な調査結果が発表されていたようで……。

ヘディングを何度も繰り返していると、脳に損傷が起きる恐れがある――と。詳細は省きますが、いずれ禁じ手になるんでしょうか?

J史上最長身選手は千葉でプレーしたノルウェー人のオーロイ。204センチと驚異の高さを誇った。
J史上最長身選手は千葉でプレーしたノルウェー人のオーロイ。204センチと驚異の高さを誇った。

反アメリカ式フットボールでも。イングランド中部のシェフィールド・ウェンズデイの選手が「ヘディング」を編み出してから100年余り。いまさら変えちゃったら別のスポーツですね。フットボールと名乗りつつも「手」以外はどの部位でも使える懐の深さ(?)が魅力的。頭を堂々と「武器」として使えるなんて、ほかにプロレスくらいでしょうね。

極端な話、足よりも頭をフル活用した戦法も成り立つ凄さ。1990年代半ばから後期にかけて強かった北欧ノルウェーは「ヘッドボール」とでも言うべきやり方で、世界の強国と堂々と渡り合っていました。長身選手の高さ(つまりヘディング)を十全に生かすロングボールに最も苦しめられたのが王国ブラジル。当時のマリオ・ザガロ監督は敗れるたびに「あんなものは『フットボール』じゃない!」と怒っていました。でも、憲法違反……いや規則違反じゃないですからね。

先日、現役引退を表明したケネディは、名古屋時代に2年連続得点王に輝いた。
先日、現役引退を表明したケネディは、名古屋時代に2年連続得点王に輝いた。

概してブラジルのような「技術大国」はノルウェーのような「巨人大国」が天敵でして……。日本も苦手でしょうね。ヘディングが圧倒的な高さとリンクする巨人を前にすると、もうヘビに睨まれたカエル。Jの弱み――ですね。先日、現役引退を表明したジョシュア・ケネディさんも名古屋に在籍した当時、2年連続得点王。194センチの高さを生かす空中戦は『二階からのヘッドバット』みたいな趣でした。かつてヴェルディ川崎やガンバ大阪でゴールラッシュを演じた192センチのマグロンさんも思い出深いひとり。怪我がなければ、もっと活躍したでしょうね。

高さはあっても「頭突き」は苦手。実は足元の方が得意というタイプもいます。かつてのナイジェリア代表の英雄ヌワンコ・カヌがそうでしたね。手に負えないのは足でも頭でもイケる「空陸自在」の巨人。ジュビロ磐田の巨砲ジェイさんのことです。190センチ。ケネディさんに4センチ、マグロンさんには2センチ足りませんが、空中戦のド迫力は圧巻です。7月18日のジェフユナイテッド千葉との大一番。互いに譲らぬ激戦にケリをつけたのが、クロスを押し込む豪快な「頭突き」でした。

「空陸自在」の巨人ジェイは、他クラブが羨む磐田のアドバンテージに。
「空陸自在」の巨人ジェイは、他クラブが羨む磐田のアドバンテージに。

まるでバスケットボールの「スカイプレー」を思わせる一発。原則、陸路で攻める磐田がここ一番で「空路」を使い、千葉を仕留めました。この『上からジェイ』という決め手は強力。分かっちゃいるけど止められない、という感じでしょう。追い込まれたケースでの奥の手(パワープレー)としても使えるわけですから大きいですね。陸路で打つ手(足?)がなくなっても、空路なら打つ「頭」がある。他クラブも羨む磐田のアドバンテージと言えそうです。

千葉にも204センチという超のつく巨人(オーロイさん)がいましたが、いま何処……。巨人の少ない日本ではロングボールやハイクロスを軸にした攻め手が選択肢から外れやすいので、対策を講じにくいのが現状でしょう。仕方がありません。今も昔も、これからも、強力な頭突きをかます巨人は重宝されるはずです。J(リーグ)の弱みとJ(ジェイ)の強み。サックスブルーのみなさま、目的地(J1昇格)まで、どうぞごゆっくり「空の旅」をお楽しみください。

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