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コラム

青山 知雄の悠々J適

2015/4/10 12:39

これだからアウェイ遠征はやめられない(♯6)

「それでさー。ゴールデンウィークどうするの?」
せっつくような質問を受けて、大型連休の予定を全く決めていないことに気がついた。

通常ならそろそろ準備をし始めなければマズイ時期……というか遅いくらいだ。
新幹線は1カ月前から指定席の予約が始まり、ほとんどの飛行機は3カ月前から空席を押さえることができる。そして大半の国内パックツアーは出発の1週間~3日前が申し込み期限だ。そもそも直前に決めても空席やホテルの空室が残っているわけがない。早くスケジュールを固めなければ、どうもこうも身動きが取れなくなってしまうわけだ。

例年、2月上旬にJリーグのスケジュール(というか対戦カード)が発表される。そこから「この時期に、このカードが大一番になって……」と勝手に計算しながら楽しむ一方、一年間の動きがほとんど決まってしまうことから「今年はこのタイミングであそこへ行って……」と不思議と終わりが見えてしまう感じがあるのも事実。と同時に、「移動手段と宿を確保しなければ!」と動き始める必要を感じながら、ついつい先送りにしてしまうのであった。

敵地に足を運ぶアウェイチームのサポーター。
敵地に足を運ぶアウェイチームのサポーター。

ちなみに先日、某Jクラブのオフィシャルカメラマンと話をしたところ、やはり年間スケジュールが出た時点で移動手段と宿を押さえていると聞いた。まあ、予定が決まっている仕事だから当然かもしれないが、こちらは状況に応じて取材ゲームが変わるため、どうしてもギリギリまで行き先が決まらないことも少なくない。

サポーターの皆さんも年間予定を見た瞬間に、シーズン中の“遠征計画”を立てているのではないかと思う。どの試合に狙いを定めるのか。ゴールデンウィークやお盆の繁忙期に重なるアウェイゲームをどうするか。重要なゲームが続くかもしれないシーズン終盤まで資金を貯めておくのも一手だし、試合観戦に帰省を絡ませたり、観光やグルメを重視して行き先を決める人もいるだろう。せっかく遠方まで足を運ぶとしたら、ぜひ試合以外の楽しみにも目を向けていただきたいところだ。

個人的には昨年11月から松本山雅FCのJ1昇格(福岡県)、浦和レッズに優勝の可能性があったサガン鳥栖戦(佐賀県)、スカパー!ニューイヤーカップ(宮崎県&鹿児島県)、日本代表合宿(大分県)と、この5カ月で4回5県も九州に縁があった。周りからは「めっちゃ楽しそうじゃないっすか!」と言われるが、試合後には原稿がたんまりあるため、理想的なアウェイ満喫ツアーからは程遠いのが現実だ。

「最近、地方を楽しめてないなー」と思っていたところ、先週末に私用ながら、またまた九州は福岡へ足を運ぶ機会があった。ここで新鮮な気持ちを思い出させてもらった。現地で合流した同僚が初の九州上陸だったらしく、グルメと観光にものすごいモチベーションを見せたのだ。

現地のグルメはアウェイ訪問の楽しみの一つ。
現地のグルメはアウェイ訪問の楽しみの一つ。


「モツ鍋は絶対に食べたい」
「水炊きもマストでしょ」
「ラーメンはどうしましょうか」
「人気の天ぷら定食屋さんが天神にありますよ」
「福岡って長浜の屋台が有名なんですよね」
「うどんも名物らしいです」
「刺し身がオススメって聞きましたよ」
「お寿司もいいですね」
「あ、呼子のイカ活造りも!」
「締めはラーソーメンで決まり」
「太宰府天満宮に行ける時間ありますかね」
「朝から1時間くらい散歩しようかな」

結局、彼は3日間で太宰府天満宮以外のすべてをクリアし、さらに僕を置いて一人で豚骨ラーメンを食べに行っていた。このアグレッシブさが遠征を楽しむ一つの条件なのだろう。初めての土地に足を運び入れるワクワク感。そして現地の空気を肌で感じ、地元の人と接する喜び。最近、旅先であまり積極的になれていなかったが、懐かしい感覚が呼び起こされたように思った。

思えば昨年11月に鳥栖へ行った際、羽田空港発の早朝便には赤いユニフォームやマフラーを着用した浦和サポーターが大挙して乗り込んでいた。そして試合後は多くの方がホテルが充実している福岡市内泊を選び、博多の街をたくさんの浦和サポーターが楽しんでいたと聞いた。ガンバ大阪が優勝を決めた最終節の徳島では、スタジアムの近くにある徳島ラーメンの有名店に青黒サポーターが大行列をなしていた。Jリーグの試合を中心に旅程を組みながら、その土地を楽しむ。ホームタウンならぬ、“アウェイタウン”との出会いもまた、サッカーが結ぶ縁なのだろう。

アウェイスタジアムに駆けつけ、声援を送る浦和レッズのサポーター。
アウェイスタジアムに駆けつけ、声援を送る浦和レッズのサポーター。

メインイベントとなる試合も「アウェイ感」が気持ちを高ぶらせてくれること請け合いだ。どうしてもホームゲームに比べてサポーターが少なくなるため、いつもはメインスタンドやバックスタンドで観戦している方でも、アウェイはゴール裏で一緒に応援するという人が多いと聞く。「少数精鋭」という危機感と連帯感から応援に熱が入るし、顔見知りが増えたり、仲間ができやすいのもアウェイの良さだと思う。そこで勝てれば喜びもひとしおだ。

自分もかつては仲間と一緒に車に同乗して九州までサッカー観戦に出かけたことがあった。今は臨時の夜行快速になってしまった「ムーンライトながら」には何度も乗ったし、JFLではあったが真夏の平日デーゲームをサポーター8人で応援したことも忘れられない。チャーターした観光バスや貸切列車で宴会をしながらアウェイのスタジアムへ向かったこともある。往復の車内で新しい応援を考えたり、現地到着後の予定を相談したり、帰りのサービスエリアで選手バスと遭遇したり、次の遠征計画を立てたり。みんなでいろいろな土地へ足を運んで、美味しいものを食べて、とにかく楽しかったことを思い出した。アウェイ遠征をしたことのある方は、それぞれにたくさんの記憶が残っていることと思う。

のんびりと時間を過ごすのも良し。温泉やグルメを堪能するも良し。名所を観光したり、地方の友人に会ったりするのもいい。お酒や夜の繁華街も密かな楽しみの一つだと思う。「所変われば品変わる」という諺(ことわざ)のとおり、現住エリアでは味わえない新しい発見や出会いがあるはずだ。まだアウェイ遠征を経験したことのない方がいらっしゃったら、騙されたと思って、近場でいいので一度アウェイに行く……だけじゃなくて十分に楽しんでもらえたらと思う。そして、せっかくの遠征で「ジプシー」にならぬよう、移動手段と宿泊先は早めの手配をオススメしたい。

さて、今年のゴールデンウィークはどうしようか。いろいろ思い出したところまでは良かったが、せっつかれていながら肝心のスケジュールが全くの未検討だったことを今頃になって気がついた(苦笑)。

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