レポート
2015/11/23(月)00:27
速攻と遅攻を自在に使い分けた広島、湘南を圧倒し圧巻のステージ制覇【明治安田J1 2nd 第17節】
なんとも派手な展開で、サンフレッチェ広島が明治安田生命J1リーグ 2ndステージ王者に輝いた。
立ち上がりこそ湘南ベルマーレの素早いプレッシングの前にややボールが落ち着かなかったが、それも15分あたりまで。次第に相手の対応に慣れてくると、縦パス、サイドチェンジを折り混ぜながら、湘南のスキを探っていく。最大の強みとなったのは右サイドのミキッチだ。切れ味抜群の動きを見せたこのスピードスターが、相手の左ウイングバック菊池 大介の背後を攻略し、次々に好機を生み出していった。
24分の先制点もこのミキッチの突破がもたらした。深い切り返しでDFをかわすと、中央へグラウンダーのクロス。これをドウグラスが落ち着いて蹴りこみ、広島に一つ目の歓喜が生まれた。さらにその直後、今度は青山 敏弘が追加点を奪う。「あんなに良いシュート、普段はないんですけどね」と本人がおどけるほどの会心のミドルシュートだった。
そして前半終了間際の42分、スタジアムは最高潮を迎える。佐藤 寿人が左からのクロスを頭で合わせ、ついにJ1通算157ゴールの大記録を達成したのだ。「ホームのサポーターの前で決めることができて最高にうれしかったです」重要な試合で大仕事をやってのける、まさに千両役者の業だった。
「寿人さんがゴールを決めるとチームに勢いが出る」という青山の言葉通り、後半も広島の流れは変わらない。出てきた相手をうまくいなし、鋭いカウンターを打ち込む十八番のパターンで完全に相手を翻弄。72分、89分とドウグラスがふたつのゴールを加え、5-0と上り調子の湘南を圧倒した。
「速攻も遅攻も良かったし、自分たちのやりたいサッカーが90分間できた」と振り返ったのはボランチの森﨑 和幸。今季の広島の強みは悪い流れの中でも落ち着いて試合を進め、徐々に自分たちのペースに引き込みながら相手のスキを突く戦いを高いレベルで体現。遅攻でダメなら速攻で、速攻がダメなら、遅攻で。戦況に合わせた自在なスタイルで、勝利を積み重ねていったのだ。
年間勝点1位の座も確保した広島は、数字上でもその強さが際立つ。史上最多となる勝点74を手にし、得点数(73)、失点数(30)ともにリーグトップ。「毎試合毎試合勝ちにこだわって、1点にこだわってやり続けた結果だと思う」と青山は胸を張った。ただし、キャプテンはこうも続ける。「今日5点取りましたけど、もっと精度を高めていかないといけないし、高められればもっといいゲームが見せられると思う」
決して現状に満足せず、さらなる高みを目指し続ける。これが広島の強さの秘訣だろう。そしてその基盤となるのが森保 一監督の信念だ。指揮官は決して選手たちに特別なものを求めていない。「プロフェッショナルとして当たり前のことを当たり前にやる」。一方でそれが簡単なことではないことも理解している。だからこうも言うのだ。「当たり前なことをやり続けることが特別を生む」と。そう、この日、確かに広島は特別なものを手に入れた。