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伝統の底力を見せた鹿島が7年ぶり8度目のJリーグチャンピオンに【明治安田J1:Jリーグ原 博実副理事長 総括】

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2016年12月26日(月) 13:51

伝統の底力を見せた鹿島が7年ぶり8度目のJリーグチャンピオンに【明治安田J1:Jリーグ原 博実副理事長 総括】

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伝統の底力を見せた鹿島が7年ぶり8度目のJリーグチャンピオンに【明治安田J1:Jリーグ原 博実副理事長 総括】
年間勝点3位から大逆転でJリーグチャンピオンに輝いた鹿島。その勝負強さは世界相手にも発揮された

FIFAクラブワールドカップ ジャパン 2016(CWC)の鹿島の戦いぶりは非常に素晴らしいものでした。AFCチャンピオンズリーグ(ACL)で優勝して、CWCに出場するのが理想的な流れではありますが、開催国代表として初の決勝進出。レアル・マドリードに敗れたものの、欧州を代表するメガクラブを大いに苦しめました。

鹿島は大会を通じて、個に依存するのではなく、誰一人さぼらず、辛抱強く、チーム一丸となって戦っていました。まさに日本サッカーの長所と言える部分を示したうえで得た世界2位という結果は、他のJクラブに対しても「自分たちもやれるんだ」という大きな希望や可能性を与えたと思います。

CWCでの鹿島の躍進は世界中に驚きを与えた。とりわけ決勝のレアル・マドリード戦では一時逆転するなど伝統の底力を見せつけた
CWCでの鹿島の躍進は世界中に驚きを与えた。とりわけ決勝のレアル・マドリード戦では一時逆転するなど伝統の底力を見せつけた

その鹿島が王者に輝いた今季の明治安田生命J1リーグは、昨季に続いて2ステージ制を採用しました。これに対してはいろんな考え方やご意見があるかもしれませんが、鹿島はこのシステムを上手く生かしたと思います。1stステージでは最終節を前に川崎Fをかわして首位に立ち、そのまま逃げ切りに成功。CS出場権を得たうえで臨んだ2ndステージでは、主力の移籍や怪我人が続出する中で、なかなか結果を出せませんでしたが、試行錯誤を繰り返し、選手を入れ替えて競争心を植え付けながら、CSに向けてチーム力を高めていったと思います。

監督が休養してしまうなど一時期はチームが崩れかねない状況でしたが、結果的にそれもチームをより結束させる要素となったのかもしれません。苦しい状況を乗り越えて、再び這い上がってきた。鹿島の伝統の底力を改めて感じさせてくれたシーズンでした。なによりCWCの活躍で、久しぶりに日本サッカー界に明るい話題を提供してくれたのは嬉しいこと。連覇を目指す来季は、さらにスケールアップした姿を見せてもらいたいと思います。

ペトロヴィッチ体制5年目となった浦和。惜しくもリーグ優勝は逃したものの、ルヴァンカップでは久しぶりのタイトルを獲得した
ペトロヴィッチ体制5年目となった浦和。惜しくもリーグ優勝は逃したものの、ルヴァンカップでは久しぶりのタイトルを獲得した

その鹿島にCSで敗れた浦和ですが、シーズンを通して最も安定感があったチームだったのは間違いありません。大事な試合で力を出し切れなかった感は否めないものの、ルヴァンカップでは久しぶりのタイトルを手にしています。5年目を迎えたペトロヴィッチ監督のもとで、スタイルの成熟度はリーグ屈指と言えるでしょう。今季の悔しさをバネに、来季も再びタイトル獲得に向けてチャレンジしていってもらいたいです。

川崎Fにとっても、惜しくもタイトルを逃したシーズンでした。浦和と同様にスタイルが確立したチームであり、今季は結果的に風間 八宏監督の集大成のシーズンにもなりました。そのなかで、みんなでボールを動かしながら攻撃的に相手に向かう自分たちのサッカーというものは貫けたとは思います。ただし、浦和と同じように、大事なところで勝ち切れなかった。それでも、少なくともCS決勝に行くだけの力はあったと思いますし、結果的にCSに出場した3チームは、いずれも優勝してもおかしくないチーム力を備えていたと思います。そのなかで、勝負強さという側面で、他の2チームを上回った鹿島が、7年ぶりとなるリーグタイトルを獲得したわけですが、実に見応えのあるハイレベルなリーグ戦だったと思います。

昨季の優勝チームである広島と、2位のG大阪にとっては、満足のいかないシーズンとなったでしょう。ACLとの両立が上手くいかなかった印象で、いずれのコンペティションでも成果を出せませんでした。

広島は昨季の得点源だったドウグラスや、シーズン途中に成長著しい浅野 拓磨が移籍し、またハードなシーズンだった昨季の疲れが残ったまま今季を迎え、怪我人が続出した影響もあったでしょう。特に最終ラインに怪我人が多く生まれ、昨季のような安定した戦いができませんでした。決して選手層が厚いチームではないだけに、その部分がマイナスに働いてしまった感は否めません。

G大阪はチーム全体が高齢化するなか、いわば過渡期にあると言えます。世代交代というテーマと、結果を残すという作業の両立は決して一筋縄ではいかないもの。加えて、宇佐美 貴史の移籍や、パトリックの不調も想定外だったはず。とはいえそのなかで、井手口 陽介という新たなタレントが台頭してきたのは明るい材料で、タイトル争いには絡めなかったものの、来季につながる1年となったことは、G大阪にとって大きいと言えるでしょう。

昇格チームの大宮は、躍進のシーズンとなりました。昨季のJ2である程度確立したスタイルを、J1でも変わらず示せたことが何より大きかった。シーズン序盤に勝点を上積みできたことで、選手たちも自信を持ってプレーしていましたし、家長昭博のハイパフォーマンスも光りました。昇格1年目にして5位という結果は、称賛に値するものだと思います。

柏もインパクトを放ったチームのひとつでしょう。シーズン序盤に下平 隆宏監督に代わり、ユース出身の若手を積極的に起用。ディエゴ オリヴェイラやクリスティアーノといった爆発力のあるブラジル人選手の力ももちろんありましたが、思い切って若い選手に切り替えたことで、柏らしいアグレッシブさが、蘇ってきた印象です。特に若手を起用しづらいCBのポジションに中谷 進之介と中山 雄太という20歳前後の選手を抜擢しながら、結果を残せたのは何よりの成果でしょう。この1年で経験を積んだ彼らが、来季はさらに逞しい姿を見せてくれるのではないでしょうか。

クラブ史上初の降格が決定した名古屋は、来季J2の舞台で再起を誓う
クラブ史上初の降格が決定した名古屋は、来季J2の舞台で再起を誓う

一方で、名古屋の降格は大きなニュースとなりました。小倉 隆史監督のもとで新たなスタートを切りましたが、GM兼任の新人監督にとってはやや荷が重すぎたのかもしれません。シーズン終盤に監督を代え、田中 マルクス闘莉王を復帰させるなどテコ入れを図りましたが、一度失った流れを取り戻すことができず、クラブ史上初となる降格を味わいました。

その戦力を考えれば驚きの降格と言えますが、2010年に優勝して以降、下降線を描いていただけに、今回の降格はあるいはチームを再建する契機となるかもしれません。来季のJ2をどう過ごし、クラブとしてどう変革していくのか。名古屋にとってターニングポイントのシーズンとなるはずです。

福岡は1年で、J2に戻ることとなってしまいました。クラブの規模を考えれば、守備的な戦いを演じるのは致し方なく、井原 正巳監督も、いかに失点を抑えるかという戦略を打ち出していたことは感じられました。ただ、守備の意識が強すぎた感は否めません。慎重になりすぎ、相手に怖さを与えられなかったことが、結果につながらなかった原因でしょう。久しぶりのJ1に上手く対応できないままシーズンを終えてしまった印象です。

一方で湘南は永木 亮太や遠藤 航といった主力が移籍しながらも、限られた戦力の中でやるべきことはやっていたと思います。残念ながら降格してしまいましたが、臆することなく攻撃的なスタイルを貫いた。その意味では清々しさを感じられるチームでした。もちろんもっとやれたとサポーターは求めるでしょうが、湘南のスタイルはまるで失われていませんでした。来季のJ2でもそのスタイルは変わらないでしょうし、それがこのチームの強み。特徴のある市民クラブとして、湘南はひとつのカラーを確立したと言えるのではないでしょうか。

選手個々に目を向ければ、ベストヤングプレーヤー賞に輝いた井手口の台頭が、やはり目に付きました。とりわけリオ五輪後の彼のパフォーマンスは素晴らしく、G大阪でも中心選手となりつつあります。今後の成長が楽しみな選手であることは間違いありません。タイプは違いますが、同じポジションの大島 僚太も一回り成長を遂げた印象を受けます。CWCで活躍した昌子 源も、ディフェンスリーダーとしての貫禄を身に付けてきた選手でしょう。

GKではやはり、西川 周作の安定感が目に付きました。攻撃的な選手では、齋藤 学のパフォーマンスが素晴らしかった。あの仕掛ける姿勢は、今のJリーグではあまり見られないスタイルで、その特長を示しながらゴールもアシストも量産した。まだ決定機を逃す場面も見受けられるだけに、シュート精度をより高められれば、さらにすごい選手になっていくのではないでしょうか。

年間を通して攻撃的なサッカーを展開し続けた川崎F。チームの柱、中村 憲剛は年間最優秀選手に選出された
年間を通して攻撃的なサッカーを展開し続けた川崎F。チームの柱、中村 憲剛は年間最優秀選手に選出された

今季は、中村 憲剛や柏木 陽介といったプレーメーカーも輝いたシーズンでした。なかでも中村はそのパスセンスだけでなく、36歳となっても豊富な運動量を保ち、実に若々しいプレーを見せていました。川崎Fの躍進の立役者となっただけに、MVPを受賞したことは、当然の結果と言えるのではないでしょうか。

ストライカーとサイドバックは、ややインパクトを欠いたシーズンだったかもしれません。来季はこのポジションにも勢いのあるタレントの台頭を望みたいところです。

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