クラブハウスから練習場に出るための扉を押し開いた女性サポーターが思わず声をあげた。
「うわ、すごい!」
目に飛び込んでくるのはサポーターが掲げた “SPIRIT OF ZICO”など、選手を鼓舞する数々の弾幕。クラブハウス練習場のスタンドにはぐるりと弾幕が張り巡らされ、逆サイドのスタンドでは大旗を抱えた何人ものサポーターが静かに練習を見守っていた。
試合になれば圧倒的な声量で選手を支えるが、ここでは無言。しかし、その思いは、確実に選手に届いていた。
「単純に天気が良かったり、練習内容が良かったりという練習の雰囲気以外にも、そういうところで雰囲気をつくってくれるのは、すごく力を与えてくれる」
守護神としてクラブの歴史の多くを経験してきた曽ヶ端 準は、サポーターがつくった雰囲気をひしひしと感じていた。
「サポーターの人たちもゲームに向かって、僕たちに何かしたいという気持ちがそういうところに表れているんだと思いますし、そこに僕たちは応えたいと思う。そういう意味では、練習の雰囲気に、関わりを持ってくれることは嬉しいですし、外部的な要因ではありますけど、ピリッとした空気が生まれるところもあります。自分たち選手だけじゃなく、そういう力を貸してくれるところが、今日の練習でもあったと思いますね」
行われた紅白戦は、2ndステージの連敗が続いた時期とは明らかに違う内容だった。大一番が近づき入ったスイッチ。勝負所になると不思議と発揮される伝統の力。それらは選手だけでつくってきたものではないと曽ヶ端は言った。
「それは、僕とか満男だけじゃなく、会社もそうだし、チームとしても、サポーターも含めてつくってきた雰囲気であったり、伝統であったり、結果であったりするんじゃないかと思う。それを相手の選手も感じている。特別なにか変わったことをやってるわけではないし、それはやっぱり、選手だけじゃ難しい。鹿島に関わっている人がつくってきているものだと思う」
チャンピオンシップ準決勝に向けた練習はあと2回。良い状態になってきた。
(取材・文・写真/田中 滋)