チャンピオンシップを控えた20日の練習には、大島 僚太の姿が見られた。Bチームでのプレーではあったが、チームメイトと共に全メニューをこなしており、鹿島戦に向けて準備を進めている。
同じく戦線を離脱していた中村 憲剛は、昨日の練習中、一部の時間帯でAチームに合流した。「(練習の)ピッチに立った以上やるしか無い。使うのか使わないのかは監督の判断」だと話してはいたが、計算できる選手の復帰ということで、大島の合流とともに川崎Fにとって明るい話題となった。
20日の練習自体はポジションの移動とパスコントロールをテーマにしたメニューなどを織り交ぜながら紅白戦、ミニゲームを消化。いつもと変わらないボリュームのものだった。大一番を前にしているが、これまでと変わらないメニューをこなしていた。
通常通りのことを行うという点では、ファンサービスも全く同じ水準で行われていた。
練習後、すぐに上がった大久保 嘉人は、練習見学に訪れた大勢のサポーターの全ての求めに応じ約40分もの時間を掛けて丁寧に対応した。そのことを聞くと「普通じゃないの(笑)」と笑いつつ「オレが今までおったチームは全部普通だった。(人が多いのは)日曜日だしね」と意に介する様子を見せなかった。
もちろん大久保以外の選手も、負傷者以外は同じようにファン対応を行っている。地域に根ざすクラブという理念が、選手たちのパーソナリティと組み合わさり、丁寧な対応としてあらわれていた。
今季の川崎Fは、震災復興支援活動の新たな形態として、7月にケガ人とリオ五輪代表招集の2選手を除く全選手が陸前高田市でのイベントに参加している。シーズン中に行われるこうした社会貢献活動は、トップチームの成績を重視する人たちの意見と対立する傾向にある。ただ、クラブは信念を持って社会貢献活動と成績を両立させることができるとの立場を貫き、結果的に年間勝点2位の立場でチャンピオンシップの出場権を手にした。
東日本大震災に対する復興支援については、チャンピオンシップ進出の鹿島アントラーズも、浦和レッズも継続してきたという。ただ規模や形態は川崎Fとは違っている。サッカーを戦う選手たちにいろいろなものを背負わせるのは忍びないが、それにしても川崎Fの活躍は、ファン対応やJクラブの社会貢献活動に対するハードルを著しく下げるインパクトを持っているように思う。Jクラブは社会的な力を持つ集団だからこそ、川崎Fの活躍を期待したいと思う。
(取材・文・写真/江藤高志)