■Jリーグチェアマン 村井 満
本日は合同記者会見にお集まりいただき、感謝申し上げます。
冒頭で会見の趣旨、Jリーグが何を目指していくのかについてお話しさせていただきます。
Jリーグは今、非常に大きな転換点にあります。今年の11月に公益社団法人日本プロサッカーリーグが創設 25 周年を迎えます。ビジネスの観点では今年が25周年、来年はルヴァンカップの25周年、再来年はリーグ開幕25 周年を迎えます。Jリーグ百年構想の第一四半期が終わるという時期にあります。
25 年間、Jリーグは様々な貢献をしてきました。ドーハの悲劇が1993 年にありましたが、その後(1998 年より)5 大会連続で FIFA ワールドカップに出場し、また6大会連続でのオリンピック出場のエンジン(原動力)となったのはJリーグです。一方で、近年はアジア各国、アジアの各クラブが急成長し、相対的にJリーグ、日本サッカーが優位を失いつつあります。
ビジネスの観点では昨シーズン入場者数が 1,000 万人を超え、Jリーグ、クラブの収益が過去最高を記録しました。一方で経年トレンドをみると暫くの間入場者数が横ばいという現実があります。 Jリーグは今一度不連続の大きな成長を遂げなくてはいけないステージにいるという認識でいます。
2017年放送権交渉の中で考えていたのは、我々は不連続で大きく成長できるか否か、そのパートナーはどのような方々となるのかということでした。
今回ご紹介するPerform Group はロンドンに本拠を置き、世界 100 ヶ国を超える国々でコンテンツ配信やメディアサービスを行う、スポーツに関しては世界最大級のプレーヤーです。先ほどVTRでご覧に入れたように、新しい観戦スタイル、スポーツ文化を日本に根付かせてくれる存在だと思っています。
NTTグループは申し上げるまでもなく、これから日本のデジタル化を一気に進めていくうえで最高のパートナーであると確信しています。今日、ここで、3社で合同発表ができることを大変うれしく思います。
日本政府が発表している、スポーツを日本の成長産業として位置付けていく基本方針の中では、Jリーグが牽引し、リードしていくという使命を帯びています。非常に大きなミッションを担ったと考えています。
次に、具体的に放映権に関するご説明をさせていただきます。
今回の契約で対象となるのは有料放映に関するライツの販売です。 地上波放送、無料 BS 放送については、全国、ローカル放送を問わず対象外となります。これらは別途、契約交渉を進めていきます。
続いて、具体的な契約内容について説明します。 放映の販売先はPerform Groupで、インターネットを活用したライブデジタルストリーミングサービス、インターネットをベースに様々なスポーツを低額で見放題というサービスになります。大変魅力的な価格で提供していくとお聞きしています。
契約内容は10年契約で最低保証金額が 2,100 億円強となり、年間平均 210 億円を超える規模となります。 中継制作費は従前と異なり、Jリーグが中継制作コストを負担します。これに伴い、動画のライツ、制作著作はJリーグに既存することとなります。 インターネットの特徴を生かし、キックオフ時刻はクラブが一番良い時間を選ぶことができ、曜日についても土日分散とせずに自由化できることが大きな特徴です。 またJ3も全試合中継することを Perform Group と取り決めています。
NTT グループとは「スマートスタジアム構想」を掲げ、スタジアムの中から外まで快適に楽しくスポーツをエンジョイできるサポートをいただけることとなっています。
ここで契約締結に至る 5 つの意味合いを説明します。
(1)日本初
今回の契約は、単に一競技団体にとどまらず、日本のスポーツ産業に対して巨額な投資をいただいたことになります。10 年という長期にわたり 2,000 億円を超える金額も日本にとって画期的なことです。日本で様々なスポーツを楽しむこと、日本におけるスポーツリテラシーに対する投資をいただいたというのが重要なポイントとなります。
(2)世界の主要サッカーリーグで初
主要なサッカーリーグの中で、インターネットプレーヤーが主たる契約の当事者となった世界で初めてのケースとなります。衛星放送やケーブルテレビなどテレビを中心としたマーケットが世界の市場となっているなか、インターネットを使って、いつでも、どこでも、何度でも、非常に手軽に、安価に見ることができるサービスを世界に先駆け実現できます。 サッカーがお茶の間から街に出ていくサービスに転換することを意味します。世界のリーグで最初にJリーグが行うこととなります。Perform Group は 100 カヶ国近くとサービスを提供していますが、インターネットサービスは日本が世界で最初の投資国となりました。
(3)日本スポーツ界初
現在 38 都道府県でJクラブが活躍し、47 都道府県に広がることが視野に入っているなか、日本中のスタジアムに Wi-Fi を整備しデジタル化をすることは、NTT グループの力なくしてはできないことです。またこうした大規模な Wi-Fi 化構想は、スポーツ団体ではJリーグが初めてのこととなります。
(4)Jリーグ史上初
Jリーグ四半世紀の歴史の中で、初めて動画の制作著作を保有することになりました。Jリーグがコストを負担することで地上波のニュースに格安で提供できるようになります。ローカル放送にも安価に提供することができ、有料放送だけでなく、地上波放送も含めて視聴機会をもっともっと増やす機会を我々が手にすることができました。Jリーグの歴史の中で画期的なこととなります。
(5)リーグ経営の選択肢が拡大
Jリーグが成長に向けた原資を獲得したことで、強化、育成といった中長期的課題に対するコストに振り向けることができ、日本サッカーのレベルアップを図っていくことができると思っています。日程や大会方式といったフットボールを構成する要素についても、制約なしに、あるべき姿で議論ができるようになります。Jリーグそのものの大きなイノベーションに舵を切るステージに立つことができました。
Jリーグのこれからは、この契約によって急に何かが変わることはありません。 良いサッカーを多くの人々に観てもらう目的のために掲げた、5 つの重点戦略を、スピードを上げて進めていくこととなります。
デジタル戦略については NTT グループのサポートをいただくことになり、それによってWi-Fiスタジアムが加速していくこととなります。
アジア戦略については、世界 100 ヶ国でサービスを提供している Perform Group から提案をいただくことで、今回の契約は国内の契約ですが、将来的に海外に向けたノウハウをためることができると確信しています。 大きなイノベーションを推進していく経営人材も引き続き育てていきたいと考えています。
これからのJリーグが目指すことは、「スポーツを産業に」という国の大きな方針の中で、それをけん引する立場で全面的にスポーツの産業化に寄与していくことに舵を取っていきます。
産業という意味では、そのコンテンツの将来価値を見越して投資が行われます。そして、そのもとに人材やアイディアが集まり、そして新しい市場が生まれて、今までにないサービスが生まれていきます。そうした延長線上で豊かな地域社会やスポーツ文化を育んでいく。ときには教育問題や健康問題への解決になるかもしれません。あるいは国際交流、街づくり、スポーツツーリズム、産業振興になるかもしれない。Jリーグが創設以来掲げている理念の実現を加速させていきたい。 全てはスポーツ界のために頑張っていく。
Jリーグは「スポーツで、もっと、幸せな国へ。」と謳っていますが、スポーツは日常の平穏な社会の上に成り立つと強く感じています。東日本大震災や熊本地震を経て、平穏な日常生活がない中ではスポーツができません、逆に言えばスポーツが楽しまれているのは平和の象徴だと言えます。スポーツが長く続いて豊かな国になるように、三社で協力して進めていきたいと考えています。
引き続きご声援、ご支援お願いいたします。 本日はありがとうございました。
■Perform Investment Japan 株式会社 CEO ジェームズ・ラシュトン
最初に、村井チェアマンと関係者の皆様に心から御礼申し上げます。
この関係はすでに数ヶ月経過しておりますが、村井チェアマン、そしてチームの関係者の忍耐力なくしては、今日この場を設けることはできなかったでしょう。この素晴らしい発表はあり得なかったので、村井チェアマン、関係者の皆さまに御礼申し上げたいと思っております。
村井チェアマンからお話がありましたとおり、まさにこれは日本のサッカーにおける新しい章の幕開けだと思います。Perform Group におきましても、特にOTTサービスのDAZN にとっても、本当に新しいスタートだと思っております。 そしてNTT グループの皆さまと一緒に、このDAZNというものを スポーツのルールを変えるものにしていきたいと思っております。Jリーグのファンにとっての新しいものにしたい。家庭でテレビをご覧になっていようと、ないしは移動中ご覧になっていようと、そのどのルールを変えるものでありたいと思っております。
今日、鵜浦社長もこのJリーグに関するビジョンを共有していただけることで、この目標を10年間同じビジョンを共有していただけるということで、非常にうれしく思っております。
さてそれでは、Perform Group について簡単に紹介していきたいと思います。ご存知の方もおられるかもしれませんし、ご存じではない方もおられるかもしれませんが、 我々はスポーツコンテンツのスペシャリストでございます。我々はまさにスポーツに熱中しています。スポーツというものを糧としているわけです。 このスポーツに対する思い入れがあるからこそ、我々はそのプロダクトの製作に関しても、そういった素晴らしいファンの体験を満たすことができると思っています。
我々はグローバルな会社でもあります。23のオフィスを全世界で抱えております。そして100以上のマーケットで事業を展開しております。これもチェアマンがおっしゃった通りです。日本では8年間事業を展開してまいりました。そして100人を超えるスタッフを東京で抱えてもおります。
私たちのビジネスは、コンテンツビジネス、メディアビジネス、そして今日のようなOTT(Over The Top)ビジネスに分けることができるかと思います。 そしてこのOTTビジネスであるDAZNについて、今日ご紹介できればと思っています。
まずDAZNに、皆様を歓迎申し上げます。今年の夏にサービスを開始する予定でございますが、まさにスポーツメディア産業、そしてスポーツ放送局にとっても、本当にルールを変える存在だと思っています。
どうしてそうなのかということをご紹介いたしましょう。まず最初に、もちろん喜ばしいことに、 ライブとなるとDAZN は日本でもっとも包括的な放送権を持つことになります。最初の1年だけでも、6,000を超えるライブイベントを放送することになるのです。そしてDAZNのコンテンツ戦略は、様々な魅力的なスポーツを、日本のスポーツファンに提供することにあるのです。
特に本当にファンの思い入れが強いもの、たとえば今日のJリーグのような国内スポーツ、数週間前はVリーグのパートナーシップをご紹介しました。また国際的なサッカーの権利もしかりです。また米国のスポーツの権利、モータースポーツ、格闘技、バスケットボール テニス、ゴルフ、様々なスポーツノウハウを持っております。要するにこれはスポーツに対する応援をしているのです。だからこそ私どもは非常にしっかりとした競争力を持つ存在であると自負しています。
しかし、ただ単にコンテンツだけではないと思っております。DAZNが消費者の皆さまに提供しているのは、スポーツファンの方々に、特に日本のスポーツファンの方々に、プレミアムなスポーツコンテンツをいつ見るか、どこで見るかという選択肢を与えるということです。要するにフリーダム、自由を与えているわけです。アクセスに関する需要を提供しているのです。マルチデバイス、マルチプラットフォームなのです。
タブレットであろうと、テレビであろうとなんでもいいわけです。ゲーム機であろうと、モバイル端末であろうとよろしいのです。DAZNは様々なモバイルネットワークでも、その手ごろな価格というフリーダムを与えたいと思っております。
従来型のリニア放送と比べても、さらに魅力的なお手頃の価格で提供できると思っております。また、素晴らしい視聴の体験というフリーダムを与えたと思います。DAZNは常にあらゆるスポーツに対してアクセスを提供します。ほとんどの時間、一定のスポーツに限定されるものではないのです。
そして最後になりましたが、向こう10年に渡る私どもの考えるJリーグ、そして日本サッカーのビジョンを説明させていただきます。我々はパートナーと持続的な関係を構築していきたいと思っています。今日は10年の関係ということでお話をさせていただいております。
私どもの考えは最新のスポーツ配信技術を、その放送、そして制作に提供したいということです。そして我々は既存のJリーグのファンをぜひ大事にしたいと思っております。そしてさらにスタジアムのなかであろうと、NTTのパートナーシップの投資者だろうと、自宅であろうと、移動中であろうと、より良い体験をファンに提供したいということです。またパートナーと協力して、Jリーグをさらに盛り上げていきたいと思っております。
次世代のファン層の獲得をぜひ図りたいと思っております。拡大を図りたいですし、そして、この日本におけるサッカーという美しいスポーツをさらに育成できればと考えています。 ありがとうございました。
■日本電信電話株式会社(NTT) 代表取締役社長 鵜浦 博夫
昨年来、NTTグループの中期経営戦略の柱のひとつに「B2B2X のビジネスモデルを加速させ、日本の経済成長や地方創成に貢献する」ということを掲げています。
ご存知の通り、IoT、ビッグデータ、AI といったものが、様々な産業界のビジネスモデルを変革しています。我々はその様々な産業界のビジネスモデル変革のお手伝いを黒子として実践することを昨年宣言しました。
また地方創生において、ICT化事業は欠かすことができない道具だと考えています。日本の経済成長のために、私共が持つ技術を積極的に展開していきたいと考えています。 今回、Jリーグのスポーツを成長産業とするお手伝いを是非させていただきたいという気持ちで今回の提携に至りました。
●顧客リーチ
モバイルを中心に 7,000 を超える顧客基盤を持っていますが、NTT のユーザーだけを対象とするサービスではありません。私共のサービス「dシリーズ」はすべてのキャリアにオープンなっていますが、すべてのモバイルのユーザーにお届けできるメニューを考えています。
●スマートスタジアム
様々なインフラ技術やプラットフォーム技術をJリーグとともに進化させていきたい。
●地域リレーション
Jリーグの各クラブと地域をさらに密接にするための触媒役を満たしていきたい。
ここでスポーツに関してどういった取り組みをしてきたか VTR で紹介します。
(VTR放映)
VTR の中でツール・ド・フランスのシーンをご覧いただきました。 私も先々週、ツール・ド・フランスの山岳コースを見学してきました。グループ会社のディメンションデータ社が自転車のサドルの下に GPS 装置をつけ、各選手の個別データやコースの傾斜角度、タイムなどのデータを計測し、TV 局や各チームの移動車にいるスタッフに提供し、そのデータをもとにチームが戦術を新しいものに変えていく、という施策を行いました。
先ほど村井チェアマンがご説明された「スポーツを変革していく」ということを全面的にサポートしていきます。
私共の技術をJリーグに提供していきます。 そうした取り組みを通じて、地域のコミュニティを活性化し、スポーツツーリズムとの連携をすすめ、 モバイルビッグデータをJリーグや各クラブチームに返していく。スポーツ、Jリーグ、各クラブのビジネスをもう一段成長させていくため、黒子としてのお手伝いをさせていただきます。
日本政府の発表した成長戦略の中に「スポーツの成長産業化」という目標が掲げられています。日本経済を再興していくため様々な取り組みが必要ですが、消費が拡大する新しいサービスが必要 で、その一つがスポーツ産業の成長だと考えています。
スタジアム・アリーナ改革、コンテンツホルダーの経営力の強化、新ビジネスの創出、こうしたことが日本経済の成長のために不可欠だと考えています。
私共はまずスポーツ産業の成長に向けて、Jリーグと力を合わせ、先行事例として、成功事例を目指して取り組んでいく所存であります。皆様にもご支援ご協力をお願いいたします。
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