4月14日の「前震」、そして16日の「本震」と、二度の大きな揺れに見舞われた「平成28年熊本地震」から1か月後の5月15日、ロアッソ熊本はジェフユナイテッド千葉戦でリーグ戦復帰を果たした。再びこの舞台へ戻ってくることができたことを受け、清川 浩行監督や巻 誠一郎ら選手たちの口からは、周囲の支えに対する感謝の言葉があふれた。事実、熊本のリーグ戦復帰にあたっては、Jリーグをはじめ各クラブの選手会やサポーター、そして全国のサッカーファミリーの多大な尽力と支えがあった。
活動休止を余儀なくされた熊本に対し、Jリーグはできるだけ早く試合ができるように各方面との協議や調整を続けながらも、「熊本に残って復帰のための準備をする」という選手たちの思いと判断を尊重し、物心両面でサポート。また、多くのクラブが募金活動や支援物資の呼び掛けを行い、わずかなオフを利用して熊本へ足を運んだ選手も少なくない。浦和レッズやV・ファーレン長崎の選手たちは、熊本の選手が行ったサッカー教室で被災地の子どもたちと接してくれた。全国各地のスタジアムに掲げられた温かいメッセージも、選手たち、そして熊本県民が一歩前へ踏み出す力を与え、背中を押してくれたのではないかと思う。
熊本の復帰戦の舞台となったフクダ電子アリーナは、Jリーグに関わる人々とサッカーファミリーの温かさに満ちていた。関東在住の熊本サポーターが県人会などに呼び掛けた効果もあってアウェイ側ゴール裏スタンドは2階席まで埋まり、さらには立ち見客も出たほど。選手たちがウォーミングアップのためにピッチに姿を現した時、待ちわびた瞬間の到来に多くの熊本サポーターが涙を拭う光景が見られたのは、「ここへ戻ってこられた」喜びと同時に、スタンドを埋めた千葉サポーターからも送られた大きな拍手を通して、「待ってくれている人たちがいた」うれしさを感じられたからでもある。
うまかな・よかなスタジアムがまだ使用できず、今節は日立柏サッカー場での開催となったものの、熊本にとっては復帰後初の「ホームゲーム」。多くの人たちの支えがあって実現したこの一戦もまた、Jリーグがつなぐサッカーファミリーの絆を感じられる時間になりそうだ。
[ 文:井芹 貴志 ]