4月14日に起きた平成28年熊本地震の影響により、第8節から12節までの熊本の試合が中止に。同じ理由で第8節の長崎vs水戸も中止となり、暴風の影響により同節の金沢vs愛媛も中止となった。よって現在のJ2リーグは消化試合がチームによって異なっており、試合に臨む準備の段階で困難を強いられたチームも少なくなかった。そんな中4月の戦いで躍進を遂げたのが、第10節を終えて首位に立つ町田だ。
4月の5試合を3勝2分の負けなしで乗り切った町田は、その間に札幌、山形を撃破し、千葉、岡山とリーグ屈指の戦力を誇るチームとも引き分けている。開幕戦でC大阪に敗れて以降、9試合負けなしと安定感抜群の戦いを披露しており、序盤戦のビッグサプライズを提供している。
好調の要因は10試合・6失点の堅守に加え、鈴木 孝司、中島 裕希というふたりのストライカーの存在だろう。集中力を切らさない粘り強い守備と、攻撃に出た際のアグレッシブな姿勢が、ここまでの躍進の骨子となっている。まだシーズンは4分の1を終えた段階だが、このサッカーを貫徹できれば、シーズン終盤にも十分に昇格争いの主役を演じられるだろう。
同じ昇格組の山口も、町田に負けじ劣らずのパフォーマンスを示している。4月に限れば4勝1分でリーグ最高の結果を残し、10節を終えて5位に浮上。なかでも千葉を相手に4ゴールを叩き込んだ第9節の試合は特大のインパクトを与えた。ストロングポイントはなんといってもリーグ最多得点を記録する攻撃力だろう。エース岸田 和人を欠くなかでも、そのパスワークは衰えを見せず、チャンスを得た中山 仁斗ら他の攻撃陣が確実に結果を残している。失点の多さは気になるところだが、自らのスタイルを打ち出して勝利を重ねている点に大きな意義を見出せる。安定感こそ劣るものの、その勢いは町田以上。しばらくはこのチームのパフォーマンスから目が離せない。
札幌も変わらず好調を維持している。第6節で町田に敗れたものの、以降の4試合は3勝1分。なかでもC大阪に今季初黒星を付けた第9節の試合が4月のハイライトだろう。エース都倉 賢を軸とした迫力ある攻撃に加え、組織的な守備も安定。内村 圭宏、稲本 潤一らベテランが調子を上げているのも心強く、チームの総合力はリーグ屈指。今季の昇格争いをけん引する存在であることは間違いないだろう。
J2からの降格チームである清水と松本もようやくエンジンがかかって来た。大前 元紀、鄭 大世の2枚看板が調子を上げてきた前者は、開幕から悩まされてきた得点力不足を解消しつつあり、後者は持ち前のハードワークが結果へとつながり始めている。ともに本調子となりつつあるなか、5月以降の戦いでもその実力を示していけるかが、J1復帰へのポイントとなる。
逆に勢いを失いつつあるのがC大阪。第9節に札幌に敗れると、第10節でも京都に完敗。相手の対応が厳しくなるなか、自分たちの戦いを発揮できなくなってきている。とりわけエースの柿谷 曜一朗に得点が生まれていないのが気がかりな点。守りを固める相手をいかに攻略していくか。C大阪が再び浮上していくには、このテーマをクリアにしていくしかないだろう。
4月に結果を残したのは横浜FCと愛媛の2チーム。ともに開幕から出遅れていたものの、4月は負けなしでそれぞれ10位、11位へと順位を上げている。横浜FCは4月の4試合で10得点と攻撃陣が好調。愛媛は僅差をものにする勝負強さが備わりつつある。いずれも今後、上位争いに食い込んでいくだけの勢いが感じられる。
同じく、開幕から苦しんでいた山形は第9節にようやく初勝利。しかも好調の岡山を叩いての白星なだけに大きな1勝だと言える。逆に金沢はいまだ勝ち星なし。現在4連敗中で浮上の兆しは見えてこない。得点はできているだけに、課題はリーグ最多17失点の守備にある。ここの改善なくして浮上はないだけに、まずは先に失点しないという割り切った戦いも必要かもしれない。
東京V、群馬、長崎、北九州の4チームも白星から見放されている。群馬を除く3つは昨季の上位争いに絡んだチームである。地力は備えているだけに、いかに早い段階で立て直せるかどうか。指揮官の手腕と選手たちの奮起に期待したい。