Jリーグと日本プロサッカー選手会(JPFA)が協力する「パラリンアート サッカーアートコンテスト(主催:一般社団法人 障がい者自立推進機構)開催発表会」が3月28日、JFAハウスで開催された。コンテストの趣旨や概要の発表の他、村井 満Jリーグチェアマン、同コンテストサポーターのJリーグ選手らがスピーチやパフォーマンスでサポートした。
パラリンアートとは、障がいを持つ人々による絵画や書、デザインなどの創作活動で、それらの作品を企業などに活用してもらい、その報酬、対価をアーティストへ届けることを目的にしている。社会保障が厳しい状況にある中、民間の力で障がい者による精神活動の支援、継続を目指す取り組みだ。健常者の可処分所得の中央値が224万円とされているのに対し、障がい者のそれは50~100万円という調査もあり、同機構の中井 亮 専務理事は「彼らの社会参加と経済的自立、所得を拡大していくというのがコンテストのテーマであり、アーティストの夢を手助けするのが目的」と語る。現在、203人の障がい者アーティストがパラリンアートに所属しているが、まだ47都道府県を網羅するには至っておらず、同機構の松永 昭弘 創業者理事は「こうしたコンテストをうまく活用し、全国に障がい者アートの輪を広げたい」と期待を寄せる。今回のコンテストのテーマは「蹴球」で、スタジアムから見える空、スタジアムに咲く花、観客、未来のサッカーなど、サッカーに関するものなら何でも。応募期間は2016年4月1日(金)~5月31日(火)で、一次審査、最終審査を経て9月下旬に結果発表が予定されている。
JリーグやJPFAがパラリンアートに関わるようになったのは、ヴィッセル神戸に所属するDF相馬 崇人選手の思いがきっかけだった。松永創業者理事や、同じく同機構理事でタレントのセイン・カミュさんと親交のあった相馬選手は2年ほど前に、障がいを持つカミュさんの妹の作品に出合い、「色彩だったり、タッチだったり、本当に素晴らしいなと感動して、他のアーティストの作品もたくさん見るようになった」という。その際に受けた感動は「作品を少しでも世の中に見ていただけるような、皆さんの目に触れるような活動が、サッカー界でできたらすごく素晴らしい」という思いを生んだ。早速、サンフレッチェ広島所属のFW佐藤 寿人JPFA会長に相談を持ちかけたところ、「協力できることがあればやろう」と活動が動き出した。それから約2年、コンテストサポーターでもある相馬選手は「当時はまさか、このような場で僕が話すとは思っていなかったので、今日この日を迎えられたことをうれしく思う」と感慨深げな様子。JPFAの代表としては大宮アルディージャ所属のFW播戸 竜二副会長が「パラリンアートの絵や書は本当に素晴らしく、選手会としてもぜひ協力しようと決めた。こういう活動を知ってもらう良い機会になればいいと思う」と協力姿勢を示した。
また、村井チェアマンは「JPFAと共に協力できることを本当にうれしく思う。相馬選手がパラリンアートに感動し、たった一人で動き始めてJPFAを動かし、Jリーグを動かし、今日、このような場に至った。Jリーグの地域貢献活動は、ともするとクラブ主導、リーグ主導だったりするが、今回は一人の選手が自ら動き出して、しかも地域や社会の皆さんと一緒になってこういうプログラムを組むことができたのは、Jリーグが23年たって本当に画期的なこと。サッカーが文化として根付くことを掲げる私としては、まさにこうした文化活動がサッカーとコラボレーションして、街を豊かに、素敵なものに変えていく原動力に選手がなってくれたことに、本当に感謝している。今回の活動が障がいを持つ方の自立支援のお役に立てれば、本当に幸いだと思う」と述べた。
サッカー漫画『キャプテン翼』の作者である高橋 陽一さんはビデオレターで「キャプテン翼と共にパラリンアートを盛り上げていきたい」と、コンテストへの抱負を語った。コンテストサポーターで審査員も務める高橋さんは、キャプテン翼賞の受賞者とアートをコラボすることになっている。開催発表会の最後には、同じくコンテストサポーターの金澤 翔子さんが書道パフォーマンスを披露した。幼少のころに母親の影響で始めた書道を25年間続けているという金澤さんは「共に生きる」の言葉を「ハッピーと元気と感動を、心を込めて」(金澤さん)文字にした。自身もコンテストに応募するとのことで、「皆さんもたくさん(作品を)送ってください」と多くの参加を呼び掛けていた。