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長谷川 健太「獲らなければいけない大会だと思っている」【ACL出場クラブ 監督インタビュー:G大阪】

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2016年3月1日(火) 17:34

長谷川 健太「獲らなければいけない大会だと思っている」【ACL出場クラブ 監督インタビュー:G大阪】

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長谷川 健太「獲らなければいけない大会だと思っている」【ACL出場クラブ 監督インタビュー:G大阪】
昨季、ファイナルを目前に敗れた悔しさを糧に今大会での優勝を目指す

――昨シーズンのAFCチャンピオンズリーグは、監督として初めてのアジア挑戦となりました。実際に戦ってみた手応えはいかがでしたか?

「準決勝まで勝ち進むことができたからかもしれないですが、楽しかった印象が強いですね。久しぶりにアジア各国を転戦しながらゲームができましたから。現役時代はアジア・カップウィナーズ・カップに出場したり、日本代表でアジアに行く機会は多かったですが、監督として本当にいろいろな国で、いろいろなチームと対戦でき、ものすごく楽しい経験をさせてもらいました。ただ、ガンバ大阪は過去にACLで頂点に立ったことのあるクラブですし、本気で優勝を狙いながら準決勝で敗れてしまったことは非常に残念でした。自分としても経験不足を痛感させられた大会でもありました」

――大会前のシミュレーションと実際に戦ってみた現実との差異はありましたか?

「グループステージはもう少し順調に勝ち抜けられるのではないかと考えていましたが、『意外と手強いな』と思いましたね。実際に戦ってみると、グループステージからすべてを出さないと勝ち上がれない感じがしました」

――最初の3試合が1分2敗と苦しいスタートでした。

「ただ、そういう中でチームとしても選手個々にしても、もちろん私個人にしても、いろいろな経験をした上で苦しみながらグループステージを突破できたことは大きな財産になりました。その経験が、決勝トーナメントでの戦いにすごくつながったのではないかと思います」

監督として初めてACLを戦った昨季。様々な国のチームと対戦でき、楽しかったと振り返る
監督として初めてACLを戦った昨季。様々な国のチームと対戦でき、楽しかったと振り返る

――試合を重ねていくうちにアジアでの戦いに慣れ、選手もチームも成長していくことができたと?

「そうですね。例えば、年代別の日本代表にもほとんど選ばれたことのなかった米倉(恒貴)が試合を重ねるごとに自信をつけて、Jリーグで見せているようなプレーができるようになった。彼にとってはその経験がEAFF東アジアカップの日本代表選出につながったと思っています。他にもアジアの戦いに慣れていない選手が数人いましたが、試合をやるごとに伸びていった印象があります。勝ち上がりに関しては確かに運もありましたが、このチームで上に行けるという手応えはありました。最後は広州恒大に1点が及ばなかったですが、アウェイゲームで先制もできましたし、十分に勝つチャンスはあった。あのアウェイゲームで引き分けていれば、ホームは0-0で勝ち抜けたわけですから。
 もちろん現実的にはホームで1点を取れることができれば勝ち抜けを決められた状況で、ゴールを取れなかったのも事実です。本当にあと一歩のところでした。手応えと力のなさの両面を痛感した感じですね。大会全体を通じて考えれば、全北現代モータース(韓国)に苦しみながら勝てたり、毎年のようにベスト8に入っているFCソウル(韓国)にしっかりと力の差を示して勝てたことは大きかった。近年、ACLでなかなかJクラブが勝てないことでチーム全体の実力差や外国籍選手の差を理由にされがちですけど、しっかりとJリーグでやっていることを出し切れれば、昨今のJクラブがアジア王者になれるだけの力はあるという手応えは感じました」

――先ほど話のあった準決勝の広州恒大戦は、1stレグも2ndレグも本当に1点が大きく運命を分ける緊迫したゲームでした。惜しいところに手を掛けながら、結果的には届かなかった。新シーズンは監督としてそこをどうアプローチしていこうと考えていますか?

「そこはやはりチームとして、組織として、また一つレベルを上げていけるかどうかだと思っています。我々は中国勢のように潤沢な資金でどんどんビッグネームを集められるような環境ではないですし、やっぱりサッカーはチームスポーツですから。今シーズンも日程的には苦しいですけど、そこが成熟できれば今シーズンは十分にアジアチャンピオンの座を狙える。そう考えて戦っていきたいと思っています」

――長谷川監督自身も初のアジア挑戦で学んだものがあったのではないかと思います。

「そうですね。並行して戦う2つの大会で優勝を狙う場合に、どう戦っていくべきかは非常にいい経験になりました。国内ではリーグ戦とカップ戦を戦う上で、カップ戦では若手や新たな選手にチャンスを与えたりしながら、少しずつメンバーを変えていくことがありますよね。連戦と言ってもうまく変えながら戦えるとは思います。ただ、どちらも本気で狙いたい大会があった時に、どうやって戦うかが難しい。中2日や3日の過密日程で試合がありますから。うまくターンオーバーして休ませていましたが、どうしても落とせない試合が連続してやってくる。そういうシーズンを経験できたことは大きかったです。トレーニングの時間がない中で修正点をチームに落とし込むこともしなければなりませんでしたから。今シーズンは新たにアデミウソンと藤本(淳吾)を加えて前線の選手層が厚みを増したと思いますし、攻撃陣は2チーム分の戦力があると思っています。年間60試合を戦った経験を大きな財産にして、しっかりと選手の状態を見極めながら全員で戦っていきたいですね」

米倉をはじめ、アジアの厳しい戦いを経験するなかで成長した選手は多かったという
米倉をはじめ、アジアの厳しい戦いを経験するなかで成長した選手は多かったという

――Jリーグではほぼ知り尽くしている相手と対戦する一方、ACLでは初見に近い選手と対峙します。初めて戦うチームに対しての臨み方はどう考えていますか?

「初めはACLのレベルがよく分からなかったんですよ。例えばブリーラム戦に臨むにあたり、タイ・プレミアリーグの映像を見ると、中盤が結構間延びしていて、うちの選手であればバイタルを使えるし、相手の背後を狙うこともできると思っていたんです。でも、本当は現地の高温多湿な気候を考えた上で、これだけ間延びする中でいかに守るか、いかに攻めるかを考える必要があった。4月でも気温40度くらいあって、その中で間延びせずに戦うことは現実的ではないですから。間延びした中でどちらがキッチリ守って、どちらが点を取るか――。そういうゲームをタイの選手たちはやっているんですよ。実際に対戦してみると、日本で対戦した時は向こうもしっかりコンパクトにしてきますし、タイでの試合はこちらも疲れて間延びする。そういった気候条件をしっかり頭に入れて各国リーグを見ていかなければ実力を測ることができないと思いました。各国それぞれ特長があるので、Jリーグと同じ感覚で映像を見て、『これだったらいける』と判断してしまったのは軽率でした」

――やはりアウェイゲームは難しいと。

「難しいですね。準決勝の広州恒大戦も9月下旬であんなに蒸し暑いとは思わなかったですから。選手が熱中症みたいな状況になってしまって、試合後には何人か脱水症状を起こしていました。現地の人に聞いたら、『11月までこんな感じです』とおっしゃっていました。日本は9月に入って少し涼しくなっていたので、それに慣れた身体には余計に堪えたのかなと。連戦続きで暑熱対策をすることは難しかったですが、選手たちに覚悟を持たせてゲームに臨むことはできたとは思いました。やっぱり見聞きするのと、実際にやるのは全然違いますね」

チームの活性化を求めて獲得したのがアデミウソン(写真)と藤本。“化学反応”は起きるか?
チームの活性化を求めて獲得したのがアデミウソン(写真)と藤本。“化学反応”は起きるか?

――さて、今シーズンは改めてアジアの頂点を狙いに行くことになります。チームとしては熟成を深め、明確にタイトルを取りにいく1年になるかと思います。その中で今シーズンのテーマは?

「とにかく“刺激”を注入して化学反応を起こしたい、チームを活性化したいと考えて、新戦力を獲得しました。昨シーズンも“熟成の1年”という話をしてスタートしましたが、今シーズンも新たな選手を加えて、チームとしてさらなる高みを目指していきたいと考えています」

――その“刺激”になるのが、アデミウソン、藤本 淳吾の両選手だと思います。先ほども話し出ましたが、実績と実力を兼備した2人にはどんな期待をしていますか?

「G大阪の選手たちと互角に渡り歩くだけの力はあると思います。その中で既存の選手がさらに力を発揮して、新たな選手がそれに負けじと力を出してくれれば、自ずとチーム力は上がっていくはず。いろいろな組み合わせ、新しい色や形ができてくることでチーム力を上げていきたいですね」

――あと一歩が届かなかったアジアで結果を出すためには何が必要なのでしょうか。

「とにかくホームで勝つことですね。全北現代モータースとの準々決勝もアウェイで引き分けて、ホームで勝利を収めたことで勝ち上がることができたと思っています。もちろんアウェイゴールを取って勝てればベストですが、相手も簡単には勝たせてくれませんからね。昨シーズンのACLグループステージはホームで1勝1分1敗、アウェイで2勝1敗という成績でした。ホームでしっかり3勝、もしくは2勝1分くらいの成績を残していれば、もっと楽に勝ち上がれたはずなんです。しかもホームで勝ったのは最後の最後だったので、自分たちのスタジアムでしっかり勝つということが本当に大事だと思いました。UEFAチャンピオンズリーグを見ていても、やはりホームでしっかり勝てるチームが上へ行きますからね。もちろん相手も守ってくるので簡単ではありませんけど、いかに自分たちの力で剥がして勝てるか。そこがすごく大きなポイントだと思っています」

――焦れずに戦い、勝負どころでゴールを決めて勝つスタイルが近年の好成績につながっていると思います。ただ、その一方で広州恒大戦のように拮抗した中で、ホームゲームで1点をもぎ取れなかったことも記憶に残っているかと思います。

「あの試合は調子を落としていた(宇佐美)貴史を“切り札”として起用する苦肉の策で臨みました。彼のコンディションを見ながら、一番の武器にしたいと考えたんです。もちろん先発起用していたらゴールを決めていた可能性もありますし、そこは何とも言えないですが、貴史自身のパフォーマンスも年間であれだけのゲーム数をこなして終盤に失速をしたのは否めなかった。前半戦は本当に手が付けられないほどの好調さでしたから、彼が高いパフォーマンスで1年間戦えるかどうかも大きなポイントになると思います」

――ここまで話を伺っていると、宇佐美選手を含めて選手のコンディションが整い、ある程度のメンバーで戦えれば、相手を問わず結果を出せる自信があるような雰囲気が受け取れます。

「それはありますね。ただ、そういった難しさがあるのもサッカーですし、それが1年間の結果だと思います。常にベストメンバーがいいコンディションで臨めるとすれば、Jリーグにも強いチームはたくさんあります。でも、いかにコンスタントに実力を発揮し続けられるかが、最後の最後に結果として出るわけです。それを実現できたチームが1位になれる。アジアにおいては移動や多様な気候を乗り越え、終盤までコンディションを維持できるかどうかもチーム力。そこがまだ昨年シーズンは足りなかった部分だと思っています」

しっかりとオーガナイズされたチームに自信を見せる一方で、タレント性の高さにも注目してもらいたいと語る
しっかりとオーガナイズされたチームに自信を見せる一方で、タレント性の高さにも注目してもらいたいと語る

――コンスタントにタイトル争いに絡み、結果を出せるチームになってきましたが、改めて就任からの3年間で積み上げてきたチームの武器をどう考えていますか?

「武器は……やはり献身性や勤勉性ですね。どこかで誰かがサボると、チーム全体にひずみが生じて、結果が出ないことにつながってしまう。以前から在籍していた選手は、J2に降格したことで『もう一度みんなで立ち上がろう』と考えたはずです。平たく言えば、どのチームも掲げているように『全員守備、全員攻撃』という言い方になります。でも、その当たり前のことができなかったから、これだけのタレントがいながら降格を強いられたと考えていました。今のチームもまだまだ足りないところはありますけど、みんなが前向きな気持ちを持ってプレーしてくれていますし、そこが一番の強みだと思います。それに選手たちは非常にタフになりましたね。これだけ試合があっても、ほとんどの選手が大きな怪我をせずにプレーできています。フィジカルコーチが頑張ってくれていることもありますが、選手たちのタフさも非常に大きな武器だと思っています」

――メンタル的にもかなり強くなった印象があります。

「そうですね。しっかりと焦れずに耐えるサッカーができるようになったとは思います。昨年の明治安田生命Jリーグチャンピオンシップ決勝ではサンフレッチェ広島に敗れてしまいましたが、しっかり気持ちを切り替えて天皇杯を戦ってくれた結果が優勝につながったと思います。ただし、もうワンランク上に行きたいのも正直なところです。積み重ねていくことは重要ですが、同じミスは繰り返してしまうのも人間なので、そういうところをみんなでしっかり求め合いながら、チーム一丸となって戦っていけるようにしていきたいです」

――今シーズンはどんな部分に注目してもらいたいと考えていますか?

「チームとしてオーガナイズされたサッカーはもちろんですが、その中に選手個々のタレント性があると思います。非常にタレントの多いチームだと思いますので、そのあたりは楽しみにしていただきたいですね」

――最後に、長谷川監督にとってACLとはどんな大会なのでしょうか。

「獲らなければいけない大会だと思っています。昨シーズン開幕前の『獲りたい』という気持ちから、『獲らなきゃいけない』という想いに変わりました。待ち望んだ新スタジアムも完成しましたし、G大阪サポーターやサッカーファンの皆さんも『そろそろ日本勢が優勝してくれよ』と思っているはずなので、その期待に応えたいですね。ACLではホームでしっかり勝てるかどうかがポイントになるので、まずはあの素晴らしいスタジアム雰囲気の中で、しっかりと勝点3を奪うゲームをしていきたいと思っています」

[文:青山 知雄]

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