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ミハイロ ペトロヴィッチ「常にベストを尽くして戦う。その先に必ず歓喜が待っている」【ACL出場クラブ 監督インタビュー:浦和】

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2016年2月23日(火) 17:38

ミハイロ ペトロヴィッチ「常にベストを尽くして戦う。その先に必ず歓喜が待っている」【ACL出場クラブ 監督インタビュー:浦和】

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ミハイロ ペトロヴィッチ「常にベストを尽くして戦う。その先に必ず歓喜が待っている」【ACL出場クラブ 監督インタビュー:浦和】
今季の目標を「タイトル獲得」ではなく「昨年を上回ること」とペトロヴィッチ監督は表現した

――昨年は悔しいシーズンになりました。新シーズンに臨むにあたって、どんなことを考え、どんな目標を立てたのでしょうか?

「昨シーズンはいい戦いができていながら、最終的に明治安田生命J1リーグでは年間2位。チャンピオンシップでは準決勝で敗退し、天皇杯も決勝まで勝ち進みながら負けてしまった。タイトルに届きそうなところまで行きながら、それを手にできなかった。我々にとっては悔しいシーズンだったと思っています。ただし、我々が見せたサッカーは非常に素晴らしいものだったと私自身は自信を持っていますし、シーズンを通じてコンスタントに自分たちのサッカーができました。最終的にタイトルという結果は手にできませんでしたが、これまで積み上げてきたサッカーを大きく変える必要はないと思っています。新しいシーズンに入るにあたって、少し変えなければいけないところは試合を通じての規律。継続性に新しい規律を付け加えることが、新シーズンに取り組むべきものだと思っています」

――積み上げてきたものに関しての手応えはいかがでしょうか。

浦和で過去2回出場したACLはともにグループステージ敗退。まずは第一関門の突破を目指す
浦和で過去2回出場したACLはともにグループステージ敗退。まずは第一関門の突破を目指す

浦和レッズを率いて4シーズンが過ぎましたが、必ず前年を上回る勝点を重ねることができていますし、戦術的にも、年々新たな戦い方を加えてバージョンアップしながら、より成熟したチームになってきています。今シーズンのチームが目指すものは、やはりすべての大会において前年の結果を上回っていくこと。2016シーズンも昨年の成績を超えていきたいと思っています。シーズンの目標として、日本ではよく『タイトル』という言葉を使いますが、同じような表現を使いたくありません。私としては昨シーズンを上回ることが、同じ意味を成すと思っています。典型的にタイトルを目標に掲げるのではなく、『昨年を上回る』という表現をしたい。例えばヤマザキナビスコカップであれば、ベスト8で敗退した昨シーズンを上回る準決勝以上に、天皇杯は決勝で敗れているので、その結果を上回るのであれば、決勝で勝つということになります。リーグ戦ではクラブレコードとなる勝点72を記録しましたが、やはりそのポイントも上回っていきたいと考えています」

――チームに植え付けたいとおっしゃっていた新しい規律についても教えてください。

「それはリスクマネジメントにおける細かな部分ですね。自分たちが攻めていても、相手のアタッカーが残っている場合がある。その距離をDFが1歩、2歩縮めておくだけで攻守が入れ替わってボールを縦に入れられた時に潰せるのに、その数歩にこだわらないことでカウンターを受けてしまうシーンが、これまで見受けられました。試合が進んで疲れてくると、そういった戦術的な規律を守れなくなってしまう傾向があり、そこが昨シーズン、我々が勝点を落とした原因です。そういった部分をより選手に求めて、突き詰めていく必要があると考えています」

――AFCチャンピオンズリーグ(ACL)に関しては、浦和での過去二度の挑戦はいずれもグループステージ敗退でした。

「今シーズンはたくさんの目標があります。その中でも特にACLのグループステージ突破を掲げたいです。勝ち上がった先に何が待ち受けているかは分かりませんが、我々は絶対にグループステージを突破するんだという意気込みの下にACLを戦いたいと思っています。私が浦和を率いてからの4年間は、チームを作り上げる段階でもありました。クオリティを高めながらリーグ戦とACLを戦っていく状況になり、どうしても両大会で結果を残せるだけの成熟度と選手層がなかったのは確かでした。もちろんどちらの大会でも結果を残したいと思って戦ってきましたが、過去の大会ではなかなかうまくいかなかったのが事実です。ただ、就任5年目の今シーズンはチームの成熟度が高まり、非常に高い水準でレベルの拮抗したメンバーがそろったチームになっています。そういった意味で、今年はどちらの大会でも結果を残していけるだけの準備が整ったと言えるでしょう。どちらの大会でもベストな戦いができるような準備をキャンプで進め、とにかく妥協することなくチームとしてベストを尽くして戦っていけるように準備をしています」

――今シーズンはイリッチ選手、遠藤 航選手を加えて守備陣の選手層が厚くなりました。攻守にわたって選手起用や戦術のバリエーションに手応えを感じているのではないかとも思います。

フィジカルが求められるアジアの戦いに向け、1対1の勝負で負けないことを練習から強調している
フィジカルが求められるアジアの戦いに向け、1対1の勝負で負けないことを練習から強調している

「攻撃のコンビネーションは、この4年間でかなり成熟度が上がっていると思っています。そしてチャンスを作り出す能力は高いとも見ています。チャンスを決める部分の精度はもっと上げていかなければいけませんが、攻撃面は選手層も含めて非常に充実していると感じています。我々と対戦するチームの多くは、自分の陣地にしっかりとブロックを敷いて守る。そこに人数を掛けて攻めて行く状況が増えることから、相手はカウンターを狙うことになります。そこで重要になってくるのが後ろのリスクマネジメント。一対一で相手のカウンターを止めなければいけない場面も出てくるでしょう。既存の選手、新加入選手を含めて、今シーズンはそういったシーンに強い選手がより充実したと思っています。イリッチと遠藤を獲得しましたが、遠藤は1カ月半ほどU-23日本代表として活動し、勝たなければいけないというプレッシャーの中で戦ってきたので、まずはコンディションを整え、早くチームにフィットしてもらいたいと思っています。イリッチも素晴らしい能力がある選手ですが、やはり日本のサッカーに慣れるまでには多少なりとも時間が掛かると見ています。もちろん2人とも能力が高い選手なので、守備面では間違いなく選手層の底上げになります。リーグ戦、ACLの両大会を戦っていく上で非常にいい戦力補強ができたと思っていますし、彼らの加入によって競争が生まれます。この相乗効果もチーム内に現れるだろうと見ています」

――監督はアジアで勝つために必要なものをどう考えているのでしょうか。

「まずACLを戦う上で我々も、そして見る側も理解しなければならないのは、この10年間でアジアサッカーがかなり変化しているということです。オーストラリア、韓国、タイ、中国、あるいはそれ以外の地域のチームも非常にレベルが上がっている。特に中国は潤沢な資金投資によってサッカーを発展させ、チーム強化を図ってきました。日本はアジアで非常にレベルの高い存在でしたが、その勢力地図が変わってきたことを理解するべきです。そして、どのチームと対戦しても簡単な戦いにならないことも覚悟しておく必要があります。そしてもう一つ、非常に大事だと考えていることがあります。それが初戦の重要性です。過去二度のACLはともに初戦をアウェイで戦って敗れました。グループステージでは初戦で白星を挙げたチームが勝ち進む傾向が強く、初戦が非常に大事であると考えています。まずは2月24日にホームで行われるシドニーFCとの初戦に勝利することが、グループステージ突破を目指す上で非常に重要であると考えます。この試合で勝利することがチーム、そして選手の自信につながります。それがその後の戦いにおいてアドバンテージになるわけです」

――アジアを戦っていく上で浦和が持っている最大の強み、武器を教えてください。

「我々は自分たちでボールを動かしながら相手の守備を崩して得点できるスタイルを持っています。しっかりとしたチーム戦術において、複数の選手が連動しながら攻撃を仕掛け、ゴールへ襲い掛かるコンビネーションサッカーが我々の強みです。その一方でフィジカルは中国、韓国、オーストラリアといった国のクラブに劣っている部分があります。彼らは身体が大きく、強さがある。それを強化するためにシーズン開幕前のキャンプで重点的にフィジカルトレーニングを取り入れ、特に1対1の勝負で負けないことを練習でも強調しています。とにかく1対1の局面で、いかにして自分の責任で相手を止めるか。そこは練習の中でもごまかしがきかない部分としてトレーニングさせています」

――選手に1対1の向上を求める一方、チームとしては昨シーズンからどんな部分を上積みしたいと考えていますか?

「我々と対戦するチームは引いて守るチームが多いとお話ししましたが、それは我々がボールを持って仕掛けていくことで敵陣で行われる時間帯が多いことを意味しています。だからこそボールをロストした後も相手側のコートで奪い返しに行きたい。試合の70パーセントを相手陣地で進めるためには、より局面で勝っていく必要があります。その『局面』という部分こそが、1対1の部分。チームとして目指すものと選手に求めるものは同義です。我々は常に新たなものを加えて、シーズンに臨んでいます。どこよりも先に新しいことに取り組み、チャレンジする。それが今の取り組みです」

――かつてアジアの頂点に立ったことがあるだけに、浦和のファン・サポーターは、チームに対して非常に大きな期待を抱いていると思います。日本有数のビッグクラブで結果を出していくことについての意義はどう捉えていますか?

「日本サッカー界において、選手としてプレーすること、監督として指揮を執ることに関して言えば、浦和が最も素晴らしく、最もやりがいのある場所だと思っています。私は常に勝たなければいけないというプレッシャーの中で仕事をしていますし、選手も同様の気持ちで戦っています。非常に難しい仕事ではありますが、そのプレッシャーこそがやりがいです。勝っていくためには、常に相手を上回らなければならないし、相手よりも新しいアイデアを持つ必要がある。自分たちは今よりもいいプレーをしなければいけない。強いプレッシャーが我々に新しいものを生み出してくれます。そういったイノベーションを持って仕事をできるのは、非常に喜ばしいことです。私は浦和で指揮を執った4年間で非常にいいものを積み上げてきたと思っていますし、いい道を進んでいると自負しています。
ただし、我々の進む道が正しいと証明するスタンプがない。それこそがタイトルであるわけです。この道が間違っていないことを認めてもらうための合格証書を求めていく戦いだと思っています。そのために私も選手も非常に高いモチベーションで取り組んでいますし、我々は今シーズン、自分たちの取り組みを証明するために戦いにいきます。過去4シーズンは常に上位で戦いながら、あと一歩のところでタイトルを逃してきました。それでも我々は決して諦めることなく戦い、必ず前年を上回る成績を残しています。ただ、それでもまだタイトルに手は届かない。ですが、それで決して諦めたりはしません。さらに昨シーズンを上回り、今年こそは頂点に立つという思いでトレーニングに励んでいます。昨シーズンを上回ることは、チームにとって非常に難しいミッションです。勝点72を上回るのは決して簡単なことではないですが、それを上回った先に、我々が求めるものがあると私は思っています」

――最後に一つだけ聞かせてください。浦和の素晴らしいファン・サポーターと喜びを分かち合う姿はイメージできていますか?

浦和での仕事は常にプレッシャーが圧しかかる。だが「そのプレッシャーこそがやりがいだ」と指揮官は語る
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「私がサンフレッチェ広島を率いていた2006シーズンに浦和がJ1で初優勝しました。その時の映像が頭の中に残っています。日本であれだけ多くのサポーターが、そしてあの雰囲気で喜びを分かち合うシーンがあるのかと目を疑いました。非常に素晴らしい優勝の瞬間だったと思っています。その時、日本で仕事をするならば、いつか浦和の監督になりたい――そう一つの目標を掲げました。まずは4年前にそこへ辿り着くことができた。そして浦和の監督就任時に次の目標として掲げたのが、2006年のように選手と一緒に選手とバスに乗って、浦和の街をパレードしたいということです。サッカーに100パーセントはありません。ただ、私自身が間違いなく皆さんにお約束できるのは、我々は過去の記憶を忘れず、強い気持ちで常にベストを尽くして戦うということ。その先に必ず歓喜が待っていると信じて、前へ進んでいきます」

[文:青山 知雄]

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