――2月9日にAFCチャンピオンズリーグ(ACL)のプレーオフが行われます。通常よりも早い時期の公式戦に向けてチーム始動からのトレーニング状況は?
「沖縄キャンプでは今までにないくらい走り込んでいて、身体をしっかり鍛えることができています。キツい部分はありますけれど、シーズンを戦い抜くためのフィジカルを考えれば、すごくいい状態で来ています。この時期はまずしっかりと体を作ることが一番重要で、(城福 浩)監督も言っているように2月9日にピークを合わせるのではなく、まずはシーズンを戦える身体作りが第一です。絶対に勝たなければいけない試合ではありますが、その上でプレーオフに向けて調整していきたいですね」
――ACLはクラブとしても個人的にも2012シーズンに初出場しています。改めて振り返ると、どんな印象が残っていますか?
「初めてだったからかもしれないですが、すごく楽しかったという印象が強いですね。日程や移動が厳しいと聞いていたので、疲れが溜まるのかなと思っていたんですけれど、それ以上に楽しさや新鮮さがありました。日本代表としてアジアや世界と戦うのとは違って、FC東京としてアジアと戦えることがすごくうれしかったことを覚えています」
――前回大会はブリスベン・ロアー(オーストラリア)との初戦を控えた前日会見に出席しました。
「チームでアジアを戦うんだなという気持ちになりましたし、自分にとっても初めての経験だったので、すごくワクワクしました。そういった記者会見や飛行機での移動、そもそもオーストラリアで試合をやることなどを含めて、全部が新鮮で楽しかった印象があります。いい緊張感の中で自分たちのサッカーが通用するのかという不安もありましたし、その一方で自信もあった。すごくいい大会でした。今年も本大会に出られるチャンスがあるので、それをしっかりつかんでぜひ出たいという気持ちでいます」
――前回大会は初出場でベスト16。時間が経った今、改めてグループステージを勝ち抜けた理由、あと一歩でそこを越えられなかったことをどう感じていますか?
「グループステージは本当に最後まで自分たちのやりたいことを貫きましたし、それが結果につながったと思っています。でも、ラウンド16でアジア屈指のクラブである広州恒大(中国)と対戦した時に『もう一つ何かが足りない』と思いました。FC東京は周りからいつも『何かが足りないよね』と言われてきて、自分でもここ数年は常にその『何か』を考えながらやっています。答えはなかなか出ないんですけれど、あと一歩が届かない理由をみんなで考えることによってチームは成長するはず。ACLのラウンド16で負けたことは悔しかったですけれど、チームにとってはもう一度あそこで勝つために何をしなければいけないのかを考えるきっかけにもなったので、その答えを出すためにももう一度あの舞台に行きたいです」
――その経験を踏まえて戦ってきた中で、自分自身に見えたもの、得たものは?
「やっぱり結果がすべてだと思います。元日の天皇杯決勝やいろいろな大会の結果を見たり、昨シーズンのリーグ戦順位を振り返ってみても、とにかく一番上に行かなければ何も残らないということは、嫌と言うほど経験してきている。昨シーズンはクラブ史上最多の勝ち点を積み上げたとか、観客動員数が一番だったとか、いろいろな意味でFC東京の歴史を塗り替えたという捉え方はできますけれど、シーズンを通じて自分たちは何も成し遂げていない。クラブとしてもここ数年は何も達成できていないので、やっぱり最後まで行ってつかみ取らないと意味がないという思いはあります。一年を通じて考えると長いようではありますが、目の前にある一試合一試合がすごく重要で、その試合に対してどれだけ本気で挑めるかが大事なのかなと」
――城福監督が前回チームを率いた当時から考えると、大熊 清、ランコ・ポポヴィッチ、マッシモ・フィッカデンティという指揮官との戦いを経て、今シーズンは再び城福監督と戦うことになります。ここまでチームとしての積み上げをどう感じていますか?
「俯瞰的に見た人は、城福さんから城福さんまでの期間でFC東京は何を得たのかなと思いますよね。もし自分がFC東京の選手でなければ、そういう目でチームを見るでしょうし、城福さんが監督を離れてからの5年ちょっとで何を変えてきたのかなとも思います。ただ、自分はFC東京の選手という立場にいるわけで、そう考えると、この期間に何をしたのかをしっかり示していかなければならない。ある意味、すごく難しい挑戦なのかなとも思います。5年半でもう一度同じ監督と戦うことはなかなかないですから。自分たちはそういうレアなケースにいる。この5年半にチームとして成長した部分はもちろん、FC東京としてのクラブの成長も外に見せていかないといけない。俯瞰して見ている立場の人にハッキリと5年半前の自分たちと違うところを見せなければという思いはあります」
――長期的な視点で考えると、選手たちは城福、ポポヴィッチ両監督が掲げた“つなぐサッカー”と、フィッカデンティ監督が標榜した“しっかり守って勝負強く勝つサッカー”の両方を経験しました。細かな戦術の違いはあるとはいえ、異なるスタイルを経験してきたことはチームにとってプラスになっている?
「単純に考えれば積み上げてきたものはプラスになっていますし、理想的なサッカーから現実的なサッカーに取り組んで、それで一定の結果が出て、次はもう少し理想の部分の割合を増やしてみようと考えて城福さんを呼んだのだと感じています。やっぱりどちらかに偏りすぎてはいけないですし、今までクラブが積み上げてきた歴史を選手たちもしっかり考えながら、感じながら、責任を持ってやっていかないと。今、自分たちがいるから今のことだけをやればいいのではなく、FC東京にはどんな歴史があって、どういうサッカーをしてきて、どう積み重ねてきたのかを考えることが必要。そういう選手が多ければ多いほどチームは安定していくし、誰が監督になっても土台は変わらず、プラスアルファとして積み上げていける。そうならないとダメなのかなとも思います。いろいろな監督がいて、それぞれにやり方がある。どの監督も勝利を目指すことが根底にあってアプローチ方法が違うだけなので、いろいろなサッカーを覚えることで選手としても幅が広がる。代表チームでも同じですけど、誰が監督になってもついていける選手がいい選手だと思いますから」
――負けないサッカー、勝負強く勝つサッカーはできるようになった中、昨シーズンは最後の最後で1点をもぎ取るところが足りなかった印象がある。そんな中、今シーズンはどんなことをテーマに戦おうと考えていますか?
「今はクラブとして明確にリーグ優勝を目標に掲げていて、選手としてもタイトルを取らなければという考え方になってきましたが、それがどれだけ難しいことかは昨シーズンまでの戦いで分かっています。決して簡単なことではありませんけれど、チームのテーマは監督が示してくれるので、それに自分たちがついていくだけ。個人的には一戦必勝――本当にみんなで目の前にある試合だけを考えて戦えるかだと思っています。あとは今まで以上に数字にこだわりたい。内容ではなく、結果や数字に個人的にはもっともっとこだわっていきたい。失点数、勝ち点、得点数……一人ひとりがチームとしても個人としても今まで以上に数字にこだわっていければ、その積み重ねでチームは上へ行ける。そうすればFC東京の歴史も変わると思うんです。個人的にはイエローカードの枚数を減らそうとしましたし、昨シーズンは自分のゴールで勝利に貢献することを意識して、あれだけ点を取れた(明治安田生命J1リーグで計6ゴール)。意識しながらプレーするだけで全然違うことが分かったので、全員で目に見える結果と数字にこだわってやりたいですね。
――今シーズンは城福さんを迎えて、ACLプレーオフに出場します。改めて新シーズンに向けての意気込みをお願いします。
「チームの目標としてはJ1優勝を掲げていますけれど、本当に一試合一試合が自分たちにとっては勝負。今シーズンはみんながいろいろな意味で危機感を持ってやっていると思うので、本当に結果、数字にこだわりながら一試合一試合を積み重ねていきたい。そして最後は昨シーズンのような悔しい思いではなく、笑って終われるようなシーズンにしたいですね。ACLにはいろいろなチャンスや可能性があるし、自分にとってもチームにとっても様々な経験を積んで成長できる大会なので、まずは日本代表としてアジアの舞台に立てるように、2月9日のプレーオフでしっかり勝利して本大会の出場権を獲得したいと思っています」
[文:青山 知雄]