Jリーグ インターナショナルユースカップの第1回大会が12月15日から19日にかけて長野県内で開催された。Jユースカップ王者の浦和レッズユース優勝という形で幕を閉じた同大会。オランダからAZアルクマール、韓国から全南ドラゴンズを招き、名古屋グランパスU18を加えた4チームの総当たり戦の形式で行われた今大会の意義はどの辺りにあったのだろうか。
大会における最大の目的は「国際経験を国内で」(重野 弘三郎Jリーグ強化・アカデミー部アシスタントチーフ)ということにある。Jリーグ勢がAFCチャンピオンズリーグやFIFAクラブワールドカップなどの国際舞台で勝っていくためにも、また日本代表強化のためにも若年層から国際試合の経験値を積み上げていくことが重要だという考え方が背景にはある。重野アシスタントチーフは「人は異質なものに触れることで成長するもの。海外から新しい情報が入ってくる状況を作っておくことも日本サッカーの発展につながるはずです」と語る。
逆に言えば、現状において日本のサッカー選手の国際経験は足りていないということでもある。重野氏は「ヨーロッパのようにバスで1時間行ったら別の国という環境と日本は違います。こういう国で国際感覚を持った選手を育てるには、積極的に日本から出て行く必要があるし、日本に来てもらう必要があると思っている」と強調し、「アジアのほかの国へ行くのは当たり前で、南米や欧州にも定期的に行って血肉になる経験をしているという状況を作っていきたい。大人になってから初めて海外で過ごすことや、海外の選手とやることに対するストレスや衝撃を体感するという事態はゼロにしていきたいんです。この大会創設は、そうした考えの一環です」と言う。
「国際経験が必要なら海外遠征を増やせばいいだけではないか?」という声も当然ながらあった。ただ、重野氏は「海外との関係性はギブ・アンド・テイクの部分が大きい。国際大会に呼んでくれたから、呼び返すというのが当たり前のようにあって、招待して歓待する中で人脈もできていきます。呼ぶことで、より行きやすくなりますし、Jクラブと招待したクラブのクラブ同士の関係性が生まれるきっかけにもなる。ホスト国として国際ユース大会を作る意義はそこにもあります」としている。
もちろん、試験的要素の多い第1回大会ということで課題も少なくない。重野氏も「大会はまだ細い糸のような段階」と認めつつ、「今回は4チームの総当たり戦という形で行いましたが、来年は少なくとも同じ規模、できれば8チームを集めた大会にしていきたいと思っています。今年以上にクオリティのあるビッグクラブに来てもらって、日本から4チーム前後が出られるようにしていこうという話をしています」と明かした。
そのために障壁となる要素はいくつかあるが、一つは日程面。クリスマスにかぶると海外のチームが来てくれることはあり得ず、かといって今回のような時期だとほとんどの国のユースチームはリーグ戦の真っ最中。来日したオランダのAZはリーグ戦の日程をずらしての来日となったが、こうした調整がうまくいかずに招致をあきらめたチームもあるという。「そういう努力をしてでも来たい」と思わせる舞台にしていく必要があるのは確かで、そのための工夫は必要だろう。少々奇抜なアイディアだが、賞金を設けてより真剣勝負の温度感を上げるといった手もあるのではないか。
一方、日本側の参加チームも、普段のシーズンであれば高校3年生の選手たちは引退している状態とあって、温度感が上がり切らない面も見られた。「良くも悪くも修学旅行のような雰囲気になった」と名古屋U18の高田 哲也監督は苦笑いを浮かべる。一方、浦和ユースの大槻 毅監督が「出場チームの選び方を考えると難しいところ」としながら、「もしかすると『U-17』にして新チームが出る大会にするほうがいいかもしれない」と指摘したように、年齢のカテゴリーをどこに設定するかを含めて議論の余地はある。
いずれにせよ、この大会はまだまだ発展途上だということ。そして、それは当然のことでもある。昨夏に世界最大規模の国際ユース大会であるスウェーデンのゴシアカップを取材したときに強烈に感じたのは「継続は力なり」ということだ。自治体の理解と協調を得るためにも、協賛企業を確保するためにも、まずは続けていくことが肝心だろう。その上で、毎年少しずつでも発展させて、次代を担う選手のための大会になっていけばいい。10年後か20年後に、重野氏の口から「出たいというチームが多すぎて、調整が大変なんだよ」といった言葉が聞かれることを期待したい。
[文:川端 暁彦]