かつて青山 敏弘は、FIFAクラブワールドカップについての思いをこう語っている。2012年、初出場を5位で終えた後の言葉である。
「あのわずかな期間でも成長できたと思えた大会。もちろん、負けた時は悔しかった。でも、Jリーグとは考え方もスタイルも全く違う相手とやるのは、すごく楽しい。ああいう経験は、お金を払ってもできない。もう一度、あの舞台で闘いたい」
塩谷 司も、強い気持ちを口にしている。
「クラブワールドカップは、みんな出たいと思っている大会です。僕も2012年に出場しているんですが、あの時とは意識が全く違う。できれば、決勝まで進出して、バルセロナとやりたいですね。どこまで自分たちがやれるか、試してみたい」
アジアの地方クラブが世界の舞台でスポットライトを浴びることのできる唯一無二の舞台。それが、クラブワールドカップである。今回はベスト4に進出すればリバープレート(アルゼンチン)、決勝に進出すればおそらくバルセロナ(スペイン)と対決できる。世界のビッグクラブと真剣勝負の舞台で対決できるなんて、サッカー人として、クラブとして、これほど幸せなことはない。
ただ、初戦のオークランド・シティは確かにアマチュア選手が多く、カテゴリーとしては「セミプロ」ではあるが、この大会での経験値とすれば、明白に彼らが上。5年連続7回目の出場であり、昨年は開幕戦でマグリブ・テトゥアニ(モロッコ)をPK戦で退けると、ESセティフ(アルジェリア)には1-0で勝利。準決勝ではアルゼンチンの5大クラブの1つであるサン・ロレンソと激戦を展開。先制されても追いつき、後半アディショナルタイムで失点するまで、「あわや」の可能性を見せ続けた。結果として3位。まさにビッグ・サプライズを巻き起こしたのだ。
もちろん、ニュージーランドのチームだから高さはある。だが、指揮官のトゥリブリエッチ監督はスペイン人らしく技術を非常に重視。「ポゼッションが非常に優れていて、後ろからしっかりゲームを組み立てるイメージ」と青山は警戒する。左サイドバックには日本人の岩田 卓也もポジションを確保しており、広島の右サイド、ミハエル・ミキッチとの対決も非常に興味深い。
彼らは12月3日に来日。横浜FCとの練習試合では1-1と引き分けだったが、調整にはすでに余念はない。広島が戦ったチャンピオンシップ(CS)もしっかりとチェックしているはずだ。激闘のCSから中4日と厳しい日程の広島にとって、難敵であることは間違いない。実際、2012年に勝利したといっても、ゴールは青山のスーパーミドルによる1点だけ。主導権は握っていたとはいえ、トーナメントは結果が全て。昨年の彼らの進撃を考えれば、慎重に構えるべき初戦だろう。
「2012年以来の出場となりますが、あれから我々は二度、Jリーグを優勝した自信があります。ACLの経験もありますし、あの時とは自信も経験値もかなり上積みされて、今大会を戦えると思っています」
森保監督は自信を持って明日の決戦の時を迎える。あのCSでの激闘を考えれば、肉体的にも精神的にも疲労を抱えているはずだ。だが、それでも広島は高いモチベーションをもって、戦いに挑むだろう。なぜならそこは、クラブワールドカップだからだ。
[文:中野 和也]