「ここから逆転して勝つのがガンバ」
前日の練習後、そう話したのは長谷川 健太監督だったが、まさにその予感を漂わせた前半だった。
出場停止のオ ジェソク以外は第1戦と同じ顔ぶれでスタートしたなかで、集中力の感じられる立ち上がりをみせたガンバ大阪。全体をコンパクトに保ちながら短いパスを繋いで前線までボールを運んだかと思えば、ショートカウンターで一気に前線へ。緩急のある攻撃を使い分けながら前への圧力をかける。また前がかりに試合を進めながらも守備の意識も高く、早い攻守の切り替えから、相手のカウンターを許さない。広島の武器の一つ、サイド攻撃に対する意識も徹底していて、サイドにボールが渡ると最低でも2人の選手が圧力をかけるなど、チャンスを作らせない。そうしてボールを奪ってからは、再び早い攻撃を展開。個々がしっかりと運動量を発揮しながら再三にわたって広島ゴールに迫った。
その流れを先制点に繋げたのは27分。右コーナーキックのチャンスに合わせたのは今野 泰幸。第1戦では準決勝の浦和レッズ戦に続くゴールを挙げた一方で、終了間際にスローインを急ぎ過ぎて失点を招いた反省から「チームを厳しい状況に追いやってしまった」と悔しさをにじませたが、その想いを晴らすべく、遠藤 保仁の右CKをダイレクトで右足で合わせ、ゴールネットを揺らした。
先制してからも大きくバランスを崩すことはない。第1戦の結果を受け1-0では敗戦となるG大阪は、守勢に回りすぎることもなく、立ち上がり同様攻守にバランスよく試合を展開。より勝利の可能性を膨らませて、1-0で前半を折り返す。
メンバー交代なく迎えた後半もペースを掴んだG大阪が、前がかりに試合を運び広島に圧力をかける。その立ち上がりには再びセットプレーから今野がニアで合わせゴールの匂いを漂わせるが、そこは広島のGK林 卓人に落ち着いて対応されゴールに届かない。その後やや前線の勢いが落ちたところで、倉田 秋、パトリックを続けて投入。よりパワーをもって残り時間でのゴールを目指した。
66分には倉田がドリブルで魅せ、そのままゴールを狙うがシュートは浮いてバーの上へ。69分には前線のパトリックをめがけて右サイドの遠藤から絶妙なクロスボールが送り込まれるが、これはわずかに精度を欠きフィニッシュには至らない。
そうした流れをゴールに繋げられないのが、今季のG大阪を象徴していた。一方、押し込まれながらもしぶとく守備を続け、チャンスを確実に得点に結びつけるのが今季のサンフレッチェ広島なのだろう。
76分、右サイドからのクロスボールを浅野 拓磨に頭で合わせられ1-1の同点とされると、以降の時間帯は点を取りたい思いもあってか、ロングボールを放り込むだけの単調な展開に。得点を奪ったことでより落ち着きをみせた広島の守備に引っかかるばかりで決定的なシーンは作り出せない。アディショナルタイム4分もロングボールを放り込んでは、跳ね返され、放り込んでは、跳ね返されの繰り返しに。終了間際に米倉 恒貴が放ったオーバーヘットシュートも相手GKに正面でがっちりセーブされタイムアップ。1-1で引き分けたものの2戦合計により3-4で敗れ、G大阪の『Jリーグ連覇』の夢は決勝の舞台で砕け散った。
[文:高村 美砂]