集まったメディアの数は、普段の10倍以上。広いミックスゾーンも記者たちの熱気で充満し、森保 一監督や選手たちの周囲には人だかりができた。テレビの会見場所も3か所に用意されるなど、明治安田生命Jリーグチャンピオンシップへの関心の高さがうかがえた。
ガンバ大阪がチャンピオンシップに向けてのトレーニングをほとんど非公開にしている一方、サンフレッチェ広島はいつもどおり全ての練習を公開している。それ自体の善し悪しを論ずるつもりはない。森保監督が意識しているのは、あくまで「いつもどおり」の雰囲気づくりだ。チャンピオンシップ決勝出場権を獲得して以来、メディアやサポーターがいつもよりも多く練習場を来訪するようになったことは、クラブとしてはポジティブなこと。その環境を受け入れつつも、指揮官は通常のリーグ戦と同じような空気でチームを包もうと心がけた。練習メニューも練習時間も変わらない。若手の2部練習も通常どおりなら、試合2日前の練習後にスタッフがサッカーに興じるのも、いつもと同じだった。
決戦前日の練習でも紅白戦とセットプレーというおなじみのメニュー。練習後は「これまでやってきたことを、自信をもってぶつけよう」と語りかけた指揮官の思いを受け、選手たちもしっかりと「いつもどおり」を続けた。森﨑 和幸は「チームに特別な堅さは感じない」と冷静に語り、柴﨑 晃誠も「優勝を争える幸せは感じているけれど、今までやってきたことを出すだけだから」と淡々と言葉を選んだ。
取材陣の喧噪だけが違うエディオンスタジアム広島での前日練習を終え、紫の戦士たちは大阪へと旅立った。やるべきことはやった。明鏡止水の精神を以て、決戦の舞台・万博に彼らは立つ。
[文:中野 和也]