「素晴らしい試合をすることができた、という一言に尽きると思います」
柴崎 岳のこの言葉が、試合内容をそのまま表していた。
昨季の3冠王者との激突だったが、前半から鹿島は圧倒的にペースを握る。しかし、ゴールだけがなかなか決まらない。攻めながらも得点が奪えない展開は、鋭いカウンターを持つG大阪相手には決して楽な流れではなかったが、チーム全員が連動してセカンドボールを拾い、相手のカウンターにはディフェンスの選手たちが粘り強く対応し、決定機を許さない。相手に渡りそうになる流れを引き戻すとセットプレーから2得点を奪い、終盤にはカウンターから3点目。付け入る隙を与えない完璧な内容でG大阪を3-0で下し、6度目のヤマザキナビスコカップ制覇を成し遂げた。
前半から鹿島の試合運びは積極的だった。明治安田生命J1リーグの対戦では宇佐美 貴史のカウンターに沈んだが、それを怖れることなく高い位置からボールを奪いにいく。相手の攻撃の端緒となりそうなロングボールにはセンターバックが競り勝ち、セカンドボールもボランチを中心に支配していく。その姿からは、このタイトルに向けた鹿島の選手たちの強い気持ちが感じられた。
ただ、それだけでは「素晴らしい試合をすることができた」という感想にはならないだろう。鹿島のそうした姿勢は前半の45分だけで終わることなく、試合が終わるまで途切れることがなかった。石井 正忠監督は、そうした選手たちの奮闘を「90分間、足も止めずに積極的に自分たちの戦う姿勢を見せてくれた」と讃えた。
60分に左CKからファン ソッコが鹿島加入後初得点で口火を切ると、84分には再び左CKから鈴木 優磨が難しい体勢から折り返したボールを金崎 夢生が頭で押し込む。さらに86分には、小笠原 満男のボール奪取からカウンターを仕掛け、最後はカイオが相手GKの肩口を射抜く3点目を決めて勝利を決定づけた。
MVPは、全3得点に絡んだ小笠原。「MVPを取ったことよりも優勝したことの方が嬉しい」と、攻守にチームを牽引したキャプテンは、チーム一丸となってタイトルを獲得したことを喜んだ。
鹿島はこれで17冠目となるタイトル獲得。新たな黄金期の幕開けを予感させる優勝だった。
[文:田中 滋]