声出し応援運営検証試合(7月実施の6試合)の調査結果に関する詳報です。
■今回の報告対象
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Jリーグは、上の図の段階的な再開ステップに沿って、6月の運営検証試合につづき、7月2日(土)と6日(水)の2日間で、「STEP2」にあたる声出し応援運営検証試合を新たに6試合実施いたしました。運営検証の最終ステップにあたる7月30日(土)から8月14日(日)の期間に実施するSTEP3、その先のさらなる制限の見直しや正常化に向け、よりよい運営を行うことを目的に調査を行ってまいりました。
■運営検証の概要
国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下、産総研)による数理モデルを用いたシミュレーションによる事前のリスク評価にて、声出し応援席は、声を出さない観戦席に比べて飛沫量が増える影響で、マスク着用や席間隔などの対策を何もしない場合に、声を出さない観戦席に比べて感染リスクが上がってしまうことがわかっています。一方、「正しくマスクを着用し、適切な身体的距離を保ち、換気のよい状態を保つこと」等の適切な対策を講じることで、それらのリスクが大幅に削減できることもわかっております。
これらの事前のリスク評価を参考に、感染状況に変動があっても極力低リスクを保ちながら声出し応援を継続できるよう、声出し応援エリアに適用するガイドラインに対策を盛り込み、問題なく運営できることが検証できれば、次のステップに進めることができます。
■STEP2の調査内容
●声出し応援席を格子配席から市松配席へ変更し増席
●スタジアム規模や地域性にばらつきをもたせ試合数を増やす
6月に実施した2試合と検証方法は同様ですが、声出し応援エリアの人数を3000人から7000人へ増やしています。「声出し応援エリアの適切な身体的距離」を定めるにあたり、6月の2試合は「格子模様」とよぶ、前後1列、左右1席ずつ空けてエリア全体を100としたときに25%の収容制限を設けるやり方を採用し、運営上の問題がなかったことから7月からはいわゆる「市松模様」とよぶ、前後左右1席ずつ空け、エリア全体で50%まで収容制限を上げて実施しました。
今回の検証では、様々な形状のスタジアムでクラブ数を増やしても、これらのガイドラインが守られて運営できるかを検証しました。検証にあたっては専任スタッフによるガイドラインの遵守状況の目視点検の他、今回も産総研の協力のもと現地調査として主に3点の調査を行いました。
調査内容(産総研協力)
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■検証結果のサマリー
調査の結果、6月に実施した2試合と同様、非常に高いマスク着用率をはじめ、概ねいずれの項目も高評価を得ており、「ガイドラインが遵守されたと十分にいえる状況」との調査結果が得られました。
1、声出し応援エリア内の不織布マスクの着用が遵守されていた
・マスク着用率:声出し応援エリア 試合中 99.3〜99.8%(ハーフタイム 91.2~96.0%)※
2、「観戦・応援スタイル」「声出し方向」の遵守、身体的距離が確保されていた
・現地での確認において、声出し応援時はピッチ方向を向き、身体的距離を確保していた
・AIカメラによる座席位置は解析中※
3、声出し応援エリア外での声出し応援行為は見られなかった
・現地確認において、一般席からの声出しは確認されなかった
・データ上も、音源分離により声出し応援部分を抽出し声出し・禁止エリア間の音量差を計測したところ禁止エリアの音量が小さいことを確認※
4、声出し応援エリアは十分な換気がなされていた
・エリア内の二酸化炭素濃度は平均で400-500ppm、最大で758ppm
(一般的に1000ppmを超えると要換気とされる)※
※は産総研の調査
調査・報告:産総研
出典:新型コロナウイルス感染症計測評価研究ラボ
資料「スポーツイベントの声出し応援に関する新型コロナウイルスの感染リスク評価 その3(速報版)―STEP2試合の調査結果―」より (速報値のため最終報告時には数値が変更になる可能性がある)」
調査対象試合(6試合)
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●マスク着用率の結果
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●CO²濃度の結果
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■検証項目以外での特記事項
一方、今回、運営検証試合を行った6会場のうち首都圏の2会場で、試合翌日から5日以内の期間で陽性となった方の報告が複数件ありました。 7月6日の味の素スタジアム(入場者数11,516名)で16名(うち声出し応援エリアは15名)、同日の日産スタジアム(入場者数13,311名)で11名(うち声出し応援エリアは10名)です。これらの件数は、試合翌日から5日間で陽性となったとお客様から主管クラブへ報告いただいた件数となります。
いずれのスタジアムもクラスター認定はされていませんが、主管クラブや報告者の協力のもと、座席の分布や行動履歴を調査するとともに、市中の感染状況と比較し、報告件数が出ることはやむを得ないものなのか、観戦行動に由来していたのかを調べてまいりました(後段に詳述)。
調査結果を新型コロナウイルス対策連絡会議の専門家チームへ報告し、各専門家より「声出し応援行為、あるいはスタジアムから拡大しているとは考えられにくいが、今回のように、陽性者の調査が可能なようにモニタリングを継続すべきである」との助言のもと、Jリーグとして「スタジアムの観戦行為自体、あるいは、声出し応援を理由とした感染拡大である可能性は高くない」ものの、「声出し応援エリアから陽性報告件数が通常席からの報告件数より多くいただいた」という事実に基づき、STEP3以降に向けた改善点を整理しました。
●今回の感染者が出た要因の可能性の整理
(1)スタジアム内に感染者が入る可能性→市中感染率を考慮すると、一定の無症状感染者がスタジアム内に入る状況にある。
(2)試合後に確認された陽性報告件数→入場者数と市中感染率から推定された陽性者と比較すると、声出し応援エリア内のみの比較では若干多いが、スタジアム全体の報告件数では低い。
(3)声出し応援により感染した可能性→高くないと評価
①マスク着用率は極めて高い。観客は基本的に前を向き座席配置は一定程度守られている
②CO²濃度が800ppmを超えるような状況にはない。陽性者の座席は一部(家族等)を除けば離れている。
③以上より、試合中の声出し応援合戦が要因となり、感染者が増加した可能性は「まったくない」とはいえないものの、高くないと思料。
(4)声出し応援をしている時間以外に感染をした可能性 → 定量データはないが可能性は否定できない
①声出し応援に来た人の同行者人数は一般席と比較して多い。ハーフタイム等では水分補給などでマスク着用率が下がる。定量データはなく、「起こりうるとしたら」という想定として、滞在時間が長くなる傾向にある可能性や、会話頻度が通常より多くなっていた可能性も完全に否定せず、次の対策につなげる。
■STEP3に向けて
これらの調査結果を踏まえ、7月30日~8月14日に実施するSTEP3に向けた対策案として下記4点を行ってまいります。
(1)市中感染状況に応じた更なる感染対策の構築
・スタジアム内における感染対策ガイドラインの呼びかけの強化
・スタジアム外におけるリスク行動の注意喚起実施
・感染状況が拡大基調にある場合の直行直帰の注意喚起 等
(2)対象試合のスタジアムにおける想定感染者数の算出
・対象試合前後1週間の市中感染状況を確認し、スタジアムにおける想定感染者数を算出し評価を行う
(3)陽性報告があった場合に席位置をすみやかに調査する運営の標準化
(4)スタジアム内の実測調査
参考:産総研 STEP3の調査概要
https://unit.aist.go.jp/georesenv/res-geo/COVID19-Lab/news/20220517_000.html
以下、参考資料
〇試合後の陽性報告者数
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〇試合後の陽性報告者の席位置
・7/6 味の素スタジアム(16名)
‐以下2件を除き、前後左右で少なくとも2席(160㎝)以上の間隔が空いていた
‐2件は席間隔が近い(①親子で1席空け着席、②発症日が同日で前後1列斜め着席)
・7/6 日産スタジアム(11名)
‐前後左右で少なくとも3席(280㎝)以上の間隔が空いていた
〇市中感染状況とスタジアムにおける想定陽性者数
(参考)STEP1・2開催における都県別10万人当たりの陽性者数
・東京 364.1/10万人
・神奈川 242.3/10万人
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了
関連情報
Jリーグ公式試合における声出し応援の段階的導入運営検証試合について
(実施期間:7月30日(土)~8月14日(日))
https://www.jleague.jp/news/article/22668/?utm_source=twitter&utm_medium=social