激闘が繰り広げられるAFCチャンピオンズリーグ。グループステージ突破を狙うJリーグ勢はアジアの難敵相手にいかなる戦いを見せたのか。DAZN解説陣が鋭い視点で試合のポイントを分析するとともに、次節の見どころを語る。
グループステージの最終戦、川崎Fは広州に1-0で勝利した一方、同時に行なわれたジョホールと蔚山の一戦は後半アディショナルタイムに両チームともにポスト直撃のシュートがあり、1-1のドローで終わるかと思われた試合終了間際、ホームの大歓声を受けたジョホールがオウンゴールで勝ち越し。
この結果、グループIは1位・ジョホール、2位・川崎F、3位・蔚山、4位・広州という結果になりました(ジョホールと蔚山が引き分けていれば川崎Fが首位だった)。
そして、他グループの結果により川崎Fのグループステージ敗退が決まりました。東地区の5グループで、2位チームは成績上位の3チームが次のラウンドに進めるレギュレーションでしたが、川崎Fはそこに入ることができませんでした。
マレーシアで集中開催されたグループIはセカンドチームのような構成で全敗に終わった広州を除き、三つ巴の戦いになりました。そのなかでフロンターレは第5戦で蔚山に痛い敗戦(●2-3)を喫しました。自力でのグループステージ突破が消滅し、決勝トーナメント進出は最終節の他チームの結果次第という状況だったわけです。
その最終戦の広州戦は、もちろん、よりゴールを取りたかったですし、前回の対戦では8-0で下した相手だっただけに、もっと良い結果を思い描いた人も多かったはずです。ただし1-0というスコアながら、逆転でのグループステージ突破へ勝点3を手にいれるべき試合で、しっかり勝ち切った点は素晴らしかったと思います。
先ほども話したように、3日前の蔚山戦は言うなれば受け入れがたい結果でした。蔚山とはここ数年難しい試合が多く、今回こそしっかり勝点3を取ろうと臨んだなかでの敗戦。しかも試合の入りは良かったですからね。チーム、選手にとって残念という一言では片づけられない悔しい結果だったはずです。それでも難しい精神状態にありながら、広州戦に出場した選手たちは、目の前の一戦にフォーカスして戦うことができたと感じました。集中しながら、相手をゼロに抑えて勝ち切りました。
加えて14分の知念(慶)選手のゴールはすごく論理的な崩しでした。右ウイングながら内にポジションをとって(右SBの瀬古 樹からの斜めのパスを)丁寧に後方の知念選手へフリックした小林(悠)選手の一連のプレーは見事でしたし、ターンから相手ペナルティエリアに入って右足で決めた知念選手も実に落ち着いていました。
僕はよくストライカーに、感情を入れすぎるとシュートの瞬間に力みが出てしまうため、なるべく感情をフラットにすべきだと話します。今の知念選手はその状態に少しずつ近づけているのではないでしょうか。この日のゴールも、ボールを受けてから落ち着いて運んで、右足でサイドネットに決めた。ゴールへの形をイメージ通りに遂行できた印象です。やはり焦ったり力んだりするとシュートフォームは崩れますからね。
また左SBに入った松井(蓮之)選手、右SBの瀬古選手、アンカーで先発した小塚(和季)選手ら、ここまで出場機会が限られたプレーヤーたちも奮闘しました。彼らにとって公式戦は鍛錬の場であり、アピールの場です。ただ、みんな自分をアピールしたい気持ちを持ちつつ、チームにとって必要な動きをしていました。チームプレーを第一に考え、自分はどうあるべきか表現していた部分は、評価されて然るべきです。そう考えると広州戦も収穫がいくつも見られました。
一方、敗退が決まったグループステージ全体を振り返ると、前述したようにフロンターレは3勝2分1敗(17得点・4失点)の2位という成績でした。マレーシアのジョホールバルで中2日で行なわれた6試合。ピッチの状態もあったでしょうし、ホームのジョホールは慣れ親しんだグラウンドで、なおかつピッチ状態の良いスタジアム(ふたつの会場で開催された)ですべての試合を戦った背景もありました。決して言い訳をしないでしょうが、フロンターレも蔚山も、難しい部分は間違いなくあったと思います。
もっともJリーグを2連覇中のフロンターレは、どんなチームをも凌駕しなくてはいけません。それでも、この結果をポジティブに捉えるなら、成長できる余地がある、そして成長しなくてはいけないことに改めて気付けたことです。ACLで次のラウンドに進む難しさ、勝点3を取る難しさ、そうした宿題が残りましたが、取り組まなくてはいけない課題がより明確になったと感じます。
特に中2日での試合や、コロナ禍によってレギュレーションが変わるなど、いくつもの難しさはあったはずですが、蔚山との2試合で出たいくつかの課題がポイントになるのではないでしょうか。蔚山はボールを握り、しかも相手を見ながらプレーしてくる、言うなればフロンターレに近い狙いを持ったチームでした。そういう相手をどう上回るか、修正点はあるはずです。
具体的には、崩し方や失点の仕方の見つめ直し、そしてよりマネジメントすべき点、リスクを冒して良いシーンもあったかもしれません。相手が論理的にプレーしてくるチームだからこそ、こちらも論理的に問題点をあぶり出し、分析して修正していきたいですね。川崎Fは主力が抜け(昨夏に三笘 薫、田中 碧、昨年末に旗手 怜央が海外移籍)、中村 憲剛さんが引退するなど、顔ぶれが変わっていくなかで、リーグ連覇を果たすなどよくやっていると思います。個人的には成長曲線が下がったとは感じていません。
その意味で今回のACLは残念な結果でしたが、チームがひと回り成長するキッカケをまた得たとも言えるのではないでしょうか。フロンターレは起こったことをしっかり受け止めたうえで、どうするべきか、どうあるべきかを、しっかり考えられるチームのはずです。周囲からはネガティブな声が聞こえるかもしれませんが、論理的に考え、今回の苦い経験も足し算にしていけるチームであってくれると信じています。
多くの選手がピッチに立つなどマレーシアでの6試合の経験は、間違いなく今後のJリーグに生きるはずです。悔しさを胸にここからの上積みにも期待したいです。
【川崎フロンターレ×広州FC|ハイライト】