2022年4月22日(金) 13:15
福西 崇史の視点:互いに相手を崩し切れなかった妥当なスコアレスドロー。次戦は鬼木監督の用兵術がカギを握る【ACL 川崎FvsJDT】
激闘が繰り広げられるAFCチャンピオンズリーグ。グループステージ突破を狙うJリーグ勢はアジアの難敵相手にいかなる戦いを見せたのか。DAZN解説陣が鋭い視点で試合のポイントを分析するとともに、次節の見どころを語る。
ACLのグループステージで川崎フロンターレが所属するグループIはマレーシアで集中開催されており、ホームアドバンテージを持つジョホール(ダルル タクジム)は当たり前ながら、サポーターの後押しを受け、良い雰囲気のスタジアムで戦えていると改めて感じました。
2試合を終えて1勝1分の川崎Fに対し、ジョホールは前節に蔚山を下して2連勝中。この川崎F戦でもやはり勢いがありました。
従来の4-3-3で臨んだ川崎Fに対し、ジョホールは3-5-2(中盤は逆三角形)。鬼木(達)監督は2戦目の広州戦(〇8-0)は、初戦の蔚山戦(△1-1)からGKチョン ソンリョンを除くフィールドプレーヤー全員を入れ替えましたが、第3戦となる今回のジョホール戦では、主に第1戦のメンバーを改めて起用しました。顔ぶれで変えたのは知念(慶)を右ウイングで先発させた点のみでした。
前半、ジョホールの前からのプレスを受けつつ、相手の3バックのギャップを突いて徐々にリズムを掴んだのは川崎Fでした。しかし前半の途中でジョホールは川崎Fの形に合わせるように布陣を4バックに変更。これでがっぷり四つの展開になり、互いにギャップを生かすことが難しくなりました。
後半も同様の展開で、お互いに相手を崩しづらくなりました。ですので、スコアレスドローは客観的に妥当な結果だったと言えそうです。主力メンバーを中2日の連戦でも使い続けるジョホールが、この試合は引き分けでもOKと考えていたのか定かではありません。ただ、自分たちが主導権を握れていれば、あのまま3バックを継続したはずで、システム変更は川崎Fを警戒したうえでの策であったはずです。
川崎Fは土壇場で追いついた初戦の蔚山戦と比べ、全体のコンディションが上がっていると感じました。それは高温多湿な現地の環境に身体が慣れてきたのが大きいのではないでしょうか。ピッチへの適応も含めて戸惑いは減っているように映ります。もっとも中2日で戦い、汗も相当にかく状況だけに、疲労は後半に出てきます。この試合も中盤の激しい攻防などで相当にキツかったはずで、致し方ないですが、大事なところでのミスや身体が動き切らなかったシーンも見られ、それがドローにつながったとも捉えられます。
その意味では、前半の早めの時間帯により仕掛け、ゴールを奪えれば理想的でした。川崎Fは4戦目もジョホールと対戦するだけに、地元チームとの連戦で鍵を握るのはやはり先制点になります。
同時に鬼木監督が中2日で同じ相手と戦う一戦へ、どんなメンバーを選ぶのかは非常に興味深いです。先ほど話したように、初戦から第2戦へ顔ぶれを大きく入れ替え、第3戦では戻しただけに、第4戦もある程度のシャッフルを行なうのか、もしくは勝負の一戦と捉え、主に第3戦のメンバーを引っ張るのか。相手の手の内は今回の一戦で理解できているだけに、心理戦のような要素も含まれてきそうです。
川崎Fはその第4戦にジョホール、第5戦に蔚山とのリターンマッチを控えています(現状では1位がジョホール、2位が川崎F、3位が蔚山。勝ち抜けるのは1位と、他グループを含めた2位の成績上位3チーム)。最終戦の6戦目で対戦する広州には前回8-0と大勝しているだけに計算が立ちそうですが、ジョホールと蔚山とのそれぞれの試合にどうパワーを使うか、鬼木監督も頭を悩ませるはずです。
今回のグループステージは勝点が並んだ場合は、当該チーム間の対戦成績(勝点、得失点差、総得点の順)が優先され、その後に得失点差、総得点数が続きます。となると、まずは目の前の試合に勝つことに集中しますが、頭の片隅では数字の計算も必要になるかもしれません。三つ巴の争いはさらに過熱しそうです。そのなかでまず次のジョホール戦が山場と言えるか。非常に注目ですね。
今後のキーマンとしては左ウイングのマルシーニョを挙げたいです。ジョホールも彼のスピードを警戒し、対峙した選手は疲労していた印象でした。左ウイングには第2戦で好プレーを見せた宮城(天)も控えていますし、マルシーニョが立ち上がりから果敢に仕掛けて、宮城にスイッチ、もしくは逆のパターンも考えられます。
今大会はアンカーやボランチを務める(ジョアン)シミッチからの精度の高いロングフィードをマルシーニョが裏で受ける形も武器になっています。その意味でも左サイドからの攻撃がポイントになるのではないでしょうか。
加えてCFの(レアンドロ)ダミアンがより相手ゴール前で怖さを示せるか。ジョホール戦では下がり目でボールを引き出す動きで貢献し、その分、中盤の遠野(大弥)が裏へ抜け出す良い形をチームとして作りました。ただ、頼れるストライカーがさらにゴール前で勝負し、点を奪えばチームは乗れるはずです。
今回の勝点1の価値は今後の試合次第でしょう。振り返った時にこのドローが効いたと言えるように、残り3戦の戦いに注目しています。
【川崎フロンターレ×ジョホール ダルル タクジム|ハイライト】
[次節開催情報]
AFCチャンピオンズリーグ2022 東地区グループステージMD4
ジョホール ダルル タクジムvs川崎フロンターレ
2022年4月24日(日)23時00分キックオフ(日本時間)
DAZN独占配信