FIFAワールドカップ・アジア2次予選を勝ち抜き、史上初の最終予選進出を決めたベトナム。11月11日(木)にベトナムのホームで行われた日本との一戦は、0-1で日本が勝利し、最終予選の勝点を積み上げた。
この試合のスタッツを、あえてベトナム目線で振り返り、ここまでの最終予選各試合と比較してみた。
前編(試合前)
https://www.jleague.jp/news/article/21006/
後編(試合前)
https://www.jleague.jp/news/article/21007/
ショートパスでつなぐスタイルにロングパスのアクセントが加わる
上図は、ここまでの最終予選5試合における、チームスタッツ(攻撃)の一覧。日本戦では幾度かシュートまで持ち込む形を作り、ペナルティエリア外からでも積極的にゴールを狙う姿勢を見せた。
最終予選のこれまでの試合と比較して変化が目立つのは、前方へのロングパスだ。全体のショートパス比率が高いことはこれまでと大きく変わらず、パスをつなぐスタイルが継続された一方で、日本戦ではセンターバックから前方へのロングパスが大きく増加。特に、中央にポジションを取るキャプテンのクエ ゴク ハイ(ベトテルFC/28歳)から供給された前方へのロングパスがこれまでの4試合平均(約2.6本)と比較して約3倍に(8本)。推進力のある2トップのタレント、得点を量産してきたグエン ティエン リン(ビンズオン/24歳)、元水戸ホーリーホックのグエン コン フォン(HAGL/26歳)を生かすべく、意図的に日本の守備陣の裏にパスを入れる狙いを見せ、これまでのベトナムが見せてきた攻撃に1つアクセントを加えた。ゴール前でこそ、吉田 麻也らに防がれて得点には至らなかったものの、日本の守備陣の意表を突く形となり、可能性を感じさせるアタッキングだったと言える。
攻撃の中心 グエン クアン ハイ & 持ち味を見せたエース グエン ティエン リン
試合前の紹介(リンク)でもキープレーヤーとして挙げたグエン クアン ハイ(ハノイFC/24歳)。日本戦においてのグエン クアン ハイの被ファウル数(相手選手から受けたファウル)は、両チーム最多の5回となった(今回の最終予選5試合の中でも最多の回数)。日本守備陣の意識としても、類まれな才能を持つレフティーの危険性が十分に共有されていたことが分かる。彼のプレーエリアを確認すると、ミドルサード(ピッチを3分割した時の中央エリア)でのプレー数はこの最終予選5試合で最多となった。これまでよりもやや低い位置でチームの組み立てに関わり、かじ取り役として君臨していたことが分かる。
また、2次予選、最終予選と得点を量産しているエースのグエン ティエン リンは、屈強な日本守備陣にも臆さず、幾度か持ち味を見せた。立ち上がりの前半10分、吉田 麻也を振り向きざまにかわして日本守備陣を翻弄し、最終的に自らのミドルシュートまで持ち込んだプレーや、後半19分、得意の裏抜けから前線でタメを作るプレーなど、キラリと光る才能を随所に見せた。重みのあるドリブルで積極的な姿勢を見せた後半5分、後半14分の前方への仕掛けも印象深く(ドリブル回数はチーム最多タイ)、「ベトナムのFWは推進力がある」と感じた日本のサポーターも多かっただろう。最終予選3試合連続ゴールとはならなかったものの、今後も期待できる活躍だったといえる。
積極的な姿勢を披露 1失点で耐えたことが今後につながるか
もっともポジティブな要素となったのは、守備のスタッツだ。これまでの最終予選のベトナムは、90分を通して押し込まれる試合が多く、5バックが横並びになってブロックを形成する時間が長かった。必然的に攻撃のベクトルも弱まってしまっていたが、日本戦は積極的な姿勢を披露。前後半のボール奪取の平均ラインを見ると、特に日本戦の前半においてラインの上昇傾向が顕著で、日本戦と同様に1点差の敗北となったオーストラリア戦、終始押し込まれてしまったサウジアラビア戦といった強豪との一戦と比較すると、その差は明らかだ。比較的ラインが高かったことは、被スルーパスの数が5試合の中で2番目に多かったことからも同様にうかがえる。
また、ボールを奪われてから5秒以内に再び取り返すプレーにおいても、これまでの5試合の中でもっとも回数が多い結果となった。コンパクトな守備陣形を敷いてボール奪取の位置を上げ、奪われてもすぐ奪い返す回数をこれまでより増やしたことで、格上の日本を相手に1失点で耐えることができた一つの要因と言えるだろう。
最終予選初の勝点獲得はかなうか
日本戦の直前には、パク ハンソ監督の契約延長も発表されたベトナム。欧州でプレーする選手が多い日本を相手に一定の爪痕を残したことで、史上初の最終予選での勝点獲得へ向けて可能性を感じされるプレーが随所にも見れた。3月に予定されている日本のホームで行われる一戦ではどのような姿、成長を見せてくれるだろうか。
(文章/データ提供:データスタジアム株式会社)