2020年7月30日
2019年度 クラブ経営情報開示 メディア説明会 発言録
2020年7月30日(水)16:00~
オンラインにて実施
登壇:専務理事 木村 正明
クラブ経営本部 本部長 鈴木 德昭
クラブライセンス事務局 クラブライセンスマネージャー 村山 勉
〔司会より〕
2019年度クラブ経営情報開示についてブリーフィングを始めます。
クラブライセンスマネージャーの村山よりご説明いたします。説明終了後の質疑応答は、木村専務理事、鈴木本部長も参加させていただきます。
〔村山マネージャーより説明〕
本日は多くのメディアの皆様にご参加いただきまして、ありがとうございます。
本日発表内容についてご説明させていただきます。
《1−1.はじめに》PPT:2ページ
(1)クラブ経営情報開示の概要
5月27日にクラブ経営情報開示の速報版ということで、全55クラブのうち、10クラブを除いた45クラブの経営情報についてご説明させていただきました。
【5月に決算を発表しなかった10クラブ】
新型コロナウイルスの影響で決算の確定が延期となったクラブ(株主総会が開催できなかった、監査法人とのやり取りがコロナウイルスの影響で遅れたなど)
・・・6クラブ 水戸、栃木、東京V、横浜FC、山口、相模原)
3月決済のクラブ
・・・4クラブ 湘南、磐田、柏、YS横浜
これらの10クラブの決算も出そろいましたので、本日全55クラブのクラブ経営情報についてご説明させていただきます。
(2)クラブ経営情報開示を実施する背景
背景は割愛させていただきます。
《1−2.主なトピックス》※PPT:3ページ
クラブ別のトピックスは、前回5月に発表させていただいたものと変更ございません。
(1)営業収益は、55クラブ合計で1,325億円(前年比+68億円)
そのうち、スポンサー収入640億円前年比+45億円、入場料収入216億円 前年比+23億円となります。
昨年、2019年のシーズンはJ1リーグにおいて平均入場者数20,751人と、Jリーグ発足以降最高で初めて2万人を突破したこともあり、入場料収入についてはプラス23億円となります。
(2)営業費用も増加。営業費用は55クラブ合計で1,346億円 前年比+114億円
うち、チーム人件費は644億円 で前年比+61億円となります。
《1-3.営業収益合計》※PPT:4ページ
過去3年の営業収益のトレンドとなります。
拡大傾向を続けており、成長率が105%を超え、1,325億円となります。
《1-4.営業収益内訳》※PPT:5ページ
収益の中身につきましては、1,325億円のうち約半分を占めるのがスポンサー収入、次いで入場料収入が16%を占める前年比+23億円の216億円です。
(Jリーグ配分期は10%の135億円)
《1-5.営業収益・成長率分布》※PPT:6ページ
昨年からお知らせさせていただいている、営業収益と成長率分布についてです。
160%を超えているのが琉球(186%)、大分(165%)、鹿児島(160%)となります。
2018シーズンから2019シーズンにかけて、琉球と鹿児島はJ3からJ2、大分はJ2からJ1に昇格していることが大きく影響していると言えます。
《1-6.営業費用合計》※PPT:7ページ
(営業費用合計1,300億円超え。拡大均衡にて推移。)
《1-7.営業費用内訳》※PPT:8ページ
営業費用も増加傾向となります。1,346億円の内訳は、チーム人件費は約半数を超える48%の644億円、次いで多いのは販管費と呼ばれる販売費および一般管理費で27%を占める362億円となります。
《1-8.赤字・債務超過クラブ》※PPT:9ページ
5月の発表の際は、単年度赤字のクラブは19クラブとご説明いたしました。今回新たに発表したした10クラブの中で、4クラブが単年度赤字でございます。磐田、水戸、柏、相模原が加わりまして、合計で23クラブとなります。
2期以上連続赤字は相模原が加わります。前回お知らせした際は、2期連続赤字は6クラブでしたが、相模原を加えて7クラブ。
琉球については4期連続赤字とお知らせしたとおりです。
この後は資料編となっておりまして、詳細は資料をご確認ください。
《2−1. 決算数値の概要:J1・J2・J3クラブ合計》※PPT:11ページ
前年比スポンサー収入、入場料収入、チーム人件費という項目となります。
(詳細は割愛)
《2−2. 決算数値の概要:J1・J2・J3クラブ合計》※PPT:12ページ
営業収益のところは、J1が2018年度の47億5,000万円という数字がさらに増加しまして、49億5,000万円、約50億ということでJ1クラブの営業収益の平均値が昨年と比較して増加しています。
《2−3. 営業収益(売上高)の推移》※PPT:13ページ
もう一つ資料を公開しています。
各クラブの決算の一覧ですが、J1、J2、J3それぞれ1枚ずつ3枚シートを作成しています。こちらの損益決算書(P/L)と貸借対照表(B/S)の項目、費目については昨年までの発表から変更しておりません。なお、関連する法人、アカデミーなどサッカーおよび関連事業を運営する法人の営業収益については、損益総括の下に記載しています。こちらはNPO法人、一般社団法人等で、アカデミー、スクール等を別法人で運営しているクラブがございますので、別に運営している法人の損益について合わせて発表させていただくものです。
こちらの数値をとりまとめて、3年間の数値を比較しています。
湘南ベルマーレは、昨年の2018年度の決算は、決算期の変更に伴って14か月の数値となり、変則的な決算となっています。
昨年度と今年度の比較をする際に、今年は14か月分、今年は12か月分の数値となっておりますので、営業収益、スポンサー収入、入場料収入等については、湘南ベルマーレについては今ご説明させていただいた通りとなります。
その後は1999年度からのトレンド、入場者数のグラフとなります。
先ほどご説明した通り、入場者数、J1は2万越えをしました。
《2−4. スポンサー収入の推移》※PPT:14ページ
(説明は割愛)
2019-2018年度比較(54クラブ)増収38クラブ、減収15クラブ
《2−5. 入場料収入の推移》※PPT:15ページ
(説明は割愛)
2019-2018年度比較(54クラブ)増収34クラブ、減収19クラブ
《2−6. チーム人件費の推移》※PPT:16ページ
(説明は割愛)
2019-2018年度比較(54クラブ)増加33クラブ、減少21クラブ
《2−7. 営業収益主要項目の推移》※PPT:17ページ
(説明は割愛)
スポンサー収入640億円(前年比+45億円)、入場料収入216億円(前年比+23億円)
《2−8. リーグ戦総入場者数の推移》※PPT:18ページ
(説明は割愛)
リーグ戦(J1・J2・J3)の総入場者数は10,397,947人(前年比+630,336人)
《2−9. 1試合当たりの平均入場者数(リーグ戦のみ)の推移》※PPT:19ページ
(説明は割愛)
J1の平均入場者数は20,751人(前年比+1,687人)
J2は7,176人(前年比+127人)、J3は2,396人(前年比▲95人)
《3−1. 3期連続赤字禁止ルールの改定について》※PPT:20ページ
(説明は割愛)
(1)クラブライセンス制度施行前には経営的に不安定なクラブが数多く存在したことから、クラブの経営安定化を主目的として財務基準に債務超過禁止および3期連続赤字禁止というルールが制定された。
(2)クラブライセンスの施行(2012年)後、赤字クラブ数および債務超過クラブ数は大きく減少し、クラブの経営安定化は進んだ。
(3)一方で、現在のクラブの財務状態に鑑みれば、今の財務基準は一部のクラブに過度に保守的な経営判断を行わせる可能性があるとの指摘があがった。
(4)そのため、経営検討部会クラブライセンス財務基準分科会を発足し、財務基準改定の必要性について議論を行い、理事会の承認を経て、2018 年から新ルールが施行された。
《3−2. 3期連続赤字禁止ルールの改定について》※PPT:21ページ
(説明は割愛)
Jリーグクラブライセンス交付規則運用細則について
《4. 「赤字」と「債務超過」の違い》※PPT:22ページ
(説明は割愛)
赤字と債務超過の違いについての説明
《5. 新型コロナウイルスの影響による特例措置(財務基準)》※PPT:23ページ
4月15日の理事会で承認され、新型コロナウイルスの影響で各クラブの財務に大きな影響があるということで、三期連続赤字のルールと債務超過について、クラブから申請があり、新型コロナウイルスの影響と認められる場合は特例措置を認めてクラブライセンスを不交付としないとすでに決めています。
こちらについては今のところリーグへの申請は来ていませんが、今後各クラブとやり取りをさせていただくことになります。
その他の説明資料については、昨年度もしくは5月の速報版でご説明させていただいた内容となるため割愛させていただきます。
〔質疑応答〕
Q:①コロナウイルスの影響で決算報告が遅れたクラブについて
コロナウイルスの影響で決算報告が遅れたクラブは監査法人を通すのが遅れただけなのか、コロナウイルスによるインパクトが数字に表れている部分があるのかどのように理解すればよろしいでしょうか。
②全体収入の増加について
全体収入が増えていることの捉え方についてもう少しご説明いただければと思います。
神戸が史上最高収益をあげているということもありまして、神戸の影響を受けている部分もあると思いますが、例えばいわゆるオーナー企業が選手獲得によってできた穴を広告収入という形で埋めるというのはクラブの経営努力と成長を表しているのかというと微妙なところもあると思っています。とはいえ、そういうところが牽引することがトレンドとして認められるのであればまた違う理解もあると思います。収益が増えているというところについて、神戸も絡めてどういう見方をされているか教えていただけますでしょうか。
③今年度の見通しについて
昨年度までは順調でしたが、来年発表される今年度の決算はコロナウイルスの影響があると思います。現時点で見通しをおっしゃるのは難しいかもしれませんが、今年最高の数字を出した中で、どの位のマイナスのインパクトがありそうか、見通されているものがあれば教えてください。
A:村山マネージャー
①コロナウイルスの影響で決算報告が遅れたクラブについて
こちらについては単純に手続きの遅れということでございますので、コロナウイルスの影響による数値へのインパクトはないとご理解いただければと思います。
②全体収入の増加について
神戸の2018年度と2019年度の収益差額は全クラブの中でトップでございます。
しかし、資料を見ていただくとお分かりの通り、J1の18クラブのうち14クラブの収益が増加しています。(13ページ:2-3.営業収益(売上高)の推移)1クラブだけが引っ張っているとは言いづらいと思います。
J2、J3については、昇降格の影響を受けているクラブもありますので、そういうところは収益減となるところがいくつかございますが、それ以外でもおおむね収益が伸びているとみております。
③今年度の見通しについて
これまでの会見で、財務プロジェクトリーダーの鈴木クラブ経営本部長からお話ししていると思いますが、それぞれのクラブとは密にコミュニケーションを取っておりまして、特にワーストのシナリオでどのような資金繰りになるか全クラブとやり取りをさせていただいております。
ただ、5月から7月にかけて全56クラブにヒアリングをしましたが、まだお客様は限定的ですが、ファン・サポーターをスタジアムにお呼びできることからすると、ワーストのシナリオからは少しアップサイドになっています。
今後、5,000人から収容率50%に戻るのが少し遅れていますが、そういったことが積み重なっていくと、ワーストシナリオから積み上げができるのではないかということでクラブとはやり取りをしています。
今期の当初予算とワーストシナリオの差額については、各クラブとやり取りしていますが、それを合計してどのようなインパクトがあるのかは作成していませんので、本日はお出しできません。
A:鈴木本部長
少し、イメージだけ持っていただければと思います。
数値を出すことはございませんが、今年の決算を見ていただくと、入場料収入が216億円、スポンサー収入が640億円とご認識いただけると思います。
今年、私どもがクラブと話しているのは予算なので、この決算と100%一致はしないですが、今年の予算に関しても入場料収入が216億円というのは大きくぶれがない状況です。
スポンサー収入も640億円の収入の決算と、若干、スポンサー収入、入場料ともに予算としては高く見積もってますが、だいたいこの決算数値で考えていただければ良いと思っています。
クラブの収入はこの2つが柱となっている中で、入場料がクラブ収入の約20%ですが、ここが見えないところがあるので、数値としてお出しすることは控えています。
極端な話をすれば、去年と同じ入場料が入れば216億円の収入があります。すべての試合が無観客であれば0円、つまり0円から200億円の幅があるかなと思います。
実際には、これからも(スタジアムが)満員になっても、一次中断があったため、土日の試合が水曜にまわることが多い実績があるので、そこですでに対象試合時間しては30%位は収入が落ちると目安として立っているというのが一つあります。
一方、スポンサーは今回の決算で640億円と公表していますが、こちらも、例えばクラブによってはマッチデースポンサーといって試合ごとの特別なスポンサーに関連した収入に幅があったり、コロナ禍の状況で、スポンサーの実情で減額を考えざるを得ないということも考えられますので、これから各クラブがスポンサーとご相談することになっています。
以前、木村専務理事から皆さんにご報告があった通り、今年あるいは今後について、親会社が、試合がなかったとしても、スポンサーのお金については損失の補填が効くということや、スポンサーがお金を返金しなくても寄附金扱いでなく損金扱いとして対処できるなど、政府との調整でできていることがあるので、今年に関しては640億円のスポンサー減が大幅にあるとは思っていません。
但し、その幅も満額640億円いくのかというと、そこまでではないので、これから状況を見ながら減少幅が出てくるのかなと思います。
クラブとは個別の資金繰りのやり取りをしており、今の時点で個別に数値を表すことはできませんが、大きな全体像を補足させていただきました。
Q:全体で1,325億円営業収益の一方で、当期利益を見ると、約32億の赤字になっています。単年度で利益が出ているわけではないという状況は、どのように評価されているのでしょうか。スポーツクラブなので高収益でなければならないというわけではないと思いますが、単純に利益が出ていない面について、どのようなお考えでしょうか。
A:村山マネージャー
5月の発表の際にも申し上げましたが、赤字が必ずしも悪いことではないということからすると、「赤字=経営がうまくいっていない」ということではないというのが、我々の今の考え方です。ただ、クラブそれぞれに数値のばらつきがございまして、前回5月にもお話したJ1鳥栖の約20億円の赤字と、今回発表させていただいた柏が約10億円の赤字。この2クラブの赤字が、これまでからすると比較的、金額が大きいこともあって全体に与える影響もあるのかなと思います。
Q:柏の数字の読み取り方を教えてください。昨年から経常収益が10億円くらい減っていて、単年度でも約10億円の赤字ですが、スポンサー収入が増えていて、どういう要因でこの数字なのかを教えてください。
A:村山マネージャー
個別の数字の増減については申し上げられないのですが、昨年度の資料と今年度の資料を見比べていただければと思います。
ただ、柏も我々とコミュニケーションを取りながら、ある意味予定通りということで、少し攻めの予算を組んだ結果、2019年度は赤字を計上しているということで、特に想定外の収入減や費用が増えたということではないと認識しております。
Q:スポンサー収入の目減りの予想で、木村専務理事を中心に国税庁といろいろとお話をされて大きな成果を得た部分があると思います。現状の見通しやその成果について、またスポンサー収入の見通しについて、もう少しお話をお願いします。
A:木村専務理事
少しわけて考えたほうがいいと思うのですが、本日は昨年の決算のお話をさせていただいています。今のご質問は今年あるいは来年に関することになりますが、今年に関しては、プラスの影響が出ていることは耳にしています。
ただし、これから試合数がどうなるか。無観客に戻るか、あるいは今のような超厳戒態勢が続くのか、先がまだ見えず、試合数がどうなるか分かりません。このあたりの総合的な評価やどのようになるかはシーズンが終わってみないと、なんともコメントしにくい部分があります。
ただ、プラスに働きやすいという言葉はいただいています。シーズンが終わったあとに全スポンサー及び親会社があるクラブは親会社と話すことになりますが、ある意味出たとこ勝負になるので、そのときの会社や各企業の状況にもよるでしょうし、クラブのがんばりにもよるでしょう。新型コロナウイルスの状況にもよると思いますので、来年に関してはどのようになるかは分からない状況です。制度の変更についてはプラスに働く部分があると思っています。
若干外れることになりますが、先程クラブの経営努力についてお話がありましたが、基本的には①地域と一緒になって選手を育てる、②魅力あるフットボールを展開する、③ファンを増やしていく、④しっかりマネタイズをする、ですが、この世界中のプロスポーツクラブのお金を稼ぐ手段が大きくわけて放映権収入とスポンサー、この2大収入になっているという現状があります。入場料収入はキャパシティが限られ、サッカーは試合数も限られますから、もう一つ移籍金収入というものもありますが、すべてのスポーツクラブは、実はオーナーや親会社の資産がもととなって、投資を先に行って選手の育成や選手獲得やスタジアムにお金を投資します。中心となって意志を持つ人の存在、組織の存在が成長のエンジンとなっているのは間違いないと思います。一般の会社もそのような意志を持つ社長さんたちが設備投資をしたり、商圏を広げるなどのリスクを取られたりした上で成長があるわけですから、今回は65億円以上の収入のクラブが5つ。55億円以上が3つ。合計で55億以上のクラブが8つになってきたことは、3年前と比べて世界も変わってきています。
この新型コロナウイルスで勢いが止まるのであれば残念ですが、中心となり意志を持つ組織がサポートくださればJリーグにとって悪いことではないと言いますか、これからの成長を止めないという意味では期待している部分でもあります。回答になっているか分かりませんが、そのように思っております。
〔司会より〕
これを持ちまして経営情報開示のメディアブリーフィングを終了いたします。