一般社団法人日本野球機構(NPB)と公益社団法人日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)が設立した「新型コロナウイルス対策連絡会議」の第2回会議が、9日に行われた。
会議終了後には記者会見が開かれ、NPBの斉藤 惇コミッショナー、Jリーグ村井 満チェアマン、専門家チームの3氏(賀来 満夫氏、三鴨 廣繁氏、舘田 一博氏)が出席。リーグ戦再開に向けた議論を踏まえ、現時点での状況を説明した。
当初、Jリーグは18日の再開を目指していたものの、この日の会議を受けて村井チェアマンは「(専門家チームから)延長することが望ましいというご助言をいただきました」と回答。「最終的には野球界、Jリーグそれぞれが意思決定を個別に行っていきますが、今日のご意見を尊重しながら判断していきたい」と話した。
専門家チームの賀来氏は、再開の延長を助言した理由について、次のように説明する。
「現段階では、感染患者の増加が抑制できるかどうかの見通しが立っていない状況。そのなかで、家族も含めた選手やスタッフの健康管理、予防体制の構築、並びに観客が入られるスタジアムの環境整備などについて、まだ準備をする必要があるのではないか。危機管理の面からも、もう少し準備をしっかり行ってから開催をしたほうが良いのではないか。そのため開催の延期が望ましいという意見を申し上げました」
この見解に補足する形で、三鴨氏は物資の不足についても言及する。
「マスクも消毒薬も不足している。3万人、5万人の来場者の方のアルコール消毒を全員分用意するのは大変なこと。サーモミーター(体温を検知するシステム)にしてもスタジアムの入り口の何か所にも準備しないといけない。一朝一夕にはいかず、18日、20日(プロ野球の開幕予定日)の開催に関しては準備が十分ではない。断腸の思いでの結論になりました」
こうした議論をもとに村井チェアマンは、「今日の会議を受けてJリーグとしては、本日18時に全クラブと共有の会議を持ちます。そのうえで、延期について意見交換をしていく。現時点での私の想いとしては、18日の再開は難しいという認識でいます」と、再開の日程を延期する意向であることを明かした。
では、どのような条件が整えば、Jリーグは再開されるのか。三鴨氏は「基本的にはふたつの条件」だという。
「ひとつは基本再生産数(1人の感染者から二次感染をさせる平均的な人数)。これがある一定のレベル以下になること。もうひとつは各球団の準備状況。(感染予防に対する)教育・啓発、物品の準備も含めた準備状況のふたつがキーになります」
こうした条件を満たしても、感染リスクは完全にはゼロにはならない。そのためにも再開に向けては、観戦に訪れるファン・サポーターの理解・協力が求められると村井チェマンは言う。
「マスクが足りなければタオルマフラーで口を覆うとか、大きな声やハイタッチをしないという観戦スタイルも必要になるかもしれません。サーモミーターが用意されなければ、自己申告をお願いすることもあるかもしれません」
もちろんそこには、リーグ、各クラブが最善を尽くすことが前提にある。村井チェアマンは「ファン・サポーターの皆様に自助努力、自己責任を求めるのであるのならば、クラブ側、リーグ側は最善の努力をする必要があります。例えば席割の考え方についても間隔を開けるとか、物資を準備したり、プロトコルを整備することもそう。できる限り最善を尽くしたい」と話し、「両面が整うタイミングは医学的な見地もあるので申しにくいが、一旦は3月中に準備ができるように努力してまいりたい」と続けた。
一方で、無観客での開催について村井チェアマンは、否定的な意見を示している。
「サッカーは、観戦者の支援が後ろ盾になっているスポーツ。無観客ではなく、日程の調整の中で進めていきたい」
ただしこの考えも、今後の状況によっては変わってくる可能性もある。
「新型インフルエンザ対策の特措法が13日にも法案化されると聞いていますが、緊急事態宣言が発令されたエリアでは競技そのものも禁止になる可能性がある。そうした場合には状況に応じて柔軟に判断しなければいけない。いただいた助言をベースにしながら、ファン・サポーターの皆さんとのコミュニケーションを、クラブを通じてやっていくなかで、解を見つけていきたい」
専門家チームの助言だけでなく、ファン・サポーターの声にも耳を傾けながら、再開のタイミングを検討していく。