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湘南ベルマーレの調査結果について

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2019年10月8日(火) 16:40

湘南ベルマーレの調査結果について

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湘南ベルマーレの調査結果について
湘南ベルマーレの調査結果について

2019年10月4日(金)13:30~16:00
登壇:
Jリーグチェアマン 村井 満
芝・田中経営法律事務所 芝 昭彦 弁護士

〔司会からの概要説明〕
湘南ベルマーレの件について記者会見を始めます。
本日は村井に加えまして、弁護士の芝先生にもご登壇いただいております。
会見段取りについては、芝先生より調査報告について1時間以上ご説明させていただきます。
それを受けて、村井よりJリーグとしての処分について発表させていただきます。よろしくお願いします。

〔村井チェアマンからの挨拶〕
お時間頂戴しましてありがとうございます。
調査に入るまでの具体的なステップを説明させていただき、このあと芝先生より調査の内容についてお話しさせていただきます。
調査報告書1ページの調査に至るまでの経緯をお話しさせていただきます。

2019年7月2日、JFAに対して匿名の電話による通告がありました。通常は匿名電話に対しては、具体的なアクションを起こさないことが多いですが、10日に手紙によって、文書によって同じ内容が伝えられることとなりました。このタイミングでJリーグが知ることとなりました。電話、手紙の内容をJリーグが認識することとなりました。
内容が、憶測、伝聞、風評ではなく、内容に具体性があり、信ぴょう性がある、クラブのガバナンスそのものの内容が書かれていたこともあり、通常はクラブに調査を依頼しますが、リーグでの調査が必要と考えました。
この内容について、4名の先生方に調査をお願いすることになりました。

7月の中旬には、調査チームを発足することを決めておりまして、丁度お盆や合宿シーズンと重なることもあり、8月14日から調査を開始することを7月中に決めていました。実際には、8月14日から9月6日まで総勢60名弱のクラブ関係者に対して、基本は面談、一部電話、口頭、Web会議での調査を行いました。
最終的な調査結果についてはこれから説明がありますが、私の手元に来たのは、9月30日でした。本件、きわめて調査の中立性、独立性、専門性を擁するものだったため、9月30日に私自身初めて調査内容を知ることとなりました。本件をもとに、クラブの幹部には、10月2日に事実関係に関する報告をさせていただき、本日処分をクラブに事実と共にお伝えするというステップを踏んでいます。まずは、リーグとしての考えをお伝えする前に、具体的な事実として 芝先生にお話しいただきます。

〔芝弁護士より調査報告について説明〕
「調査報告書(要約・公表版)」を説明

〔村井チェアマンによるJリーグ裁定委員会の制裁に関する発表〕
9月30日に、調査報告の詳細版をいただきました。それを踏まえてJリーグの判断を申し上げます。先程、対象事実の詳細説明がありましが、監督としては行き過ぎた指導が存在したと認定しております。その内容はパワーハラスメントに該当するものであり、スタッフ、選手に対した事実をもとに判断をさせていただきました。
曺監督は①けん責(始末書をとり、将来を戒める)、②公式試合5試合出場資格停止となっております。②は、自粛ではあるものの、現実的に監督は、公式試合を控えていましたので、それを持って、制裁を科したものと認識しております。また、十分な社会的制裁も受けている認識ですので、先程芝弁護士からあったように、大変指導者としての力量の高い監督でもありますので、反省をしていただき、再起をしてほしいと思っております。また湘南ベルマーレに対しては、先程お話があったように、こうしたパワーハラスメントが該当する事案がクラブで発生している事案にも関わらず、それを認識することもできたはずです。もしくは、こうした事案が経営側に上がってくるような体制を整備する必要もあったと認識しております。そういう意味では、管理監督責任は重いという認識をしておりまして、今回、クラブに対して①けん責(始末書をとり、将来を戒める)、②制裁金200万円の制裁とさせていただきます。

30日の事案の踏襲を受けて、裁定委員会に諮問し答申を受け、制裁内容を確定しております。内容に関しては、本日の昼、眞壁会長と水谷社長に伝えております。両者とも厳粛に受け止めており、クラブとして再発防止に向けて、動き出しますということでした。本日の夕刻に会見があると聞いております。リーグとクラブで手を携えながら、こうしたことがないように、取り組んで参りたいと思います。

〔質疑応答〕
Q:
まず、村井チェアマンにお伺いします。
①曺監督の処分を決定するにしても、例えば、プロ野球・広島の緒方監督の件やVリーグの件などがありました。他の競技の最近の例を参考にされたのでしょうか。
②2015年に、当時熊本を指揮していた小野監督の暴力・暴言が相談窓口に通報されました。その時は、厳重注意で終わっていますが、社会的な状況の変化を鑑みて、処分を下したと思いますが、世の中や社会的な変化の影響があったのでしょうか。判断材料や判断基準について教えて下さい。
次に芝弁護士にお伺いします。
①一般の感覚とプロスポーツのトップ選手・監督に対する事実認定は難しいものがあったと思います。一般と違う部分や一番気を使われたところはどういったところでしょうか。
②また、立場的にお答えにくいと思いますが、処分は重いと考えられているのでしょうか。

A:村井チェアマン
①本件に関して、他の競技団体を参考にしたかということですが、直接的な事実認定は芝弁護士からご説明いただいたものをベースにしていますので、量刑を決めるとか、判断をする場合に、具体的に検討しつつ比較したものはございません。裁定のベースになるものは、Jリーグ規約で公序良俗に反する行為ということでございます。
ハラスメントは法規制が整備されつつありますし、ハラスメントがJリーグだけではなく、社会一般の大きな社会規範になってきているという大きな潮流を捉える上では、スポーツを取り巻く社会の要求・要望・期待は感じ取っていたつもりでございます。
②類似の事案に対する比較検討は、リーグとして当然行いますが、例えば一人に対して一回という場合と、複数人に対して、長期間に渡り多頻度である場合など、個々事案によって違いますので、総合的に鑑みて、判断いたしました。

A:芝弁護士 
①Jリーグのトップ選手・監督ということで、他の調査内容と違う部分に関しては、最初から弁護士チームも難しさを感じ、どういうふうに考えるべきか、かなり議論したり、検討したりして参りました。
そうは言いましても、私も、他の弁護士もプロスポーツ界のハラスメント事案を調査し、対応することを行ってきておりますので、初体験ではございません。昨今、世の中にハラスメント事案、ハラスメントの対応がとても多い中で、弁護士として、かなりの頻度でハラスメントの調査に携わっております。その中で、議論を踏まえて達した結論としては、我々が求められているのは、世の中の(一般的な)水準としてパワーハラスメントに該当するのか、しないのかの判断だろうということです。仮に、裁判官になったときに、どう評価するのか。いち法律家として、いち社会人として、こういうことが許せるだろうか。コンプライアンス上問題があるのかないのかを問われたときに、どちらだと考えるのか、といったことをベースに置いて考えました。その意味で言いますと、仮に対象者が誰であっても、起きた内容、広がりなどによって判断することに尽きるのかなと思います。特に今回、我々が重視したのが、曺監督の言動を受けた、見聞きしていたプロの選手、スタッフたちが、どう受け止めたか。つまり、一般の人が言われて感じたことではなく、常人ではないいわば「スーパーマン」たちであるJリーグの選手たちが感じること、プロのスタッフたちが感じていることは、我々と感じることが違うと思います。そういった受け止め方を重視したつもりですし、慎重に評価しました。

②処分に関しては、私共がコメントする立場ではございませんので、控えさせていただきますが、裁定委員会にかけられ、そこには弁護士の先生もいらっしゃいますので、適切な判断をされたのだろうと考えています。

Q:
芝弁護士にお伺いします。スタッフに対してパワーハラスメントがあったと認識しましたが、選手には、パワーハラスメントに値する可能性がある行為があったという記載でパワーハラスメントだと認定していないのでしょうか。

A:芝弁護士
スタッフに関して認定していますし、選手に関してもパワーハラスメント認定をしたところがあり、具体的には調査報告書(要約・公表版)の「選手に対する言動について(1)イ(ア)の①~④」はパワーハラスメントに該当するものと考えております。

Q:
要約・公表版の説明でしたが、何度も「多くの」、「少なからず」という曖昧で主観的な表現が入っておりますが、9月30日にJリーグに提出したものには、きちんとした数字が記載されているのでしょうか。

A:芝弁護士
その点は、(報告書の読者が)「分かりにくいだろうな」と感じている部分でした。ただ、今回の調査で気をつけた点が、「誰が言っているのか」、「誰がこういう目にあったのか」というところが(一般の読者に)なるべく特定されないように、わからないようにしないといけないということでした。選手・スタッフにヒアリングをする際にも、「あなたがこう言った」ということは、クラブやリーグには直接伝えません、報告書にも明記しません、と伝えました。そのため、それが分かるような形では、リーグへ提出した報告書にも記載はしておりませんし、「こういった選手が何人いる」と書くと、犯人探しではないですが、「誰が言ったんだ」というようなことが行われやすくなる可能性が出てきますので、ぼかした表現にしました。ただし、あえて言いますと、表現として「複数の選手がいる」としたもののイメージは2~3人です。4~5人より上の場合は「少なからず」という表現を使っています。「多い」「大半は」という表現の場合は、過半数もしくは6~7割というイメージをもっていただければと思います。

Q:
まず、村井チェアマンにお伺いします。
①管理監督責任があるとして湘南に制裁金の処分が科せられていますが、改善策の提出やクラブからの今後の方針に対する提示など、今後に向けての策を求めるのでしょうか?
②「一律に切り捨てても良い(ついてこられない者が悪い)といった考え方は、JクラブないしJリーグのあり方として社会的に許容されるとも考えがたい」といった記載があります。チェアマンに就任されてからコンプライアンスを充実させるということで、各クラブにもコンプライアンスオフィサーを置いていますが、機能していなかった点もあると思います。クラブと監督への処分の他に、村井チェアマン自身もしくはJリーグとして制裁を考えることはあるのでしょうか?
芝弁護士にもお伺いします。
「もっとも~」、「しかしながら」という表現が多く、「こうだけどこうだよね」という表現があります。今回のパワーハラスメントについて、スポーツの現場に起きていることとして、どういうお考えだったか教えて下さい。

A:村井チェアマン
①本日12時ごろ、湘南の会長、社長にお伝えた際に、再発防止についてアクションを起こしていきましょうとお願いしております。その場で聞いておりますのは、5項目くらいに渡って、ガバナンス改革に始まって、さまざまな再発防止を検討しているとのことでした。内容は、これからお互いに交換しながら進めていく所存でございます。今日の段階で期限については、握っておりません。おそらく、本日、この制裁を、選手やスタッフに伝え、クラブとしては最終的にどうしていくかを固めた上で、再発防止については協議していくことになります。

②Jリーグとしてのコンプライアンス事案に対する具体的な取組が十分ではなかった可能性がある中で、現時点でお伝えできることを、いくつか申し上げさせていただきます。
強化担当者、アカデミーダイレクターを含めて、本件を大至急、共有をいたします。留意点、全55クラブとして徹底しないといけないことを共有したいと思っています。現在、アカデミーダイレクターに対する改革案「プロジェクトDNA」と呼んでおりますが、ヘッドオブコーチングの養成講座においては、リスペクト精神やコンプライアンス精神を学ぶようなカリキュラムを決めております。また、ハラスメント事案だけではないのですが、クラブにはコンプライアンスオフィサーを配置しています。労働時間の管理、過重労働やハラスメントなどの人事系の事案が大きなリーグ課題になり始めておりまして、内容に関しては各クラブにコンプライアンスオフィサーに加えて、人事系のコンプライアンス対応をするヒューマンオフィサーの設置を検討しています。10月の実行委員会、11月の理事会で承認をいただくことを前提で準備を進めています。その他、選手、監督、コーチングスタッフなど全55クラブで5500人くらいになりますが、ハラスメント事案をケースや内容を豊富に増やしていきながら、提案を進めていくつもりでございます。

A:芝弁護士
調査チームとしてというより、私見ですが、大きく分けて対選手、対スタッフの言動になりますが、選手は、いろいろな感じ方をされたりしているのですが、私自身の受け止め方としては、少なくとも監督自身に悪意というようなものはなく、監督が考えていたのは「チームが勝つ」こと「選手が、よりうまくなる」こと、「より良い選手」になることを常に念頭に置いて、いろいろな言動をされていたのではないかと考えていますし、感じています。ただ、そのやり方が適切だったかというと、パワーハラスメントと認定しましたとおり、違う部分があるということですし、病んでしまっている、練習もできなくなってしまっているというのは、想像を絶する心労なのかなと思わざるを得ない状況ですので、とても残念だと思います。その選手に応じたやり方や言い方があれば、好結果を維持しながら、かつ弊害も起きなかったのではないかなと思います。被害状況を考えますと、問題であると思うところです。

スタッフに関してですが、(スタッフが)「チームのために尽くすというのは当然」ということですが、みなさんチームのために働いています。(監督は)「チームのため」「本人のため」とおっしゃっていますが、それはひょっとすると違う部分もあったのではないかなと思います。もちろん、全部が全部違うというつもりは毛頭ありませんが、「奴隷のようだ」とおっしゃられている関係者がいるように、相手に対するリスペクトやチームの仲間としてやっていくという仲間意識が欠けていると言わざるを得ない言動があります。そういうふうに受け止めている方が多いのは、極めて問題だと思いますので、そこは改善して、より強い信頼関係のある監督とスタッフとして、クラブ運営をしていただきたいと強く思っています。

Q:
お二人にお伺いします。監督に対する処分で、5試合出場資格の停止で、自粛したので本制裁を科したものとするということでした。このあと、クラブがどのような判断をするか分かりませんが、今週末の試合から指揮を取る可能性があり、できる状態になりました。実際にハラスメントを受けたと思われる人がいる職場に、処分を受けた監督が戻る可能性があるという制裁を下したことについて、どのようなお考えでしょうか。

A:村井チェアマン
すぐにというよりは、この間、長期間に渡って自粛という形ではありますが、現場を離れていた状況でございます。空白期間なく、戻るわけではございませんので、監督がどういう気持ちか分かりませんが、十分、反省はしていると思いますし、態度を改めて、新たに再起をしてもらえるのではないかと感じています。内規によって5試合としましたが、すでに5試合の出場停止をしているので、それに合わせた5試合では、まったくございません。結果的に5試合の制裁になりましたが、戻るのであれば、気持ちを切り替えて大きく成長してほしいと願っています。
A:芝弁護士
なかなか答えるのが難しいご質問ですが、例えばこれが一般企業の場合ですと、処分とは別に職場転換という対応ができるわけです。(行為者と対象者が)同じ職場で働かないという状況にすることが可能ですが、今回のケースではそういうわけにはいかない中で、(監督がクラブに)残るか出るか、どちらかしかありません。または、一定期間を置くかということです。そこは、クラブとしては重い責任ですし、重い判断を求められるんだろうと思います。我々は大勢の関係者と直にお話をして、途中で泣いたりした方もいました。そうした状況で、強くお願いしたのは、そうした状況があるということも、しっかりと踏まえていただいて、かつ、この「調査報告書」が公表されるということなので、大勢の方が読まれると思います。その中で、被害を受けている方に対する強い配慮や、(報告書には)供述がいくつか掲載されていますが、クラブのためを思って発言や協力をしてくださった方に不利益が生じないように、クラブや会社として、絶対にやっていだたかないといけないことだとコンプライアンス専門を扱う立場としては思いますし、万一、その面で問題があれば、その行為が新たなハラスメントであり、問題行為になる可能性がありますので、クラブとしては当然、適切な判断、対応をされるんだろうと期待をしております。

Q:
①今年5月、JFAが、指導に対する懲罰基準を制定したので、拝読しましたが非常に厳しいものだと感じました。今回の曺監督に関して、JFAの懲罰基準は適用されたのでしょうか。
②今回発表された内容は重いものが多いですが、一方で5試合というのでは、整合性がつかないのではというのが、正直な感想ですが、お考えを聞かせてください。

A:村井チェアマン
裁定事案は、Jリーグにおいて裁定することが認められていますので、JFAではなくJリーグ基準で判断となります。一方で、この事実をJFAにお伝えして、指導者ライセンスを今後どのように扱うかはJFAサイドのテーマになるかと認識しております。本裁定はJリーグの判断です。
②5試合の出場資格停止は軽いものではないと受け止めております。34節しかないJ1リーグにおける、1年間の結果を問われる監督にとって、5試合の出場資格停止を科すというのは非常に重いと思っております。この裁定についても、裁定委員の諮問を経て認められているものですので、妥当なものだと思っております。

司会からの補足
懲罰基準をご覧になると分かりますが、制裁の種類で対個人は4種類ございます。
①けん責
②制裁金
③出場の資格停止
④公式試合に関わる職務の停止
上から2番目の重さの処分となりますので、決して軽くはないという判断ということもお答えさせていただきます。現場を預かる監督としては、試合に出られないということは、重いことだと認識しております。

Q:
芝弁護士にお伺いします。今回、匿名で通報された人から、湘南の会長、社長などに報告したとのことでしたが、先日の湘南の集会では「そうした訴え出た事実はない」とのことですが、確認をさせてください。

A:芝弁護士
まず、誰が通報されたのかは、私は知りませんし、調査の過程でも分かりませんでした。把握しようともしませんでした。ですから、その方が、仮にそのような通報内容だったとしても、それは分かりません、としか申し上げられない状況です。過去に、監督の言動に関して、選手やスタッフ、関係者が、クラブの上層部に直訴、報告、相談をして、改善を求めたかについて把握したかというと、微妙なところです。そのように、ひょっとしてあるかもしれないと思いながらも、具体的にあったかというのを認定はできません。報告書にも書きましたが、会長、社長が認識し得たであろうという状況はございますので、直接、訴えなくても、改善の機会はあったのだろうと、個人的には考えております。

Q:
芝弁護士にお伺いします。
①2016年に暴行と思われる行為があったと記載されていますが、暴行罪になる可能性もあるということで、これが明らかになった時点で、自動的に警察の捜査や調査できるのでしょうか。もしくは、告発や申告をしないとだめなのでしょうか。また、(暴行を)受けた人に対して、告発できることを教えたことはあるのでしょうか。
②報告書の中では、2015、16年が2例あって、それ以外は2018年4月以降がほとんどです。曺監督は2012年に監督に就任しています。以前は、こういうことがなかったのでしょうか。または、調べられなかったということでしょうか。
③2018年4月のタイミングで、ライザップが湘南をスポンサードしはじめました。そのタイミングから頻繁に報告されているということは、ライザップは開かれた会社で、徹底したのか、その他に理由があるのか、教えてください。
村井チェアマンにもお伺いします。
①監督の行き過ぎた指導はあるかもしれないのですが、リーグとして、こうした問題をなくしていくためにも、これを機に、全クラブの全選手に対して、個別に調査をすることも可能だと思いますが、お考えを聞かせてください。

A:芝弁護士
①暴行罪は、一般論として弁護士として説明しますと、刑法に関するものでして、警察や検察などの司法機関が(暴行罪と)認定して立件すれば、裁判所で有罪になる可能性があります。ただし、これは、一般的には被害届や被害告訴が出された場合です。(暴行罪も)ひどい場合には立件することがありますが、被害者からの被害申告がないと、警察は動かないのが一般的です。なかなか今回のような事案で、被害申告がない状況で刑事事件として警察が動くことは、考えにくいところです。また、(対象者に)告発できるということをお伝えしたこともございません。今回の我々の調査の目的は、監督の言動に問題があるのか、ないのか、です。暴行罪にあたるか、あたらないかなど、法的に厳密に判断をすることを目的にしてはございませんし、そういうことを対象とした調査ではありません。ただし、問題となった行為は外形的には暴行罪ともなりうるほどの行為だということを(報告書で)お伝えしております。

②監督は2012年からの就任ですが、今回の調査は年の期限を区切ったものではございません。ですが、昔のことになりますと、(関係者の)記憶も曖昧になりますし、その人が既に(クラブに)いない場合もございます。このように供述や得られた証拠の量や信用性の点から、(昔のことは)どうしても認定するのが難しくなる中で、本当にそのようなことがあったのかな、と思ってしまう(認定が難しくなる)ということもあります。2012年ですと7年前になりますので、何を言われたか、なかなか覚えているのが難しいところです。(報告書では)堅いところを公表させていただきましたが、他に一切なかったかということはなんとも言えませんが、今回みなさまにご報告するほどのものではなかったということになります。

③それは分かりません。そういう観点から調査をしていませんし、「ライザップが入ったことが影響していると思っているか?」と聞かれたら「思っていません」と答えることになります。2018年4月からの事例が集中していることが不思議ではないかということですが、例えば2015年に在籍していた選手が、どれだけいるのか。2012年に所属していたスタッフがどれだけいるのかといったことによって、ヒアリングしたときに、その頃の内容が出てくる頻度が変わりますので、そういう意味ですと、調査では今いる方を中心に聞いており、その方々が体験したことを中心に話してくださっているので、当然、最近のものが多くなります。中には、昔のものもありますし、以前からあったけど、近年のほうがひどくなったという方も複数いらっしゃいました。過去と比べて、数量的に比較するのは不可能、難しいですが、そうしたことをおっしゃる方がいたのは事実です。ここからは推測になりますが、結果を出して、本なども出て、曺監督の指導が称賛されている中で、プレッシャーになって結果を出さないといけないと結果を求めたり、より高みを求めたいということが、ひょっとしたらあったのではないかと、私自身は感じたり、思ったりしていましたが、実際にはご本人の胸の内は、ご本人にしか分かりません。

A:村井チェアマン
①55クラブの選手、監督、スタッフは、おそらく何が許されて、何が許されないのか、曖昧な状況だと思います。具体的な調査に入る前に、我々は、これは許される、これは許されないというガイドラインを示す必要があると思います。サッカーの場合、物理的に広い空間で行いますので、大きな声を出さないと、反対側には届かないですし、監督がタイムを止めて指示をすることができないスポーツですので、短い言葉で鋭く指摘しなければならないという、競技の特質性もあります。
ハーフタイムの15分で方針を決定しなければいけない中で、育成や強化の観点では、ある程度叱咤激励することは、私は認められると思っています。近年ですと、練習中でもインテンシティも高く、練習も激しさが求められる環境だと感じますが、それも含めてハラスメントだと括られてしまってはいけないと思っています。逆に言うと、どんな練習でも、本番でもロッカーでも人格否定をするような内容は許されるものではないので、ガイドラインをしっかりとクラブ関係者に伝えることが必要なことかなと感じています。それから、今回の報告書を見て、事実認定をしている裏側で、曺監督からも「そういう意図ではないんだ」という弁明が多々あります。おそらく悪質な意図はなかったと思います。ハラスメントしようとかケガをさせようというのではなく、本当に情熱を持って育てようとした伝え方が、人格を否定するようなことが含まれたり、意図を相手がそのように感じたり、周囲にいた人も含めて辛い感情を抱くことがハラスメントなんだということを、我々も丁寧に説明して、減らす努力をしていくプロセスの延長線上に、それでもこういうことが起こったら、厳粛に対応していかないといけないですし、調査の前に周知徹底を急ぎたいと思います。

Q:
非常に難しい問題ですが、調査期間について、これだけの重要な問題と被害者がいると仕方ないと思う一方で、優勝や降格もかかるシーズン真っただ中で行ったことについて、期間についてはどのようにお考えでしょうか。できる限り短くということが求められると思いますが。

A:村井チェアマン
クラブの立場に立てば、長期化がクラブの不利益につながることになりますし、極力タイトに進めなければいけないということで、芝先生にも相当数の弁護士を本件の専従でつけていただき、相当なスピードで対応していただけたと認識しています。
ある意味Jリーグの理念の根幹にかかわる、リスペクト、スポーツ文化を広めよう、国民の心身の健全な発達に寄与しようという、先ほどの先生の言葉にもありました通り、プロリーグとしての矜持として、多くの指導者や子どもたちに見せられるリーグでなくてはいけないといったときに、本調査を軽く見てしまってはいけないという思いもありました。その両面のバランスの中で最善を尽くしていただけたのではないかという風に思っています。

A:芝弁護士
今回とても難しかったのは、おっしゃったとおりシーズン中であることです。そうすると週末に試合がある。それに向けたスケジュールがあり、試合の前日にヒアリングがあるので来てくださいというわけにはいかないということです。まさにチームの事情、ご希望等も踏まえて設定していった結果、こういう風になっているという点と、シーズン終わってからすればよいのではというご意見もあるかもしれませんが、現に被害を訴えてきている、被害が拡大するかもしれない中で、我々もリーグから相談を受けて、これは速やかに対応しなくてはいけないような事情がありそうですので、配慮はしながらも早急に調査するべきでしょうと意見を述べましたし、村井チェアマンもそういう判断をされたということです。

Q:
弁明を見ているとわかる通り、愛情の裏返しで行き過ぎた行為になってしまった、スポーツ界におけるパワハラはこのパターンが多いと思いますが、5試合の出場停止は消化済みで、クラブの状況によっては復帰もあり得るということで、基本的にはパワーハラスメントの理解や、何が指導として許されるのかというコーチングの話の理解があれば防げるものだと思いますが、曺監督自身がどの程度落とし込んで理解をしているのかをどうやって確認するのでしょうか。
また、再起というお話しもされていたかと思いますが、どのような形で指導者として立ち直って成長していくのかということをお伺いします。

A:村井チェアマン
愛情の裏返し、という話がありましたが、情熱をもって指導に当たるという延長線上に、行き過ぎた言動をしてしまうということは起こり得るので、指導者はその危険性を深く認識しながら対応する必要があると思います。
100人、200人に指導しているというのではなく、トップチームでは30人くらいという、一人一人がどう受け止めているかを見届けられる範囲ではありますので、厳しい叱咤激励はまったくもって問題ないと思いますが、どのように受け止めているか配慮するようにしていただけることを願っています。
本件のハラスメントについて曺氏自身がどう認識していたかを私自身知り得る立場にありませんので、この後もし彼と会う機会があれば、しっかりとコミュニケーションしたいと思っています。
彼に意図がなかったとしても、それを受けての感情、それを見聞きする周辺や職場環境、そうしたことも含めて大事なんだということをぜひ伝えたいと思います。
再起に向けて彼にどう期待するかについては、先ほどの説明の中に、彼の指導力については肯定的に受け止めている方も多々いるわけで、彼のすべてが否定されているのではないので、そういうことを留意しながら新たに指導者として、いわゆる領域を広げてくれれば、日本にとって大事な指導者の一人だと思っていますので、深く反省しつつ、前を向いてほしいと願っています。

Q:
メディカルスタッフのアドバイスを全く聞かなかった、それに対して非常に高圧的な態度をとったということが出てきたということですが、非常に重要な問題だと思います。
ドクターを中心にしたメディカルスタッフの権限をどれだけリーグとして明確にしているのでしょうか。

A:村井チェアマン
現在のところ、メディカルスタッフについて権限、役割を具体的に定めているものはなく、そのポジショニングはクラブによっては違うものとなっていると思います。
結局、専門性を持つ医師の立場で、監督とは切り離して独立した権限を行使すべきなのですが、結果的には監督にモノが言えない状況になってしまったことを考えれば、メディカルスタッフがどんな状況でも選手を守る、その立場を明確にする必要があると今回認識しました。
クラブはメディカルの人材をアサインしなくてはいけないことは決まっていますが、そのレポートラインや独立性も十分に配慮できていたかは検証が必要かと考えます。

Q:
一部情報が先にスポーツ紙に漏れていたことについてどう思うのでしょうか。調査報告書の中でも個人の特定をされないように配慮されているかと思いますが、この内容を見ると近しい関係者は誰だったのかと言う詮索が出てしまうのではないかと思いますが、どこから漏れているのかを特定する必要があるのかを伺えればと思います。

A:村井チェアマン
7月上旬に通報を受けて、(7月)中旬には 8月14日から調査することを決めておりました。その直前の8月12日に記事がでたと記憶しています。
その時、本件に対するJリーグで対応していたのは本当にごく少数ですので、我々の調査チームから情報が出たという認識は持ちえないと思っています。もしかしたら、通報者がメディア等に通報したのかもしれませんが、それは我々の知るところではないので、Jリーグの情報管理が甘かったのではないと願っていますし、確信しています。この立場の人間として情報をコントロールすることは難しいですし、詮索する立場ではないと考えています。

Q:
今回、監督に5試合、チームに200万円の制裁金、双方にけん責をとるということですが、考え方にもよると思いますが、Jリーグとしてはパワハラとして認められるということをクラブに伝えて、クラブが監督に対して、調査結果をもとに処分を判断して、その判断が甘かったら、Jリーグがクラブに対してさらに処分を下すという考え方は無いのでしょうか。
というのも、Jリーグが都度このような対応をすると、例えば外国籍監督で同様の事案が起きた場合に、監督に訴えられる可能性もあると思います。ハリルホジッチ監督が同様の事例だったかと思いますが、こうした可能性が出てくるのではないでしょうか。

A:村井チェアマン
クラブで何か問題が生じた場合は、クラブの実行委員が調査をするというのが基本だと思っています。問題があれば、クラブが該当者を処分する。リーグとしてはその報告を受けたうえで、あきらかに公序良俗に反するとなれば、処分を下せばよいと思います。
Jリーグが事実確認をしたのは、Jリーグがクラブと協力しながら事実確認にあたっているということです。リーグだけでやっているわけではなく、クラブの60名近くの方々の調整をしていただくのは、リーグではなくクラブにやっていただいていますし、リーグ主導であるように見えますが、クラブにも相当程度のご協力をいただいています。
本件の特殊性から鑑みて、Jリーグと協働してクラブと事実確認を行いました。その結果として、公序良俗に反するというリーグ規約に反すると判断したため処分をしましたが、この後クラブがどのような判断をするかはクラブに委ねることになります。
何か起こったら、今後全部リーグが動くものではありません。今回のように、個別、個別でリーグが調査しなければならない事案もあるかもしれません。

 

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