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【前編】Jリーグ屈指の音楽通。小林 祐三の語る音楽、DJ、ポッドキャスト…【ピッチで見せない別の顔:小林 祐三編】

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2019年9月11日(水) 12:00

【前編】Jリーグ屈指の音楽通。小林 祐三の語る音楽、DJ、ポッドキャスト…【ピッチで見せない別の顔:小林 祐三編】

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【前編】Jリーグ屈指の音楽通。小林 祐三の語る音楽、DJ、ポッドキャスト…【ピッチで見せない別の顔:小林 祐三編】
選手の新たな一面を紹介する連載企画、第7回目はサガン鳥栖の小林 祐三選手。多趣味であり、また軽妙な語り口もあって各方面で話題になることも多いJリーグ選手だ

ピッチの上では、決して派手さはないが的確な状況判断でチームに安定感をもたらす。一つひとつのプレーへのこだわりの強さは折り紙つき。そして、興味を持つものへのこだわりという意味でも、変わらない。音楽、漫画、アニメ、ゲーム……。多彩な趣味を持つ小林選手にとって、その一つである音楽の分野では、サッカー選手ながらDJイベントを催し人気を博したたこともある。小林選手にとって音楽とは、そしてDJとは。趣味の世界で作り上げられた表現力で、存分に語ってもらった。前編と後編に分けて掲載する。(取材日/6月26日)

こばやし・ゆうぞう/1985年11月15日生まれ、東京都出身。名門の静岡学園高校を卒業後、柏レイソルに加入。程なくしてCBで出場機会をつかむ。2005年にはワールドユースにU-20日本代表として出場した。その後、11年に移籍した横浜F・マリノスでは不動の右SBとして天皇杯制覇などに貢献。17年からサガン鳥栖に移籍した。かつては明るい髪色がトレードマークだった。

音楽家族に育ち、高校時代にエレクトロにハマる

――DJのお話を聞く前に伺います。元々、音楽に触れる機会は多かったのでしょうか。
僕の両親は某大学のクラシックギターサークルで知り合ったそうです。父親はずっとクラシックが好きで、趣味でチェロを弾いています。休みの日はいつも父親のチェロの音で起きるみたいな感じで、そのあとは大体、『題名のない音楽会』を観る。そういう環境でした。両親が知り合った当時は、ビートルズが大流行した時期。母親はそのビートルズに憧れ、いつもビートルズを聴いていました。これは最近発見したんですけど、僕もビートルズが大好きなんです。ふと考えたら、ちゃんと聴いたことがないなと思って。有名な曲しかきっと知らないんだろうなと想像していたんですが、アルバムを全部聴き直してみたら、ほぼ知っていた。曲名は知らないんだけど、身体に染みついていました。アルバム曲でも口ずさめるんですよ。小さいころの影響ってすごいんだなって思いましたね。

――楽器は何か弾けるんですか。
2人いる兄は、バイオリンやピアノをやっていました。自分もその流れでピアノをやっていて、ヤマハのリトミックスクールに通ったんですけど、まったくダメでした。“超劣等生”でした。そういう意味では、音楽のプレーヤーとしてはすごく劣等感があります。泣いて「辞めさせてくれ」って頼んで、でも、辞めさせてくれなくて(苦笑)。母方の祖母が「こんなに嫌がっているんだから辞めさせてあげたらいい。あの子にはサッカーがあるから」みたいなことを言ってくれたらしく、それで辞めさせてくれました。あのとき、祖母が味方じゃなかったらどっちつかずになっていたかもしれないですね。ただ、今思えば、ピアノを続けておけばよかったなと思います。

ちょっと、ここから僕の音楽遍歴を話してもいいですか?

幼少期にビートルズの環境に囲まれた影響から、まず兄が音楽好きなんですよね。兄がいろいろな音楽を深掘りして聴いていたので、例えば僕もその影響で小学校のときに『Weezer』っていうバンドの曲を聴いていました。僕が小学校5、6年生のころは日本のロックが最盛期。いわゆる、『ロキノン系』って言われるやつですね。椎名 林檎さんや中村 一義さん、くるり、SUPERCAR、NUMBER GIRLがデビューしたころです。僕は、そのあたりのアーティストが“どストライク”だったんですよね。それで聴き始めて、自分がかっこいいと思うようなものが高まってきて、高校生くらいのときにエレクトロミュージックにハマりました。Daft Punkとかですね。そして、プロに入ってすぐくらいの時期にUnderworldやケミカルブラザーズ……。ジャンルは全然、違うんですけど、それらはロックに通ずるところがあるんです。今、サカナクションがヒットしていますよね。彼らのデビュー当時、「ロックとエレクトロの融合」と評価されていました。僕が思うに、音楽的にその2つには共通項があると感じています。それもあって、ロックを経てからエレクトロにもスッと入っていけました。

僕が高校生のときにm-floがデビューしたんですよ。プロに入って、ひょんなことからm-floのDJである☆Takuさんと親交を持つことになって、イベントに遊びに行くうちにDJがどういうものかを知りました。DJ、これはすごいと思いましたね。それがDJとの出会いかもしれません。

2万人の前でサッカーするよりも、2人のお客さんの前でDJするほうが緊張

――DJにハマっていったきっかけは?
正直なところ、時間があったんです(笑)。がむしゃらにサッカーをやり続けてきて、試合にも出るようになって、そこで何か違う刺激が欲しかった。先に買ったのはベースなんですけどね。結構、ベースに触っていたんですけどいかんせん、1人で触っていてもおもしろくない。仲間内で弾くことはありましたけど、楽しむ環境が限られていました。でも、DJは1人でもできるし、聴いているだけでも楽しい。よくタレントさんやモデルさんでもDJをやっている人がいます。DJというのは、ある一定のところ、もしかしたら、恥をかかないレベルのところまでは割とすぐに行けるんですね。機械の力もすごいし、『ワンプッシュDJ』と言ってあらかじめ、音楽を取り込んでおいて、ボタンを押せば流れるっていうふうに簡単にできるのもあるんです。たとえば、DJの師範代が1人いたとして、その人にベースとなるものを作ってもらえれば、それを元にDJができてしまう。人の力、人の曲を借りてやることもできるんです。それでも、突き詰めていくと1つの楽器を極めるのと同じくらいか、それ以上に難しい。それが魅力であると思います。

――そもそも、ですが、DJとは実際にどういう作業をやっているんでしょうか?
人それぞれです。基本的にターンテーブルと呼ばれるものが2つ以上あって、片方の曲をかけて、もう一方で別の曲を準備しておく。片方の曲が終わる前に、次の曲に移動させるっていうのが作業ですね。もちろん、それに留まらなくて、ターンテーブルが4つあれば、いろいろなことができますよね。

――小林祐三選手は、そのどこに魅力を見出しているんでしょうか?
結局、自分が選んだ曲に対してのお客さんの反応を見るのが楽しいですね。共感を得られるところです。僕が初めて、人前でDJとして立ったのは、『マリノスナイト』のようにオフィシャルじゃなくて、オフのときに知り合いに誘われて、ある大学のアフターパーティーで回したとき。最初はお客さん2人くらいでしたけど、終わるころには人がたくさん前にいてくれて。正直、僕の出来は超下手だったんですけど、人が増えたっていうことで少しでも楽しんでもらえたなのかなと感じられて、とても楽しかったですね。

――サッカーとは違う緊張感でしたか?
全然、違いました。手の震えが止まらなかったです。慣れていないのもあるのか、2万人の前でサッカーするより2人のお客さんの前でDJすることのほうが緊張します。それも魅力の1つだと思います。

『マリノスナイト』。重圧を感じながらのイベントは大成功に

――横浜FM在籍時には『マリノスナイト』というイベントも実施されていますが?
当時、選手会長をやっていた中町(公祐)と仲が良かったというのもあって、何か選手会が主体になってイベントをやりたいというところがスタートでした。自分の趣味を使って何かやってみようって。本当に、手探りでした。あれは規模も大きかったですけど、最初は参加した選手も4人しかいなかったし、初回はチケットも完売しなかった。2回目、3回目は転売する人が出てくるくらい話題になって、多くの人に来場していただきました。まあ、僕のDJを聴きに来るっていう感じじゃないと思いますが、本当にうれしいことでした。あれだけ大勢の前でDJをやるというのは、個人的にはしんどかったです(笑)。楽しかったですけど、しんどかったです。タイムスケジュールもゲストも全部、僕が決めさせてもらった。だから、そっちの重圧もあったし、それも初めての経験でした。開場の時間をどうするのか、ここからここまでは誰が演奏するのか……それをすべて考えました。たとえば、普段は音楽にそんなにどっぷりハマっていない人もいるだろうから、ずっと音楽をかけ続けるのもどうなんだろうとか。それなら、中休みのトークパートを入れようとか。そっちのほうを考えることが重圧でしたね。

――大勢のオーディエンスの前で演奏するのはどうでしたか?
よく東京のクラブで1000人、1500人入るって言うんですけど、あれは会場の入場者数。DJをやっているその瞬間に、目の前に1000人がいるわけじゃないんですよ。そう思うと、マリノスナイトではものすごい数の人の前でやらせてもらいました。結構、売れっ子みたいな状況でした(笑)。でも、そんなことはおこがましいです。DJはうまくないし、僕はいつまで経っても音楽に対する劣等感があるので。普段、数千円払ってサッカーを観てもらっていますけど、数千円払って僕のDJを聴いてもらうのはワケが違うので。

(後編へ続く)

 

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