2019年度 第3回Jリーグ理事会 定時会見録について
2019年3月19日
〔司会より〕
本日の理事会におきまして、報告事項は2件です。
《報告事項》
1.Jリーグホームタウン活動調査2018
関連プレスリリース
https://www.jleague.jp/release/post-58072/
2.2019年ホームタウン関連助成事業の件(地域スポーツ振興活動及び介護予防事業)
関連プレスリリース
https://www.jleague.jp/release/post-58075/
〔村井チェアマンのコメント〕
お疲れ様です。明治安田生命J1リーグ、J2リーグ、J3リーグとすべてのカテゴリーでJリーグが開幕しました。ルヴァンカップもグループステージがスタートし、AFCチャンピオンズリーグのグループステージもスタートしております。すべてのカテゴリーが開幕した中で、本日の理事会では入場数の直近のトレンドやDAZNの視聴者のトレンドなど、報告事項が数多くございました。
感触としては、なんとか、いいスタートが切れたのかなと思っております。明治安田生命J1リーグはフライデーナイトJリーグということで、昨年に続き、今年も金曜日に開幕をいたしました。セレッソ大阪対ヴィッセル神戸の戦いで、チケットも完売でした。またDAZNでは、視聴者数は未発表のため申し上げられませんが、昨年の1番視聴が多かった試合を、さらに上回る結果でございました。昨年、視聴者数が最も多かったのはイニエスタ選手がデビューしたヴィッセル神戸対湘南ベルマーレの試合でしたが、その試合の2倍ほどの視聴者が開幕戦を見てくださいました。
さらに、第2節の川崎フロンターレ対鹿島アントラーズの試合は、ACL出場クラブ同士の戦いでしたが、こちらの視聴者数も昨年の1位を超えました。そういう意味では第1、2節で、昨年の1位を超える視聴数が記録されました。
また開幕戦のフライデーナイトJリーグで、大阪の体育大学の学生に協力していただき、スタジアムに来られていた415名の方々に対面インタビューを行いました。
インターネット調査などは定期的に行っていますが、どうしても初めてJリーグに来た方などはJリーグIDを持っていない方も多く、ネット調査ではリアクションをしない方もいらっしゃいます。400人に亘るインタビュー調査の概要報告もありました。昨年度、Jリーグへの来場が0-2回という方が31%、0回は11%でした。来場したきっかけは、サッカーに関心があるからというサッカー関心層は非常に少なく、開幕戦でのシャウエッセン入りスープの4万5千食配布や、スタジアムシャツがもらえることや友人に誘われたり、職場単位で来たりというようなフライデーナイトJリーグだからこその来場理由や企画性に対しての関心がずいぶん高かったようです。スタジアムは、誘い誘われというのがひとつのきっかけですが、関心の浅い方々にとっては土日よりも金曜日のほうが行きやすい、土日は他に優先度の高いことがあるという回答もありましたので、一定程度、仮説が裏付けられたのかなという調査報告をいただいています。
また開幕に当たりトピックを共有する時間もございました。入場数そのものは、開幕の同時期比では、昨年とほぼ同じくらいでした。入場数に関してはなにか大きく変わっていることはないかなという所感です。1年間みんなで頑張っていこうと決意を新たにした理事会となりました。
〔質疑応答〕
Q:ここ数年でBリーグやTリーグなどが発足し、週末の時間が取り合いになるのではないかと思います。他競技とJリーグの開催日時が重なり、特にスポーツに対して関心の高くない人たちの取り合いが起きたとき、Jリーグとしてはどのような対策や取り組みを考えているのでしょうか。
A:村井チェアマン
本日の理事会でも、そうした他の競技団との関係性の話が出ました。DAZNの場合、すべての視聴者がサーバーにつながっていますので、誰がいつ、どの試合を何分間見たのかというプロファイルがはっきりしています。バスケットやバレーの視聴者の半数以上は、実はJリーグも観戦していることが分かりました。また、例えばプロ野球の観戦者の分析で言いますと、2つ目に見ている競技はメジャーリーグではなくJリーグ(2018年12月時点)だったということもありました。そういう意味では、取り合いや奪い合いというよりも、筋書きのないドラマを愛するスポーツ愛好家は、競技を超えて見ていることが分かってきています。他の競技団体と連携して、スポーツを盛り上げ、視聴環境をアナウンスすることが今後、重要なことかなと感じております。当然、限られたお小遣いや所得で、どこにどれくらい配分するかという取り合いの構造はあるかもしれませんが、スポーツ愛好家を育てていく必要があるステージの日本においては協力していくフェーズがあると考えています。
Q:直接的に関係ないかもしれませんが、スポーツを中心にガバナンス構造や組織、コンプライアンスを含めて、ひとつの指針づくりが進んでいます。その中でスポーツ界には一定の抵抗感があり、政治主導やルールによって再選の年齢を制限するといった数字に抵抗感を示している場合もあります。JFAやJリーグは、すでにルールがきちんとしていますが、政治や政府が介入してくる場合の所感やJリーグのガバナンスやコンプライアンへの取り組みについて考えていることを教えてください。
A:村井チェアマン
私の立場で直接、政治や行政からコンプライアンスやガバナンスについて要望は届いているわけではありませんので、実感として何かを申し上げることはできないのですが、経済界などでESG投資という言葉があり、環境、ソーシャル、ガバナンスがしっかりしていないと、投資の対象から外れてしまうことがあります。サステナブルであるために必要な要素が、社会や世界の潮流になりつつあります。我々に10年に渡って2,000億の投資をいただく、投資の対象としてのJリーグを預かる立場としては、ガバナンスがしっかりしていることや社会的な立場を表明していくことは、すごく問われていると感じます。政治や政府は、それを代弁する形で取りまとめられるのかもしれませんが、個人や投資家である人から見ると健全な経営が求められているものだと思います。その内容自体に大きな違和感があるわけではありません。
本日の議案の中で、「役員候補者選考委員会の発足」という内容が検討事項としてありましたが、みなさんに決定事項としてお伝えする内容ではなくチェアマンの選び方や選ぶ体制に関しては、現職のチェアマンは一切介入せず、私のスタッフも介入することがありません。そういう意味ではフラットに人選をするような体制を整えています。
【村井チェアマンの補足】
本日は時間をかけて、各クラブが2万回以上行い懸命な努力をしているホームタウン活動と昨年から新たに始めた社会連携。ESG投資のS(Social)に当たる部分に対してJリーグがどのように取り組むか、藤村よりお伝えします。よろしくお願いします。
〔Jリーグ社会連携本部藤村本部長より Jクラブのホームタウン活動について〕
社会連携(シャレン)のご説明の前に、毎年恒例のJクラブのホームタウン活動の集計ができましたので、ご説明させていただきます。
2018年の1月~12月まで、54クラブが実施したホームタウン活動をクラブからご報告いただいて取りまとめています。毎年恒例のとりまとめで、2006年から集計しています。最初のころは選手、クラブの社長に地域の中に出ていっていただきたいということで、選手、監督、クラブの社長の活動数を集計していました。
2016年から大きく数え方を変えて、もっと広く、クラブの関係者が地域に出た活動を全部カウントしましょうということにしました。こうした地域活動は主力をアンバサダー、マスコット、アカデミー、普及コーチが担っていて、それらを数えないと、クラブが地域で何をしているか正しく反映されないこともあり、クラブとしては報告の手間が増えたことはありますが、2年間かけてクラブと話し合い、3年前から大きく変えています。その時に、同時にどんな活動をホームタウン活動とカウントするか整理しました。一見するとホームタウン活動っぽいけれども、営業活動や販促活動というもの、必勝祈願はクラブのためのもので地域のためのもではないから数えないなどのルールを整えてカウントしました。色々な活動を、健康、地域振興、社会課題に分け、どのあたりの領域の活動が多いかもわかるようにしています。
昨年の54クラブの活動の総数が20,032回となっています。2017年の10,873回から9,159回増加、1クラブ平均54クラブで割ると、年間371回平均となります。
クラブごとの回数と、どんな領域で動いているか、昨年と比較しながら見ていただける資料を用意しています。資料は100ページを超えるものなので、Jリーグのホームページに掲載して、必要な方はご覧下さいということにしています。今年は、各クラブのホームタウン担当の方に1年を通じて最も感動したことを1枚の写真と短いコピーで寄せてほしいというトライをしました。
※クラブの活動を一部紹介
●札幌
昨年の9月の胆振島地震被災者訪問を挙げています。
●栃木
選手の学校訪問はよくありますが、子どもから選手に50メートル何秒ですか?という質問が出たので、外に出て一緒に走ろう、と言って子どもと選手が走っている写真を寄せていただきました。
●浦和
ハートフルクラブとして、落合キャプテンはじめ、長い間多くの回数のサッカー教室を実施していますが、「一生懸命、楽しんで、思いやり」の3つを子どもたちに伝える、サッカーをするよりも心をはぐくむ取り組みとして、そのレッズのハートフルの哲学を短い言葉で寄せていただいています。
●横浜FM
昨年5月にJリーグを使おうという大きなワークショップを実施させていただきました。その中で横浜FMがウォーキングサッカーの日を作りたいというアイディアを出されましたが、昨年の7月に早速横浜市内で開催されました。参加者の中には、電動車いす、知的障がいをもつ方がいたり、おばあちゃんや中年太りの私がいたり、いきなりダイバーシティ―な形で始まりました。そのあたりはJリーグのチームを持っている強みと思います。
●新潟
早川選手が白血病から復活してきたところで、自分の言葉で闘病生活について語ったのですが、それをして良いか非常に迷いがあった中で、先輩からの言葉で励みになったというコメントをいただいています。
●富山
新潟で「病院ビューイング」ということを4~5年前から実施していますが、その試みを富山で実施し、富山の病院でDAZNを見ながら「カターレがんばれ」と応援する姿(写真)が寄せられています。入院患者にとって、ともすれば沈みがちになりがちな入院生活が、これによってとても雰囲気が良くなるということで、お医者様から評価をいただいて、そうした良い活動が県境を超えて新潟から富山に広がっていくという姿もJリーグが「シャレン」で広げていきたいことです。
●岐阜
昨年非常に災害が多かったのですが、岐阜も豪雨災害があった中、選手がすぐに動いていただいて、こうした状態のお年寄りのところに助けに行き、とても良い笑顔の写真を撮ることができました。
●C大阪
U-23チームの選手たちが、地域の聾学校を訪問し、点を取ったら手話で「桜」を話すと約束して、次の試合で実現しました。
クラブと選手がずっとクラブホームタウン活動を続けてきて、それはこれからも続けていきます。地域の方に応援していただいて、初めてプロクラブが成り立ちます。
たくさんあるホームタウン活動の中で、たくさんの関係者がかかわっているものを増やしていきたいと考えています。選手が学校を訪問するのは、チームと学校、一対一の関係です。障がい者に就労体験をご提供するのに、例えば甲府は地元の医療機関に直接声掛けしています。これも素晴らしい笑顔があるほんとうによい活動です。
一方、例えば川崎フロンターレでは川崎市とご一緒することで市内の関係施設に広く声掛けできる。またNPO法人ピープルデザイン研究所が参加することで、就労体験の中身が常に改善されていく。年間20回の川崎Fの試合日程をあらかじめ伝え、そこに人を集めることができるようになります。
それによって障がい者と一緒の就労体験も、年間を通じて安定して実施することができます。
安定して開催するために、市に寄り添って、また障がい者支援をしているNPO法人(ピープルデザインというのですが)がいらっしゃることで、フロンターレの枠を超えて、障がい者の方が川崎市のハロウィンパレード、アメリカンフットボールを手伝いに行くなどの活動が年間で実施されるため、(試合をお手伝いいただいた方の)正規就労につく率が非常に高くなります。これは税金で助けてもらう立場から、働いて税金を納める立場に変わることです。行政コストが大きく削減されます。クラブと障がい者施設が一対一で完結するよりも、たくさんの仲間を集めていろいろな力を結集して大きな活動にできると、社会的価値が生まれていきます。
(クラブの皆さんには)たくさんの仲間を集めてくださいと伝えています。たくさんの人が集まるには、共通のテーマが必要になります。テーマを真ん中に置いて、たくさんの人が集まるようなホームタウン活動を「シャレン活動」と呼びたいと考えています。シャレン活動がクラブを中心に55のホームタウンの中にできていくと、もっと良い社会ができると思いますし、クラブには地域や企業様の信頼というかたちで必ずかえってくるというお話をさせていただいています。
今日の理事会で実は、「シャレン!」という言葉の商標登録をしてロゴを作成することを提案しました。また地域に対するおかしいくらいの愛情を持ってシャレン活動をしていこうという意味を込めて「Love&Crazy!」というスローガンを掲げて参ります。社会課題に取り組むというとつい難しい顔になりがちですが、我々はプロスポーツで楽しんでいただくことがお仕事なので、社会活動もみんなでわくわくしながら、ニコニコしながら取り組んでいこう、そのためにはクレイジーなくらいがよいということを、本日の理事会の中でお話しさせていただきました。ロゴなどは後日、発表させていただきます。
【質疑応答】
Q:社会課題に共通のテーマを置くホームタウン活動は非常に素晴らしいと思ったのですが、テーマを設定はクラブが決めるのか、リーグが決めるのでしょうか。
A:藤村本部長
クラブにゆだねることだと考えておりますが、場合によっては外部の方がテーマのオーナーになることもあります。昨年の「Jリーグをつかおう」のように大事なのはテーマオーナーがいること。熱意があって本気で課題解決をしたいという熱が無いと伝わらないと思います。
クラブであっても、外の方でも良いですし、ひょっとしたらJリーグの誰かかもしれません。
Q:地域それぞれでテーマを設定したほうが良いということなのでしょうか。
A:藤村本部長
そうですね。地域の実情に応じて、地域、地域で行っていく活動がある一方、55クラブ横串で取り組んだほうが良いという活動が見つかれば、そのスケールを生かして全国で取り組もうというJリーグが旗を振るパターンも出てくるのではないかと思います。
Q:回数を競う話では位と思うのですが、20,032回というのは過去で最も多い活動回数だったという認識で正しいでしょうか。クラブで積極的に取り組んでいる、回数が多いなどの傾向はあるのでしょうか。
A:藤村本部長
活動数は最も多いです。
FC東京、浦和レッズが多いと思います。クラブの皆さんのご報告に伴うので、報告する方のまめさ、熱意、時間濃霧で差異が出てきてしまうのではないかと思います。ただ、3年間同じ手法で調査をしておりますので、経年変化、傾向をご覧いただくにはある程度参考にしていただけると思います。
Q:回数が目標ではないと思いますが、Jリーグとして目標、到達点、指針で掲げられていることはありますか。
A:藤村本部長
内々に回数の目標は持っていますが、表に出ていかないほうが良いと考えています。先ほどご説明した1ピクチャー1ワードという表現で、活動が持っている価値や、Jクラブがそこにあってよかったなということを切り取って、なるべくたくさん発信していくことが当面のKPI、KGIだと考えています。クラブにも、どんな写真で、どんな言葉で書いたら伝わるかということをトレーニングしてもらいたいと考えています。
Q:配布資料の「2019年ホームタウン活動助成について、29クラブ90件と書かれていますが、
1件あたりの助成金額の上限は決まっているのでしょうか。
A:藤村本部長
1件当たりの上限は200万円で、年間を通じて行うチーム活動は200万円、単発での活動は上限約50万円という二つにわけています。
Q:2019年度の活動の90件の活動中で、基本的には一般の方向けの活動が多いと思いますが、湘南ベルマーレのビーチバレーチームなどのプロチームの活動も認められるのでしょうか。
A:藤村本部長
総合型地域スポーツクラブを目指そう、サッカーだけではないというのがJリーグ設立からの理念なので、サッカー以外のスポーツに助成をつけていきましょうという制度で、その場合トップチームを抱えてそれをサポートするような取り組みも助成対象としており、トップアスリートの全国大会に行く際の遠征費なども含まれます。それをするために、かならず地域で普及活動をすることを条件にしていて、スポーツを広めるベクトルを必ず持つようにしていただいています。
Q:ずっとホームタウン活動のデータを追っていて、活動内容の変化、かつて多かったもの、最近はこういうものが多い、地方と首都圏の違いなどのはっきりした違いなど、傾向をつかめているものはありますか。藤村さん個人の感覚的なものでも。
A:藤村本部長
そこまでは分析できていないです。
割とクラブは変わらずやっているのでは。話をきくともうシャレンになっている活動もあります。意識的に新しい人と触れ合うチカラがこの分野にはありますので、続けていくとクラブが新しい顧客を獲得することに絶対につながります。毎年同じ人と同じイベントの話をするだけでなく、新しい人と新しい活動をしていきましょうというメッセージも伝えています。