8日にヤマハスタジアムで、J1参入プレーオフの決定戦が行われる。対峙するのはJ1・16位の磐田と、J2・6位の東京Ⅴだ。磐田が残留を決めるのか、東京Ⅴが2008年以来のJ1復帰を果たすのか。Jリーグの歴史を彩ってきた名門対決に、大きな注目が集まる。
昨年までの「J1昇格プレーオフ」からレギュレーションを変え、「J1参入プレーオフ」として争われる今大会は、J2勢にとってよりハードルが高まった。J2勢同士によるプレーオフを勝ち抜き、さらにJ1の16位チームとの決定戦を行う。つまり、昨年までのプレーオフに加え、2008年まで行われていた入れ替え戦の要素も含んでいるのだ。
もっとも、その歴史を紐解けば、下位チームが上位チームを撃破する「下剋上」が成し遂げられることも珍しくはない。今回は、過去の「昇格プレーオフ」と「入れ替え戦」で実現された「下剋上」の割合を探っていきたい。
まず前提として、2004年から2008年まで実施された「J1・J2入れ替え戦」と、2012年から2017年まで行われた「J1昇格プレーオフ」ではレギュレーションの違いがある。前者はホーム&アウェイ方式で争われ、2試合合計スコアによって勝敗が決する。一方で昇格プレーオフはリーグ戦上位チームのホームゲームとして1発勝負で行われ、90分を終えて同点であれば、ホームチームの勝ち上がりとなる。今回のJ1参入プレーオフでも、採用されているレギュレーションだ。
つまり、年間順位で上位のチームにアドバンテージが働くため、下剋上を果たすことは決して容易ではない。しかし、入れ替え戦も含め、過去にあった24のケース(今年の参入プレーオフ2試合も含む)でじつに12回、つまり半数で下剋上が成し遂げられているのだ。
入れ替え戦のケースでは、J1で下位に沈んだチームとJ2で上位となったチームとの対戦であり、シーズン中の両者の勢いを考慮すれば、下剋上は比較的起こりやすいかもしれない。一方、昇格プレーオフでポイントとなるのが、上位チームが引き分けでも勝ち上がれるというレギュレーションだ。上位チームが慎重な戦いを選択し、失うもののない下位チームがリスクを負って攻めこんでいく。そんな構図が生まれやすく、実際に2012年の大分や2014年の山形が、積極果敢な戦いを展開し、J2の6位からJ1昇格を成し遂げている。
一方で近年は、順位通りの決着が増えている。カギを握るのはやはり、レギュレーションだ。下位チームの攻勢を落ち着いた対応で凌ぎ、引き分けで勝ち上がる。昨年の名古屋がそうだったように、守備を意識した戦いで結果を手に入れている。事実、昇格or参入プレーオフの全19試合のうち、上位チームの勝ち上がりは全10試合あり、そのうち6試合でドロー決着となっているのだ。
J1・J2入れ替え戦、J1昇格(参入)プレーオフの結果一覧
また1試合あたりの得点率を見ても、上位チームが0.67なのに対し、下位チームは1.04。上位チームが2点以上奪ったケースは、19試合のうちわずか1試合しかない。このことからも、上位チームが慎重な戦いを演じていることが窺える。
得点の分布図で勝ち上がりの傾向を見てみると、両者の置かれた立場がよく分かる。上位チームは無得点の場合では、7度の下剋上を許しているものの、1点でも取れば8割近い確率で、勝ち上がりを実現できる。一方で下位チームは無得点ではもちろん、1得点でも5割をわずかに上回る確率でしか勝ち上がれていない。2点以上とってようやく、勝ち上がりの可能性が大きく高まる。
つまり、ロースコアの展開となれば上位チームが優位であり、下位チームは2点目を奪えるかがポイントとなる。
もっとも今季の東京Ⅴはともに1-0のスコアで勝ち上がってきており、安定した守備と限られたチャンスをものにする勝負強さを備えている。また、終盤に失速した磐田に対し、東京Ⅴにはプレーオフも含めJ2で結果を出してきた勢いが備わっており、過去の入れ替え戦同様に、両者の勢いの差が結果を左右することも考えられる。
J1昇格(参入)プレーオフの得点分布
もっとも、ホームで試合を行えるうえ、引き分けでもよい磐田のほうが、優位な状況にあることは間違いない。守りを重視してロースコアに持ち込むのか。あるいは早い段階で先制点を奪い取り、東京Ⅴの勢いを食い止めるのか。その選択が勝敗を分かつポイントとなりそうだ。
データ提供:データスタジアム