フランス代表の優勝で幕を下ろしたロシアワールドカップ(W杯)。4年に一度のサッカーの祭典は、世界の国々が4年間かけて培ってきた“自分たちのサッカー”の見本市であり、時代によって移り変わる“最新トレンド”が示される舞台でもある。したがって最先端のスタイルを確認できる絶好の機会と言えるだろう。
現在、世界のサッカーの潮流となっているのはどのようなスタイルなのか。そしてJリーグのサッカーとでは、どこに違いがあるのか。データをもとに、両者の違いを紐解いていきたい。
比較したのは今季J1リーグ第15節までの計134試合と、ロシアW杯全64試合の「得点パターン」だ。まず「プレー別」にゴールの割合をみていくと、最も多かったのはJ1リーグ、W杯ともにセットプレーからだった。PK、直接FK(CK)も含めたセットプレーからのゴールはJリーグが31%なのに対し、W杯は39%とおよそ4割近くに上った。W杯の場合はVAR判定の導入によりPKの数が増えたことも大きいが、いずれにせよセットプレーの重要度がさらに高まっているのは間違いない。
セットプレー以外では、J1リーグではクロスからの得点が多いのに対し、W杯ではスルーパス、その他のパス(※クロス、スルーパス以外のパス)の割合が多かった。その要因はいくつか考えられるが、世界ではサイド攻撃に対する警戒心が強まり、クロスに対する中央の守備に、高さと強さが備わっているということなのだろうか。また1トップを採用するチームが多く、攻撃時における中央の枚数が少ないことも、クロスからの得点が少ない要因だったかもしれない。
ドリブルからの得点の割合もJ1のほうが上だった。日本に比べて世界では単独で打開しシュートまで持ち込むのが難しくなっているということなのだろう。また今回のW杯ではオウンゴールが多かったのも特徴的だった。
得点パターン比較(プレー別)
「ボールを奪ってからゴールまでの時間別」に見た得点の内訳は、J1ではショートカウンター、W杯ではポゼッションからが最も多かったが、その割合を比較すると、ロングカウンターの数で大きな差が生まれている。
日本戦で見せたベルギーのロングカウンターに象徴されるように、世界では低い位置で奪ってから素早く切り替え、フィニッシュまで持ち込む力を備えていることが分かる。ショートカウンターの少なさは高い位置でボールを奪えていないということだが、逆に言えばボールを保持するチーム側が、危険な位置でボールを失っていないことの表われでもあるだろう。一時期のトレンドとなっていた「ハイプレス・ショートカウンター」の時代からはすでに移り変わっているのかもしれない。
得点パターン比較(ボールを奪ってからゴールまでの時間別)
最後に「距離別」の得点の内訳を比較すると、最も顕著にその差が表われたのは、20メートルから25メートルの位置からのゴールだ。ペナルティエリアのやや外側、いわゆるミドルシュートと定義づけられる位置からのゴールがW杯では多かったことが分かる。J1ではまだまだその数が少ない。
逆に30メートル以上のゴールはJ1では8つあるのに対し、W杯ではゼロだった。J1の8点のうち4点は、「ハイプレス・ハイライン」の特殊なスタイルを採用するため、ゴールを空けてラインの裏をケアする役割が求められる横浜FMの飯倉 大樹が決められたもの。これはスタイルによるものであり一概には比較できないが、30メートル以上の距離から得点を許さないGKのクオリティのも向上も、今後のJリーグが強化すべきポイントとなるかもしれない。
距離別ゴール数比較
データ提供:データスタジアム