Jリーグはこのたび、表記の件につき以下のとおり対応いたしましたのでご報告いたします。
【報告事項(サマリー)】
3月10日(月)、Jリーグは公益財団法人日本サッカー協会(JFA)を通じてFIFA EWS社よりスポーツ賭博市場動向の監視レポートを受け取りました。
監視レポートの内容は「3月8日(土)Jリーグディビジョン1第2節サンフレッチェ広島 対 川崎フロンターレに対する賭け方に『小さな異常値』が見られた」というものでした。
Jリーグはこの報告を受けて、当該試合に関し不正行為又はその働きかけがなされた形跡がないか調査するため、試合に関わった関係者を調査することを決めました。そのために弁護士を含む緊急調査チームを立ち上げ、両クラブの実行委員、強化責任者、出場またはベンチ入りした選手、監督はじめベンチ入りしたコーチングスタッフ、さらに4人のレフェリーを対象に、個別の事情聴取を実施しました。
またJFAの協力を得て、EWS社から追加の情報を収集するとともに、別の監視会社からセカンドオピニオンを入手しました。
さらにJFA技術委員会、および審判委員会に試合の映像分析を依頼しました。
調査の結果、当該試合に関し不正行為及びその働きかけがなされた形跡は一切認められず、不正は行われなかったとの判断にいたりました。
加えて3月17日(月)深夜、JリーグはJFAを通じてFIFA EWS社より、最終レポートを受領しました。同社による調査の結果、「問題の異常値は市場での「噂」によって惹起されたもので、当該試合への不正な関与はなかったと思われる」とのことでした。
Jリーグは今後も、スポーツ賭博市場の監視から警報を受け取った場合は、徹底的な調査を行います。また関係者への啓発活動等を通じ、我々が否応なくスポーツ賭博と試合結果への不正関与という脅威にさらされていることへの理解を、深めて参ります。そういった活動の積み重ねが、Jリーグのフェアネス(公平性と透明性)を守る防波堤になると、確信しております。そしてこれからも、フェアで魅力的な試合を行うことにより、地域の皆様に夢と楽しみを提供し続けて参ります。
<EWSとは>
JFAは2011年より、違法なスポーツ賭博による「試合操作」(審判、選手の買収など)の可能性を検出して警告するシステムEWS(Early Warning System)を導入しております。Jリーグの各試合を含む日本国内の試合も世界各国の複数の賭博事業者/ブックメーカーにおける賭けの対象になっております。従って、このEWSを導入したことで、「試合操作」の可能性を未然にキャッチし、必要な対策を講じる危機管理体制を構築致しました。
このEWSは、FIFAから独立したEWS社(100%FIFA出資会社)が運営しており、450社以上の世界中の賭博事業者/ブックメーカーと提携し、これらの事業者から即時的に提供されるさまざまな情報をもとに、各国のサッカーの試合における賭け率の変動などを24時間365日、監視しています。 例えばある試合で、賭け率が急激に変動するなど「不自然な動き」が検知された場合、EWSによって「不正操作が行われている可能性がある」と判断され、その試合が行われているサッカー協会に対して即座に「警告」が通知されます。
<本件経緯詳細>
3月10日(月)
●10:19
JリーグはJFAを通じて、FIFA EWS社からのメールを受信した。
「3月8日開催のJ1の試合に関するレポートで警報を出す」という事前連絡。
●17:46
JリーグとJFAは、EWS社から、J1 第2節の9試合に関するレポートを受信した。
「警報の詳細は追ってマッチレポートでお知らせする」という内容。
3月11日(火)
●8:44
JリーグはJFAを通じて、EWS社からのマッチレポートを受信した。
●9:30
Jリーグは第1回対策会議(主催:村井チェアマン)を開催した。
(会議での決定事項)
・本件について厳格な調査を実施して、当該試合に関し不正行為やその働きかけがあったかどうか、見きわめる。
・両クラブの関係者、レフェリーから、個別に事情聴取する。そのために外部の弁護士を含む緊急調査チームを立ち上げる。
・リーグ戦とACLの日程を勘案しつつ、可能な限り速やかに調査する。まず13日(木)の12:00に両クラブの実行委員を招集する(両クラブは11日、ACLで海外遠征中だった)。
3月13日(木)
●9:00
Jリーグは第2回対策会議(主催:村井チェアマン)を開催した。
弁護士を交え、現状分析および調査の具体的手法等を検討した。
●12:00
Jリーグは第3回対策会議(主催:村井チェアマン)を開催した。
・両クラブの実行委員、JFA理事、JFA審判委員長、弁護士等が出席。
・EWS社からのマッチレポートの概要、Jリーグの調査方針を伝達。調査の実施方法を調整。
・JFA技術委員会、および審判委員会に、試合映像の分析を依頼。
●12:50
緊急調査チームが両クラブの実行委員から個別に事情聴取。
●20:34
JリーグはJFAを通じて、セカンドオピニオンの第一報を入手した。
3月14日(金)
Jリーグは、JFA技術委員会と審判委員会から、「試合映像の分析結果、まったく異常はない」、との報告を受領した。
3月15日(土)
●10:31
JリーグはJFAを通じて、セカンドオピニオンのレポートを受領した。
3月17日(月)
●14:00
緊急調査チームによる事情聴取が完了。当該試合に関し不正行為及びその働きかけがなされた形跡はいっさい認められなかった。
●23:31
JリーグはJFAを通じて、EWS社から「問題の異常値は市場での「噂」によって惹起されたもので、当該試合への不正な関与はなかったと思われる」との最終レポートを受信した。
<本件に関するチェアマンコメント>
私は、1月31日のチェアマン就任会見の折、サッカー界における「3つのフェアプレー」について言及させていただきました。それは、「ピッチ上のフェアプレー」、「ファイナンシャル・フェアプレー」、「ソーシャル・フェアプレー」の3つです。
一つ目の「ピッチ上のフェアプレー」は、「笛が鳴るまで全力でプレー、早いリスタート、素早い選手交代」を指します。二つ目の「ファイナンシャル・フェアプレー」は、2012年度から導入しているクラブライセンス制度に基づきクラブ経営の透明性と健全性を図るというアクションを更に進めることです。そして三つ目の「ソーシャル・フェアプレー」、これは暴力団その他の反社会的勢力との取引や交際の根絶、また差別行為の禁止を謳ったものです。
いまここで、Jリーグ規約の第3条「遵守義務」の一節を引用しあらためてご紹介いたします。
Jリーグ規約第3条第3項:Jリーグ関係者は、自らが暴力団その他の反社会的勢力に属する者(以下「暴力団員等」という)であってはならない。また、Jリーグ関係者は、暴力団員等による不当な要求および財産上の利益供与の申し入れは断固として拒絶し、かつ暴力団員等と取引をしまたは交際してはならない」
Jリーグ規約第3条第4項:Jリーグ関係者は、いかなるものであれ、人種、性、言語、宗教、政治またはその他の事由を理由とする国家、個人または集団に対する差別を行ってはならない。
私は、過日の埼玉スタジアム2002における横断幕の事案および今回のFIFA EWS社からの警報という2つの事案に触れ、サッカー界が社会に及ぼす影響の大きさをあらためて認識するとともに、私どもJリーグは「ソーシャル・フェアプレー」の徹底に対し、従来以上に積極的に取り組んでいかねばならないと強く思います。
今回、EWS社から「小さな異常値があった」という警告がありましたが、異常値の大小に関係なく、「警告は警告である」との考えのもと、可能な限り早くアクションを起こし、事態を究明すべきだと考えました。そして両クラブを含めすべての関係者が、私どもJリーグのアクションに即座に賛同し、調査に協力してくれました。この場を借りて、あらためて深く感謝申し上げます。
EWS社がJリーグの試合に警告を発したことは史上初めてのことです。この一報を聞いた時、当初は私も大変驚きました。しかし、調査を進め、事実関係を知る中で、「Jリーグは不正を絶対に許さない。日本においてEWSは常に正常に稼働し監視状態にある。そしていつでもJリーグは徹底的に調査・検証する体制にある」というメッセージを冷静に内外に発信することが、将来の日本サッカー界の健全な発展のために大変重要なことだと考えるに至りました。
今後も、いつどこで、どのようなことが起こるかは予断を許しません。しかし、Jリーグはこれからも各クラブとの連携を深め、継続的に注意喚起を行い、研修会の開催等による啓発活動を推進してまいります。
Jリーグは世界で最もフェアなリーグとなることを目指し、あらためて本日、Jリーグとしての決意を申し上げます。
「Jリーグは試合への不正な関与は一切認めない。また万が一そのような事実が発覚した場合には、その事実を迅速に調査し、関与した者が発見された場合には徹底して排除する」
皆さまのご理解とご協力を、何卒しくお願い申し上げます。
以上
※詳しくはJリーグ公式ホームページをご覧ください。
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