【イレブンミリオンのスタート】
2010年までに年間総入場者数を1100万人にするJリーグ・クラブ共通の中期目標を設定した。今年はその1年目となったが、最終的に、過去最高の年間8,590,510人(前年比103%)を達成した。これはクラブスタッフはもとより、選手、チームスタッフ全員がその目的を理解し、積極的に取り組んだ成果と感謝したい。目標設定の1年目ということで、各クラブの現状把握、個々の課題も明確になった。今後は、さらに自治体やスポンサー、そして、多くのファン・サポーターなど、Jリーグに関わるすべての方々の協力が必要であり、より一層の理解を求めていきたい。
【リーグ戦・カップ戦について】
J1リーグ戦の優勝争いは、昨年、一昨年に続き、最終節までもつれこむ盛り上がりを見せた。鹿島アントラーズは、終盤の9連勝と最後まで諦めない戦いで見事優勝を成し遂げた。Jリーグ史上初のクラブ10冠という偉業を高く評価したい。浦和レッズは、終盤ペースダウンし、惜しくも優勝を逃したが、ACL(AFCチャンピオンズリーグ)とリーグ戦の両タイトルを狙った意気込み、シーズンを通して堂々と戦い続けた姿勢に敬意を表したい。両者を中心とした優勝争いは、リーグ戦の醍醐味を日本中のサッカーファンに伝えてくれたことと思う。
ヤマザキナビスコカップでは、ガンバ大阪が攻守のバランスのとれたゲーム運びでトーナメントを制し、クラブ史上初のリーグカップ戦タイトルを獲得、関西の盛り上げに貢献した。また、今シーズンも、ガンバ大阪のフェアプレーの徹底は見事であった。
今年は、リーグ全体で多くの有望な若手選手が台頭し、アジア男子サッカー2008 予選でも素晴らしい活躍で、見事北京オリンピック2008の出場権を獲得した。このことは各クラブにとって、大きな財産となったことと思う。
J2リーグ戦は、上位と下位の実力差が拮抗してきた結果、最後まで熾烈を極める昇格争いが行われた。各クラブが着実に力をつけ、試合レベルが向上した。
【ACLの制覇】
今年特筆すべきは、なんといっても浦和レッズのAFCチャンピオンズリーグ2007の制覇であろう。15年目を迎えたJリーグであるが、今後のさらなるレベルアップのためには、アジアを牽引し、世界と対等にわたりあえる実力を多くのクラブが備えていくことが必要である。今年は、日本サッカー協会とJリーグが連動して、ACLサポートプロジェクトも立ち上げた。出場クラブの努力に敬意を表するとともに、サッカー界全体が結束してアジア制覇という大きな目標を成し遂げたことに感謝したい。
【アカデミー活動の充実】
子供たちの育成環境を整えていくためには、年間を通したコンスタントな試合数の確保、国際経験を積めるような機会創出が重要である。前者については、今年U-13リーグをスタートさせ、試合機会の少ない年代を中心にホーム&アウェイ方式を中心としたリーグ戦を実施した。来年はU-14リーグもスタートする予定であり、地域クラブとも一緒に、より多くの子供たちの試合数確保を目指していく。また、後者については、従来のU-15 Jリーグ選抜ブラジル遠征に加え、今年はドイツ遠征も実施し、さらに、中国・韓国とはユース世代のキャンプでそれぞれが交流するなど、育成年代の国際交流・国際経験の積み上げも充実した。
素晴らしい選手の育成のためには、技術面だけではなく、ベースとなる人間教育も指導者に求められる重要な役割である。今年は、選手一貫教育プロジェクトを立ち上げ、子供たちの問題解決能力や考える力を引き出せるような指導者養成にも積極的に取り組んだ。
【ホームタウン活動の充実】
各クラブが地域性を生かして様々なホームタウン活動に取り組んでくれた。
今年は、厚生労働省と連携し「Jリーグ介護予防事業」がスタートした。今後の高齢化社会を見据え、地域の高齢者の方々が、健康にスポーツを楽しめるような環境づくりへの取り組みは、将来に向けて意義ある第一歩となったことと思う。さらに、各クラブで、各種の社会貢献活動やスポーツ振興など、「Jリーグ百年構想」の具現化に向けて、地域と連動した活動が目に見える形で充実した1年となった。
こうした活動の広がりにより、全国のJリーグ入りを目指すクラブや地域の理想のクラブ像がより明確に発信されたことと思う。
冒頭に記したイレブンミリオンは、単なる入場者数の目標値ではなく、クラブと地域が一体となったすべての活動が充実して初めて実現するものと考えている。イレブンミリオンという共通目標を掲げたことで、各クラブが、地域と連携したより魅力的なクラブづくりに改めて取り組み始めたことに感謝したい。今後も、地域、クラブ、チーム、選手が、それぞれの個性を発揮できるよう、さらなる努力を積み上げていきたい。
以上
(社)日本プロサッカーリーグ
チェアマン 鬼武 健二
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