勝利の凱歌は山形からあがった。J1昇格プレーオフは準決勝、決勝と勝たなければJ1昇格の権利を得られない山形だったが、最後は虎の子の『1点』を守りきる形で1−0の勝利。3−2と接戦を制した準決勝に続いて1点差で勝ちきる勝負強さを見せた。一方、3年連続でJ1昇格プレーオフに進出した千葉は、この決勝では2012年と同様に引き分けでもJ1昇格の権利を得られたが、2012年と同様に0−1の敗戦。昨季は勝たなければならなかったJ1昇格プレーオフ準決勝で1−1の引き分けに終わり、3年連続で『1点』に泣く結果となって大事な一戦での勝負弱さをまたもや露呈してしまった。
関東の千葉サポーターだけでなく、すでに雪に悩まされている東北の山形サポーターも大勢来場し、J1昇格プレーオフ史上最多の35,504人の観客が集まったスタジアム。いつも以上に熱気あふれる応援を受け、独特の雰囲気の中での一戦は、互いに攻めの姿勢は見せながらもパスや動きが合わなかったり、失点阻止の強い意識での局面の守備があったりして、なかなかシュートまで持ちこめない。そんな状況下で最初に決定機を作ったのは千葉だった。25分、中村太亮のCKから166センチとこの試合の両チームのスタメンで最も身長が低い町田也真人がヘディングシュート。だが、ゴールポストの横に外れてしまう。千葉が最初の決定機を逃したのに対して、山形は最初の決定機を得点に結びつけた。37分、宮阪政樹のシュート性のCKは千葉のGK高木駿にセーブされるが、こぼれ球から宮阪がクロスを上げると山崎雅人がヘディングシュート。ゴールポストに当たったもののボールはゴールマウスに転がり込み、山崎が奪った貴重な先制点が結果的に決勝ゴールとなった。
J2リーグでチーム最多の14得点のディエゴがベンチスタートで、立ち上がりこそ多少硬さは感じられたが、山形は終始いつもの自分たちのサッカーで戦った。例えば59分、右ウイングバックの山田拓巳を3バックの右ストッパーの當間建文が追い越して攻め上がり、強烈なシュートを放ったようにサイド攻撃も健在。疲労からの走力の低下で持ち味の前線からのプレスが少し弱まった終盤は、77分のケンペスの交代出場で2トップにした千葉の猛攻を受けて押し込まれたが、GK山岸範宏を中心に選手個々が体を張りながら組織守備の綻びを最後まで作らなかった。
千葉は先に失点したくないという思いからリスクマネジメントを優先した形で、前半は1トップの森本貴幸へ当てる形で前線へむやみにロングパスを入れてしまった。ボールを横に動かしながら縦に入れるチャンスをうかがう攻撃ができず、効果的なサイドチェンジも少なかった。パスを出せば決定機が作れそうな場面で無理な角度や体勢でもシュートを打ってしまうなど、どこか冷静さを欠いた判断のプレーが多かった。「モリ(森本)は相手の裏への抜け出しがストロングなので、僕が(中盤の低い位置に)落ちてきた状態でモリが相手の背後へ行った時に、モリの周辺に誰かがいてセカンドボールを拾えたらチャンスだった。チームとしてもう少しそこができていればよかったのかなという印象がある」と町田が言ったように、森本にボールが入った時のサポートはこの試合も遅く少なかった。
ギリギリの状況で競り勝つ強さを発揮してJ1昇格の権利を勝ち取った山形だが、J2でギリギリではJ1の戦いは厳しいことは石崎信弘監督も選手もよくわかっている。J1昇格プレーオフでJ1昇格した大分と徳島はいずれも最下位でJ2降格となった。来季は選手補強も含めて攻守ともにどれだけレベルアップできるかがJ1で勝ち抜くカギとなる。
終盤の谷澤達也、ケンペスの決定的なシュートは山岸の好セーブに阻まれた千葉。だが、もっと決定機を多く作れるように厳しい姿勢で練習から個々と組織でやれることを増やし、大一番でも逞しく戦えるようにならなければ、目指すJ1への自動昇格は達成できない。
以上
2014.12.08 Reported by 赤沼圭子
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