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【J1:第34節 広島 vs 仙台】レポート:柳沢敦、広島の地で宙に舞う。フェアプレー賞高円宮杯「3連覇」を確定した広島の美しい精神(14.12.07)

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その数にして、13回。柳沢敦が何度も何度も、天高く宙に舞った。場所はユアテックスタジアム仙台ではなく、エディオンスタジアム広島。胴上げしているのは仙台の選手ではなく、広島の選手たちである。

仙台のサポーターの前での挨拶を終えた柳沢の腕を、この日は負傷のため欠場した佐藤寿人がつかみ、「いやいや」と遠慮する偉大なストライカーを千葉和彦が抱え込むように引き込んだ。「13回だぞ」というかけ声と共に、広島の選手たちが何度も何度も、柳沢を胴上げする。かつて共に仙台でプレーしていた林卓人も笑顔で13番の身体を押し上げた。柳沢敦というフットボーラーが残した足跡と影響の素晴らしさが、満天下に示されたシーンだったと言える。

イタリアでの3シーズン(2003〜06)をのぞくJリーグでの17年、全ての年でゴールを積み重ね、ここまでJ1通算108得点。その柳沢が109得点目をゲットしそうな瞬間もあった。83分、鹿島時代からの後輩・野沢拓也のCKが、背番号13の足下に。瞬間、アイディアが閃く。ヒールシュートだ。絶妙のコースに転がる。ゴールネットに……、いやそこは広島に移籍した後輩が許さない。「ヤナギさんと一緒にやれたことが、自分の財産」と語った林卓人がガッチリと「109点目」を阻止。試合前日、「真剣勝負の中で、ヤナギさんとの戦いを楽しみたい」と語っていた守護神の想いが、このプレーに結実していた。

それにしても、エディオンスタジアム広島は寒かった。ハーフタイム直前、晴れていた空が一気にかき曇り、白い真綿のような雪が一気に降り始める。40分過ぎあたりからは吹雪となり、ハーフタイム中にピッチは真っ白になってしまった。積雪の中の試合なら、シンプルな速攻を持ち味とする仙台にペースが傾くのではないかと考えるのが普通である。実際、赤嶺真吾や武藤雄樹がシュートを放って広島ゴールに迫り、白い雪が仙台に活力をもたらしているようにも見えた。

だが、積雪でもボールが動くことを確認した広島の選手たちは、冷静だった。58分には森崎浩司の美しいFKがポストを直撃し、64分には試合を動かした。清水航平の右クロス。何でもないボールに見えたが、DFがクリアをミス。湿ったピッチを跳ねたボールを収めた高萩洋次郎はGKを冷静にかわし、鎌田次郎の追撃をはね飛ばして角度のないところからシュート。先制だ。本当の技術があれば、少々の雪なら関係ない。後半の広島はそんな誇り高いプレーを見せてパスを繋いでいたが、その象徴が背番号10だ。67分、仙台DFのトラップがずれたところを、森崎浩司が見逃さない。しっかりと身体を入れてマイボールとすると迷いなく青山敏弘の足下へ。3対3。青山は慌てず騒がず、DFを引きつけた上でのスルーパス。左サイドから一気に斜めに走って飛び込んだ高萩がダイレクトシュートでたたき込んだ。
このゴールは、青山と高萩だけの関係で生まれたのではない。ボールを奪った森崎浩はもちろん、中央で走っていた石原直樹が高萩のランニングコースをあけるように左方向へとスプリント。この動きによって仙台はマークの受け渡しがうまくいかず、高萩がフリーとなった。個がつながることで線となり、線がゴムのように伸縮することで相手の守備網を崩す。思わぬ積雪があっても、自分たちのサッカーを見せつけた広島の完勝だった。

疲労性の負傷のため石川直樹や菅井直樹がメンバーから外れ、梁勇基もベンチスタートとなった仙台は、前半こそ集中した守備を見せてくれたが、後半は失速。過酷な残留争いを勝ち抜いたことで、チームとしての疲労感が最後の45分に出てしまった。ただ大切なのは、この厳しかった残留争いと柳沢敦という稀代の名選手から何を学ぶか、何を感じるかということ。それは、選手たちの選択である。
石原直樹も「選択」の渦中にある。他チームからのオファーを受け、人生の舵取りに悩み続ける。スポーツ紙では移籍確定の文字が躍っているが、「何も決まっていない」と絞り出した彼の言葉は真実だ。青山敏弘は「残ってくれると信じている」と語り、多くの選手が石原に残留への願いを伝えた。森保一監督も「どういう判断になっても、(石原)直樹の決断をリスペクトする」としながらも「重要な戦力。来季も広島のシャツを着てプレーしてほしい」。サポーターも気持ちは同じだ。「紫の石原直樹を見ていたい」。横断幕に掲げられた言葉は、シャイで献身的で肉体と精神が躍動するアタッカーに伝わっていると信じたい。

最後に一つだけ。
広島の年間反則ポイントは史上最少のマイナス19ポイントに達し、3年連続フェアプレー賞高円宮杯獲得が確実となった。3年連続フルタイム出場を果たした水本裕貴も、今季は警告ゼロを達成。Jリーグのスタジアムにはためくフェアプレーフラッグに最もふさわしいチームが今年も広島だった。その誇りを、今季最後のレポートの締めくくりとしたいと思う。

以上

2014.12.07 Reported by 中野和也
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