プレーオフ制が導入され、今季で3年目。今季はJ1ライセンスを保有しない北九州が5位となったため、3位・千葉、4位・磐田、6位・山形の3クラブで争われることになる。まずは準決勝で磐田と山形がヤマハで対戦する。果たしてどんな展開となるか。
より勢いがあるのは間違いなく山形である。プレーオフ進出はクラブ史上初。今季は開幕から長く2桁順位だったが、終盤戦で一気に加速。第39節・熊本戦から3連勝をマークし、プレーオフ出場圏内へ滑り込んだ。最終節のホーム・東京V戦を1-2で落とし、4試合ぶりに黒星を喫したが、大きく崩れることはないだろう。
また、山形は天皇杯でも勝ち進んでおり、11月26日の準決勝で千葉(長居)と対戦。先述した東京V戦から中2日の連戦ながら石崎信弘監督はメンバーをほぼ入れ替えずに臨み、山崎雅人、キム ボムヨン、山田拓巳のゴールにより3-2で勝利した。天皇杯決勝進出はクラブ史上初。スケジュール的にはハードだが、勢いがあり、J1昇格への気運は高まっている。
対する磐田はリーグ6戦未勝利と後味の悪い形でリーグ戦を終えることになった。勢いでは山形に分があるが、天皇杯ではすでに敗退していたため準備期間はあり、この一戦に専念することはできた。今週の練習では負傷で戦列を離れていたペク ソンドン、ポポ、坪内秀介の3選手が揃って全体練習に合流。ベンチ入りする可能性もある。また、紅白戦では山形の戦い方はもちろん、終盤のリード時のボールキープなどプレーオフならではの状況も想定し、準備を進めてきた。
経験豊富な伊野波雅彦は「プレーオフは(リーグ戦と比べて)“別モノ”。平常心を持つことが大事」と語る。クラブとしては08年に入れ替え戦を経験している磐田だが、プレーオフは“未知”なる舞台。フタを開けてみなければわからない部分もあるが、チームとしてほどよい緊張感を保ち、かといってナーバスになることなく調整しているように見えた。名波 浩監督は「受け身に回ることはしない」とこのゲームを見据える。
では、先述した両者の現状を踏まえ、このゲームを展望したい。
ポイントの一つは山形のプレッシングである。両者は約2週間前の第41節(11月15日)でもヤマハで対戦しており、その際は山形がディエゴ、伊東 俊のゴールにより2-0で勝利。シュート4本とチャンスは限られていたが、効率よく得点に結びつけた。
山形の勝因は決定力であり、そして、守備力だった。前線から積極的にプレッシャーをかけ、磐田を牽制。この試合では磐田に10本のシュートを打たれたが、大きなピンチはほぼなく、完封勝利につなげた。石崎信弘監督はプレーオフへ向けて「やってきたことを続けていくだけ」と語り、山崎雅人も「失うものはない。今までやってきたことを出すだけ」と言いきる。
とはいえ、山形にとってはリーグ最終節・東京V戦(ホーム)→天皇杯・千葉戦(アウェイ)→プレーオフ準決勝・磐田戦(アウェイ)という3連戦。タイトな日程かつ、重圧のかかる一戦でどこまで走ることができるか。それとも強いメンタルと勢いで乗り切るか。
磐田とすれば、山形のプレッシャーを上手くいなしたいところだが、中盤のつなぎにやや不安が残る。センターバックの森下 俊が最終節・札幌戦で右もも裏を痛め、離脱。27日の紅白戦ではボランチ・藤田義明をセンターバックへスライドさせ、ボランチには関大出身の2年目・田中裕人を置いた。ボール奪取能力に優れたボランチだが、ビルドアップは苦手分野。紅白戦ではサブ組のプレッシャーに晒され、ボールを失う場面もあった。懸念材料はあるが、この大一番をヤマハスタジアムで戦えることはアドバンテージの一つ。『ドローでもOK』というプレーオフの規定を味方につけ、試合を優位に運ぶことができるか。
運命のキックオフは13時。ファイナルへ進むのは、どちらだ――。
以上
2014.11.29 Reported by 南間健治
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