先週末、広島に2−0で勝利してJ1残留を決めたJFK甲府だが、オフ明けの25日(火曜日)には城福浩監督の退任が正式に発表された。一週間くらい前までは残留すれば2015年もJFK甲府になる可能性が高いと思っていたが、先週あたりからそれを否定する情報が複数から聞こえ始め、残留決定から一夜明ければスポーツ新聞に記事が載り、厳しい現実が待っていた。マンチェスター・ユナイテッドのファーガソンまではいかなくても、G大阪時代の西野朗監督(現・名古屋監督)くらいのイメージで勝手に長期政権を期待していたけれど、城福監督が決断したのならそれを受け入れ、拍手で送り出したいと思ったファン・サポーターは多いだろう。正式な発表の前にマスコミで報じられて選手が疑心暗鬼なまま前節・広島戦を戦うようなことを避けるために、城福監督はチームのベテラン3名にだけは20日に韮崎の監督室で伝え、オフ明け25日の練習前に全員に伝えた。この時期、どのチームでも選手やコーチングスタッフの去就がピッチの内外に与える影響は小さくないが、JFK甲府はこれさえプラスに変えて戦おうとしている。
今節ホームに迎えるF東京は、城福浩が2008年から2010年9月まで監督を務めたクラブ。城福監督時代を特別だったと思っているファン・サポーターは少なくないはず。この点では、甲府のファン・サポーターも来シーズンからは同じ思いを記憶に留めて新監督が率いるチームをサポートすることになる。ただ、今節は城福浩が率いる甲府の選手がF東京から勝利を挙げる姿を見たいし、古巣のF東京に4戦(現在2分1敗)して未勝利で送り出したくはない。F東京のファン・サポーターは甲府戦のあとにユルネバ・「You'll Never Walk Alone」を歌って城福浩にエールを送り続けてくれたが、今節は甲府が勝っても歌ってくれますか?くれませんか?という興味を試合後に残す結果を手にしたいJFK甲府。
今節ホーム山梨中銀スタジアムに迎える8位・F東京は残念ながらACL出場権を逃してしまったが、城福監督は、「強いときの(FC)東京は手がつけられない。選手層とクオリティはJリーグでトップだと思う」と警戒感を強く持っている。現在の日本代表選手が一番多いJクラブでもあるし、サブメンバーも他なら即レギュラーと言っても過大評価ではないはず。「じゃあ何で優勝できなかったのか?」、「代表に招集されていた3人が戻っても新潟に勝てなかった理由は?」と、詰め寄られれば急用が出来たフリをするけれど、渡邉千真や東慶悟をベンチスタートさせる選手層は――理由に関係なく――厚いのは明らか。前線の武藤嘉紀、エドゥー、河野広貴の3人で30ゴールも挙げているのは、攻撃のスタイルが出来ていて決定力のあるストライカーがいる証拠。この攻撃陣相手に、リーグで一番被シュート数が少ないJFK甲府はゼロに抑えていいところを見せたい。何せ、ホーム最終戦でJFK甲府のホームラストゲーム。もちろん、ゴールを1つでも多く挙げて、貧打に耐えたファン・サポーターに帳尻が合った印象も与えたい。
昨年は実質的なJ1残留が決まってからは3戦3引き分けで勝つことが出来なかったが、城福監督は、「一喜一憂される中でも積み上げてきたことがあって、どんな状況でも我々だけが分かっている。それを残り2試合で見せたいと思っている。前線の外国籍選手(ストライカー)が当たらなくても、(残留に)成功できたのは積み上げの最たる現象。また、ここまで支えてくれた皆さんが見てくれている中でベスト・オブ・ベストでやることが我々が出来る恩返しだと思う。(もし来季も甲府で監督をするとしても、今季で退任するとしても)リーグ戦に向かう姿勢もやることも同じ。一番の恩返しは勝つことだけど、どんな結果でも胸を張って受け入れられるようにベストを尽くします」という趣旨の話をする。予算規模の小さい甲府のような立場では「必ず勝ちます」とはなかなか言えないが、“どんな結果でも胸を張って受け入れられるようにベストを尽くす”という姿勢と覚悟も終盤に連勝できた理由のひとつのはず。
来年の甲府は城福浩が特別な存在だと思うファン・サポーターが支えるクラブになるが、まだ思い出にはなっていない。11月29日に山梨中銀スタジアムで行うホームゲームが残っている。思い出になる前に、スタジアムに足を運んで一緒に戦いませんか?
以上
2014.11.28 Reported by 松尾潤
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