●反町康治監督(松本):
「終わってから時間が経ったので、試合の感想を忘れちゃいました(苦笑)。大分戦と似たような展開でしたね。ただ大分戦の経験もあったのか、ハーフタイムには後半はかなり風向きが変わるかなと思っていました。要所要所抑えないといけないところは抑えて、送り出しました。シチュエーションによっては(飯尾)和也とか玉林はベンチで終わっちゃう可能性もあったんですけど、そういうシチュエーションにならなかったのは、他の選手がそうさせてあげたいという気持ちが伝わったんじゃないかと、今思っています。
この試合の総括でもなんでもないですけど、僕が1年目の時からの選手はやはり感慨深いものがあるんですね。玉林は最初から何を考えているのか分からずまったく人の話を聞かないので、何回もグラウンドを走らせたんですが未だに直っていません(苦笑)。野澤も本当は湘南で契約延長の話があったのに、給料の安いこのチームに来てくれたことは感謝しております。彼にまず言ったのは『今までの2、3倍のシュートが飛んでくるけど大丈夫か?』ということですね。実際1年目はそうだったんですけど。和也はピッチ内では皆に慕われますが、ピッチ外ではまったく頼りにならない男ですね。ただサッカーに対する姿勢や、本人も言うように一切手を抜かないところ。今日も報告しましたが、フェアプレー賞と昇格については年齢が上の方の選手が受け止めて、率先してやってくれたことが一番なんですよ。選手同士で言えるようになってきたことが3年間の賜物です。さっき和也は僕がトイレに入った時に『ありがとうございました』って挨拶してきて、『タイミング悪いだろ』って言ったんですけど(苦笑)、本当に感謝したいのは監督の僕であってね。一人欠けていたとしても、こうした右肩上がりに行かなかったと思います。その意味で本当に感謝しております。社長にも感謝しております。J1に行くにあたって、色々な意味で新たな旅立ちになると思っています。僕も不退転の覚悟で頑張りますと言いましたが、どう考えても厳しい戦いになるとは考えています。そうした中でも決してブレることなくチームと共に歩んでいきたいと思っております。
試合の感想は殆どなかったんですけど、後半は我々らしさが存分に出た、躍動感溢れるイキイキとした試合が出来たと思っています。ただ、向こうは(吉田)眞紀人がギリギリのシュートを打ちましたが、そのシュートが入るのがJ1だと思って、ますます努力をしないといけないかなと感じています。お集まりの皆さんも公式戦最後なので、僕を追っかけないで、後はイベントだけで明日から休んで下さい(笑)」
Q:前半と後半で展開が変わりましたが。
「今日は向こうがエンドを取ったんですけど、こっちが取ったとしても攻める方向は代えませんでした。そのように飯田には指示しました。それは前半よりも後半の方が風が強くなるんじゃないかなという経験と情報も入っていましたしね。あと、水戸は0−0の試合が多いんですよね。そうすると後半勝負かなとなるので。前半の苦しい時間帯をしのげたのが大きな勝因だったと思います」
Q:点の取り方については。
「お互いに同じような並びですから、オフとオンの1対1の切り替えや走力、特にアウトサイドの2人には絶対負けてはいけないと試合前に話をしました。あと、向こうも久々に三島を入れてきて、そこをターゲットにして横からのボールで勝負してくるのは想像できたので、実際そういう展開で上手くボールを収められたり、あと拾われたりする苦しい展開でしたね。そこで祐三を少し下がり目にして拾わせて何とかしのいだ感じはありました。正直ガチンコの対決になるとギャップを作るのは難しいと思いますね。その意味で後半は両サイド含めてプレッシャーも甘くなって時間が出来ましたよね。それでボランチも少し受けやすくなって、(岩上)祐三と(船山)貴之が自分の良い形で受けやすくなる相乗効果はあったと思いますね」
Q:今季は昨季までに比べ、クロスからの失点が減っています。
「別に今年になってやっているわけじゃないんですね。1年目から3年目になって、ゲームのツボを抑えられるようになったというのはあると思います。横のボールからで向こうが触ったのは殆どなかったですよね。合わなかったのもあるし、向こうがミスってくれたとかもありましたが、ほぼ我々が先に触っている。それは昨年までにはなかったところだと思います。今日で恐らくクロスからの失点が13〜14%くらいになったんじゃないでしょうか? 昨季は64.2%だったので、ここが大きく勝点に結びついていると思います」
Q:この快勝は来季にどのような繋がるか?
「前半の出来から言うと、快勝とは言えないでしょうね。野澤は今季初出場でゲームフィーリングの意味では満足いかなかったと思いますがゼロで抑えて、良い時間帯に点を取れたということは勝負強くなったということですね。終わった後にこれだけイベントがあるのに、敗戦してからの挨拶はさすがに辛いですからね(苦笑)。今日は色々な目線で見に来る人がいる。感傷的になる人も多いし、最終戦ということで色々な目線で見られたと思います。ただ、ゲームが始まったらそんな目線はどうでも良くなるわけですよ。結局そうなるんだったら、今から試合に勝つための目線でやらないといけない。終わってから感傷的になってもいいけど、試合はちゃんと勝負を決めないといけない。そう言って送り出しました。それは良い形だったと思います」
Q:サポーターにとついては?
「開幕戦とはいえ、アウェイで8000人駆けつけるなんて地方のクラブではあり得ないことであってね。皆さんはそれが普通になっているかもしれませんが、そのためにお金をかけて、もしかしたら奥さんに色々言われている人もいると思います(笑)。そうして応援していただいていることには感謝していますし、そのハイテンションのまま42試合駆け抜けることが出来たかなと思っています。最初のあのテンションがスタンダードになってしまったので。来年もそういうハイテンションのスタンダードを作っていただきたい。選手がこれだけ頑張れたのもそれがあったからで、僕もそういう仕事をここで出来たのはそこに助けられた部分があると思います」
Q:あらためて、この勝点や得失点差について。
「試合数×2の勝点が優勝ラインと言われる中で、100を超えた湘南はすごいと思いますが、我々もそれに匹敵するくらい持っている力を出し切れたかなと思っています。燃え尽きるくらい我々も努力してきたし、選手たちもそれ以上に夏場の苦しい練習でも耐えてこれたのがこの数字に表れていると思います。1年目は複数得点は殆どなかったと思うんですよね。今は複数得点取れるようになった。前線のタレントも大きく代わっているわけではないのに、そういう中で攻撃的な姿勢が出すことができた。オープンプレーでも後ろからワンちゃん(犬飼)が超えていくとか飯田が出ていくとか、本当に躍動感のあるチームになったのが嬉しいです。この数字に満足することなく、これから本当にこんな勝てるシーズンはないと思いますけども(苦笑)、それに近づけるようにまた精進していきたいという気持ちは強いです」
Q:J1は別のリーグと話していましたが、思い浮かぶイメージとは?
「それはこれから考えることですけど、チームカラーとしては自分たちの良さを閉じ込める必要はないと強く思います。チャレンジ精神を持って潔くJ1でやりたいと思います。もちろんもっとボールを動かせる質が加われば鬼に金棒になるかもしれませんし、もしかしたら空振りになるかもしれませんし。それは何とも言えません」
Q:見ていて、相手にリスタートさせない早さを感じました。
「レフェリーに何か言っても判定は変わらないので、すぐに次に切り替えてポジションをとろう、と。例えば犬飼が上がっていたら誰かがそのスペースを埋める。そういう簡単な作業をきっちりやっていくという、その連続でしょうね。それは今さら言わなくても皆出来ているし、切り替えのトレーニングもやっていますから早くなったと思いますよ。それはどこのチームも同じですけど、やはり後半の15分過ぎからルーズになっていくんですよ。うちはそこがルーズにならない。そこは強みだと思いますね」
以上
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