ニンジニアスタジアムでの今季最終戦で愛媛は北九州をホームに迎えたが、石丸清隆監督と関根永悟選手がチームを去ることが決まっており、是が非でも勝って送り出したい一戦だった。そんな試合で愛媛の選手たちに気持ちが入らないわけはない。しかし、立ち上がりはなんでもないところでのパスミスやクリアミスが続き、北九州にあわやという場面を作られてしまった。

それでも、いつものように前線の３人が守備のスイッチを入れながら、時間の経過とともに愛媛の選手たちは落ち着きを取り戻す。逆に、今度は北九州のほうがなんでもないパスミスから攻撃の勢いを失い、ゲームは愛媛がボールを支配する時間帯が長くなっていった。それでも、愛媛はブロックを作った北九州の守備を攻めあぐねていた。西田剛や河原和寿がバイタルエリアでボールを受け、起点を作ろうとはしていたが崩した形でシュートに持ち込むまでには至らず。得点の匂いはなかなか感じられなかった。

そんな時に効果的だったのがセットプレー。35分、愛媛は右サイドで藤直也がフリーキックを得るとキッカーは堀米勇輝。これにニアサイドで村上佑介がヘディングで合わせると、クロスバーに弾かれたボールが林堂眞の足元へこぼれた。林堂はそのまま豪快に蹴りこみ、愛媛が待望の先制点を奪った。さらに、愛媛にとって心強かったのが後半がはじまってまもない、55分の追加点。自陣から藤のロングフィードを西田が胸で落とすと、拾った堀米が運んで最後は河原。愛媛が誇る３トップが貴重な追加点を叩きだした。

試合後、愛媛の選手たちは「いい形で（関根）永悟さんをピッチに立たせたかった」と語っていたが、その言葉通り２点のリードという最高の状況を作った。そして、72分に石丸監督は関根を投入。20分近く時間がありコンディションが心配されたが、その心配をよそに関根は右サイドを駆け上がった。ボールに絡む回数こそ多くはなかったが、１つひとつのプレーに湧くスタンド。たとえボールに触れなくても、全力疾走するだけでワクワクさせる彼のプレースタイルは最後までサポーターの心を打った。そして、関根がピッチに立った直後に失点。「すぐ１点取られてしまって、持ってないなと（笑）。オレらしいけど、最後に勝ててよかった」と関根は振り返ったが、最後は北九州のパワープレーも跳ね返して、愛媛はホーム最終戦を白星で飾った。

逆に、あと一歩及ばなかった北九州はここに来て連敗。目標としている３位浮上とは逆に５位に後退し、最終節の結果次第では７位まで転落してしまう可能性を残してしまった。今季、ライセンスがない北九州はJ1昇格は果たせないが、最終順位は必ず来季にも繋がる結果。シーズンの最後がアウェイ連戦という厳しい日程ではあるが、そこを乗り越えて１つでも上の順位を狙いたい。

もちろん、それは愛媛も同じこと。現在は昨季と同じ17位だが、最終節で勝てば数字上は14位の熊本まで射程圏内にとらえている。さらに、今節の勝利で昨季の12勝にも並んだ。堀米は「最終戦も丸さん（石丸監督）の方向性が間違ってなかったことを示せるように、選手一丸となって戦いたい」と力を込めたが、石丸愛媛のサッカーは次がラスト。JFL時代を知る最後の２人がクラブを去るからこそ、１つでも上の順位でシーズンを終え、来季以降のクラブに繋がるメッセージを残して欲しい。

以上

2014.11.16 Reported by 近藤義博