下位から中位への浮上。16位・栃木と18位・岐阜の一戦は、そこが焦点になるはずだ。互いに前節の敗戦でJ1昇格プレーオフ進出の可能性が消滅。降格の恐怖に怯えることがなくなった一方で、昇格への期待感を喪失した。そんな中、モチベーションを維持するのは容易ではないが、「観ている人に感動を与え、『よくやった!』と言ってもらえる試合をしたい」とは赤井秀行。プロである以上、いついかなる時も、そこがぶれてはいけない。今節も栃木が目指すのは勝利、それのみだ。
栃木が下位に低迷している原因は21試合も無失点試合がないことで、今更それを文字にする必要がないくらいに明らかだ。失点の中身を細かく見てみると、前節の富山戦ではプレスを剥がされてのカウンターから、前々節の福岡戦では背後を取られてからゴールを割られている。どちらともその週のトレーニングで念入りに確認し、警戒していた形だった。「相手のストロングポイント消して、ウイークポイントを突く」。阪倉裕二監督が就任してから強く訴え続けてきたことが全く順守できていないと言える。今節の岐阜のストロングポイントは、“緑のドログバ”ことナザリト。このストライカーにゴールを与えないこと、特に先制点を許さないことが肝要になる。そのために、「1対1ではなく、組織で守りたい」(小野寺達也)。
「自由を与えるとうまい人ばかり。しっかりアプローチして、そこからカウンターを打ちたい」
守ってばかりでは、勝点3は掴めない。だからこそ赤井は、ボール奪取からゴールに至るプロセスを明確にイメージしているのだ。富山戦では相手が慎重なこともあり、得意のカウンターが決まらなかった。その反省を活かし、持ち味である縦への推進力を発揮できるかが問われる。ボールを回されても焦れることなく取り所を定め、奪ってから一気に攻め切る。そんなダイナミズムが重要性を増すに違いない。
前節、栃木同様に敗れた岐阜は泥沼の4連敗中。こちらも状況は芳しくない。大分戦の敗因を一つ上げれば、出足が遅れたことだろう。セカンドボールへの反応で後手に回り、それがリズムを作れずに主導権を渡すこととなった。ファイトできない、いやしない選手を認めないラモス瑠偉監督のことだから、そこはこの1週間で改善を図ってくるはずだ。2―3と完敗した大分戦の轍を踏むことなく、2ゴールを決めて復調傾向にあるナザリトを活かすためにも、サッカーの基本的な部分の見直しと守備の立て直しを行いたい。それらが連敗ストップのキーファクターになるのだから。
技術、戦術も勝敗を分ける要素になるが、今節は気持ちの部分が大きなウェイトを占めることになるだろう。栃木は降格がかかった富山の気迫に、岐阜は昇格を見据える大分の狡猾さと情熱に屈した。何度も言うが、モチベーションは見出しにくい。とはいえ、栃木は無失点試合を演じること、岐阜は連敗脱出が懸かっている。そして不甲斐ない試合をした前節の分まで、双方ともファン・サポーターの思いに応えなければいけない。「消化試合だったね」ではなく、「昇格が懸かったような白熱した試合だったね」。試合後にそんな言葉が聞かれるような展開が強く望まれる。
以上
2014.11.08 Reported by 大塚秀毅
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