0−1。戦前に予想されたとおり、長崎と熊本のバトル・オブ・九州は互いに中盤で激しくぶつかり合うゲームとなったが、長崎は90分間を通じてほとんど主導権を握りながらも執着心で熊本に劣り、大事な試合を落としてしまった。熊本は5試合ぶりとなるこの試合の勝利でJ2残留が決定的となった。
長崎は攻撃の形を作るも得点に繋がらない。最後の決定力が足りない。ボールを保持する時間は長いものの同じリズムが続き、攻撃に変化をつけれない。今季の課題がまとめて出たかのような試合となった。試合後、高木琢也監督も「執着心で負けていた」、「見た目はいいが味が薄い料理のようだった」「ことわざで言う所の『押してだめなら引いてみろ』」と表現した。
数字を見てみよう。長崎はシュートは11本を放ち、熊本のシュートは3本に抑えた。CKも13本蹴った。試合を見ていない人なら長崎はきっと良い内容のゲームをして負けたと思うだろう。だが実際は「ああ、惜しい」と思えるようなチャンスはほとんどなく、決定機を作ることもままならなかった。チームは前半からロングボール蹴りこむことが多かったが「もう少しビルドアップに工夫があっても良かった」と小松塁は振り返る。セットプレーに関しても様々な変化をつけるなど試みたが、クロッサーの石神直哉は「なんとしても捻じ込むと言ったようなところが足りなかった」と悔いた。
また、せっかくゴール前にボールを運んでもFWがパスを選択してしまう。点を取るために後半から投入されたイ デホンは悪癖であるスマートさが出てしまい、綺麗な崩しを選んでしまった。高木監督は攻撃陣に対して「勇気が足りなかった」と嘆いた。
試合前に高木監督は「立ち上がりに注意したい」と言っていたが、試合はそのとおりの展開となった。10分、熊本はセットプレーの崩れから中山雄登、齊藤和樹、澤田崇が絡んだダイレクトのコンビネーションプレーを見せ、最後はDFの園田拓也がクロスに飛び込んだ。熊本は5試合ぶりの得点。緊張感に満ちた試合で熊本は最初のワンチャンスを確実に決めた。
18分、熊本の左SB片山奨典が近距離で蹴られたボールが顔面に入り、早い時間で交代を余儀なくされる。すると小野剛監督はなんとCBタイプの篠原弘次郎をピッチに送り出す。「(ロングボールを)跳ね返すために篠原は適任だった」と試合後に話していたとおり、長崎のロングボール攻撃を見越した上での起用だった。この後、熊本の両CBはアタッキングサードまで攻め上がることはほとんどなく、何度も何度も愚直に長崎のボールを跳ね返し続けた。割り切った、そして覚悟を決めた戦い方だった。
後半に入ると熊本は長崎のロングボールの出所になっているセンターバックにプレッシャーをかけることで、ペースを取り戻し、逆にバランスが崩れた長崎を攻め立てた。逆に長崎は後半9本のシュートを放つも、散発的な攻撃に終始。本来の長崎らしさは熊本の泥臭いプレーの前に見つけることができなかった。
繰り返しになるが、J2残留を賭けてこの一戦に臨んだ熊本の気迫が全てを飲み込んだ試合だった。サポーターの数でもホームを上回り、声量でもホームジャックしていた。「がんばらないと残り4試合は同じような結果になってしまう」(高木監督)というとおり、長崎は残り試合は気迫を持って臨むことが最大の課題となるだろう。今季はまれに見る接戦のために気持ちで負けてしまうとあっという間に、下位まで転げ落ちることになる。いよいよ、やるかやられるかのクライマックス。男を見せてほしい。絶対にサポーターも応えてくれるはずだ。
以上
2014.10.27 Reported by 植木修平
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