清水はホーム2連戦、広島はアウェイ2連戦。広島は水曜日に東京で試合をして(F東京戦)、広島に戻って、中3日で静岡への遠征なのに対して、清水は移動がなく、最近良い勝ち方をしているホームで戦えるというのは大きなアドバンテージ。J1残留に向けて非常に大事な連戦で、対戦相手は昨年の王者。厳しい戦いになることは間違いないが、そこでどれだけホームの利を生かせるかが注目される。
現在、残留争いの渦中にある清水だが、まず残り5試合での目標を整理してみよう。昨年は15位の甲府が勝点37だったが、最後まで残留争いがもつれた一昨年は、最終節で奇跡的な逆転残留を決めた15位の新潟が勝点40。この年の29節終了時点での新潟の勝点は、今の清水と同じ31。今年はその2012年と同様に複数チームによる大接戦になっているので、残留ラインが勝点40あたりまで上がる可能性は大いにある。そんな中で清水にとってのプラス要素は、5試合中ホームゲームが3試合あることで、その3試合に全勝すれば勝点は40。つまり、今後の勢いをつける意味でも、この試合は何としても勝ちたい、勝たなければいけない試合と言える。
そんな正念場に向けてのチーム状況は、間違いなく上り調子と言える。前からアグレッシブに守備をしていくというチームのスタイルが明確になって、それで結果も伴ってきた。そして、前節・新潟戦での劇的な勝ち越しゴールに象徴されるように、チーム全体が残留という目標に向けてひとつになり、全員でハードワークできていることが大きい。「自分のためだけじゃなくて、サポーターやエスパルスに関わる全ての人のために戦うという気持ちが出ていて、それでより大きな力を出せている」と大榎克己監督も語る。
となると、9日間で3試合目というこの試合に向けて、どれだけ疲労を残さず、コンディションを整えられるかが、まず最初の注目点。まず身体が動かなければ、自分たちのサッカーもできないからだ。もちろん、その点は28節・横浜FM戦の反省も踏まえて大榎克己監督も練習の負荷に十分配慮しており、チームスタッフの腕の見せどころでもある。
ただ、より体力的に苦しいのは、移動の多い広島のほう。清水ほどハードワークが前提のスタイルではないとはいえ、やはり動けなければ優位に試合を進めることはできない。今チームが置かれている状況は、残り5試合で勝点15差となり、事実上3連覇の可能性は消えたという状況。3位の川崎Fとは勝点9差で、ACL出場圏内に向けてわずかな可能性を残しているが、そのためには残り5試合全て勝たなければいけないいけないため、それが大きなモチベーションになっている。
今節は攻撃の柱である高萩洋次郎が出場停止で、森崎和幸とミキッチが負傷離脱中(ミキッチは欠場濃厚)。台所事情は万全とは言えないが、かつてあったアイスタに対する苦手意識も今は消えているため、今回も勝点3だけを狙って静岡に乗り込んでくるはずだ。
また広島は、基本は3バックだが守備時は5-3-1、攻撃時は4-1-5のようになる独特のスタイルを持っているが、それに対して清水が現在採用している4-1-4-1は、あまり相性が良いとは言えない。なぜなら、広島の攻め方として、前に張っている5枚のうち1人2人がタイミング良くバイタルエリアに降りてきて縦パスを受け、起点を作るというパターンを1ボランチで抑えるのは難しいからだ。さらに、ピッチ幅いっぱいに開いて高い位置に張っている両ワイドの選手をきっちりマークするのも、4バックでは難しい。
その点に関して、大榎監督は「サイドである程度起点を作られるのはしかたない部分もありますが、クロスを中で跳ね返すことはできています。それよりも、バイタルエリアは自由に使われないようにしたい」と語っており、その対策として2ボランチにするのか、あるいは他の方法で対応するのか、大榎監督の出方が注目される。
そうした広島対策が機能すれば、清水も十分互角の勝負に持ち込めるだろう。そうなればセットプレーも大きなポイントになるが、清水は新潟戦でセットプレーから1得点/1失点と良い面も悪い面もあり、セットプレーはどちらに転ぶかわからない要素のひとつ。また、清水が自分たちのサッカーができれば、高い位置でボールを奪って一気に攻め込むという場面も何度か作れるはずで、それを決めきれるかどうかが勝敗を左右する大きなポイントになる。
つまり、ゴール前の危ない場面を身体を張って守り切れるかどうかという部分も含めて、どちらに転ぶかわからない緊迫した局面でどれだけ相手を上回る力が出せるか。それが今節でも最終的に勝負の分かれ目となるだろう。もちろん、それは広島にとっても同じこと。
その意味で、新潟戦のヒーローとなった村田和哉は、「この残留争いを自分が救ったら救世主やし、この状況をヒーローになれるチャンスと考えてできているのが、結果が残せているいちばんの理由やと思います」と語る。この状況を楽しめと言っても難しいだろうが、けっして受け身の発想になることなく、つねに良いイメージを持ちながら大事な場面で冷静に自分の力を発揮すること。若い選手が多い清水には、そうしたポジティブなエネルギーを、全身全霊で応援を続けるサポーターのためにぜひ発揮してほしい。
以上
2014.10.24 Reported by 前島芳雄
J’s GOALニュース
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