リーグ戦34試合、どの試合に勝ちどれに負けようが勝点を1番稼いだチームが優勝する。1勝の価値はどれも等しく、そこに優劣はない。どんなに良い内容で勝っても勝点は3であることに変わりはないのだ。しかし、サッカーをやるのは人間。それを見るのも人間だ。どうしても勝ちたい相手がおり、勝たなければいけない相手がいる。それが、この鹿島対浦和の一戦だ。
まず、今季の優勝争いを占う上で、非常に重要な一戦となる。現在、両者の勝点差は7。残り5試合での逆転優勝を目指す鹿島にとって、これがラストチャンス。勝てば4差に詰めることができるが、負ければ10差に広がる。引き分けでも残り4試合で勝点差7のままとなり、全勝して勝点を12稼いでも、浦和が2勝した時点で追い越せなくなる。勝利以外の道はない。
浦和にとっても、G大阪、鳥栖という上位陣との対戦を残しており、もし鹿島に敗れるようなことがあれば、優勝戦線は今季もまた混沌とする。鹿島だけ見ていれば優勝できるなら引き分けで十分とも言えるが、5差に迫るG大阪とのアドバンテージを維持するためには勝利が欲しい。
因縁深い試合が多いことがそこに輪をかける。3連覇の始まりとなった07年は、1人少ない鹿島が勝利したことで独走していた浦和にプレッシャーをかけ逆転優勝を呼び込んだ。そして、3連覇を締めくくった09年の対戦では、興梠慎三の決勝点により前人未踏の偉業が達成された。
その興梠は浦和に移籍し、絶対的なエースとして1トップを張っている。カシマスタジアムでのゴールはまだないが、古巣相手に3戦2得点と気を吐く。この試合でも、虎視眈々と得点を狙ってくるだろう。
互いにここ最近の5試合は2勝1分2敗とペースを落としている。前節は共にスコアレスドロー、チームの調子は決して良いとは言えない。しかし、この試合の重要性は、どの選手も強く認識する。
鹿島は試合前々日に非公開練習を実施。ミーティングでは、この試合に対する戦術的な確認だけでなく選手たちからも発言があったようだ。前節の神戸戦では、試合終了直後に主将である小笠原満男が怒りを露わにする場面も見られた。トニーニョ・セレーゾ監督は「あの場でやるべきではなかった。内部のことなので鹿島に帰ってからクラブのなかで話し合いたい」と話していた。もう一度、チーム全体で結束力を高めて試合の臨むと思われる。
「優勝するためには絶対に勝たなければいけない試合」と発言したのは遠藤康。「勝つことだけを考えてやる」と表情を引き締めたのは土居聖真。ダヴィがいない前線において彼らが攻撃の中心となるはずだ。「セットプレーには注意が必要。特に那須さんが強烈」と警戒するのは昌子源。「個人的には慎三さんを抑えたい」と持てる力をすべてぶつけていくつもりでいた。
第17節の対戦は、両者とも一歩も譲らない好ゲームだった。今回も激しい試合となることは間違いない。一つひとつのプレー、個対個の対峙が火花を散らす90分が始まる。
以上
2014.10.24 Reported by 田中滋
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