J1では下位に低迷しているチーム同士の対決となった17位C大阪と18位徳島の対戦は、C大阪が3-1と逆転勝利を収め、連敗を2でストップ。順位こそそのままで、J2降格圏内から抜け出すことはできなかったが、15位甲府ならびに14位大宮との勝点差を2に縮め、自力でのJ1残留に望みをつなげた。一方の徳島は、8試合ぶりの白星はならず。J1での1年目のシーズンにおいて、5試合を残して18位、最下位が確定した。
「前後半の入りはものすごくよかった」と徳島の小林伸二監督も振り返るように、アウェイチームの出足がよかったなかで進んだ試合。長身FW高崎寛之のヘッドを活かした攻撃で、序盤の8分、先手を取ったのは徳島だった。今節の結果次第では、J2降格条件となる16位以下が決まるという、崖っぷちに置かれた中でも、高崎の前線での奮闘、衛藤裕のシュートや、エステバンのボール奪取などが際立ち、「思った以上に選手は前向きにトライしてくれた」と指揮官も認めるプレーを見せていた。
その一方で、C大阪は、前節鳥栖戦惜敗のショックもあってか、重苦しい雰囲気の序盤だった。しかし、その流れを断ち切ったのは、C大阪U-18時代から大熊裕司監督の指導を受けてきた門下生。15分、杉本健勇のポストプレーから、南野拓実とともにチャンスを切り開き、杉本が右からループシュート気味の折り返しのボールを送る。これが、徳島GK長谷川徹の手をはじき、そのままゴールイン。記録上、オウンゴールとなった得点で、試合を振り出しに戻した。「前半で1点を返せていなかったら、どうなっていたか分からない状況だった」と山下達也も振り返るような展開だっただけに、公式戦3試合無得点が続いていた中、この1点は、C大阪を蘇らせた。
1-1で迎えた後半も、先に徳島に決定機を作られたが、濱田武の直接FKがゴールネットを揺らしたものの、オフサイドの判定でノーゴール。追加失点をまぬがれたC大阪は、仕掛ける姿勢で、状況を打破する。ここで持ち味を発揮したのは、これまで苦しみ続けた桜の11番だった。左サイドから得意のドリブル突破で切れ込んだ楠神順平が、ペナルティーエリア内に勢いを持って侵入。そこで相手DFに倒され、PKを獲得する。「ファウルになった瞬間、絶対に(PK)を蹴ろうと思った」と言うように、ボールを離さず、志願のPKに臨むと、ひたすら祈り続ける桜色のサポーターの目の前で、ど真ん中に堂々と蹴り込んだ。ちなみに、このPKは、今季チーム初のもの。そして、楠神にとっては、1年10カ月をかけてつかんだ、C大阪加入後初得点。さらには、本当に大事な場面で生まれた、チームを救う価値ある勝ち越し弾となった。前節、出場停止で出られなかった男は、「チームに迷惑をかけてしまい、しんどいときに力になれなかったので、絶対にどうにかしようと思った」と、この試合にかけていた。その熱い想いが、ここで実った。
そして、徳島に引導を渡す、ダメ押しとなる3点目を奪ったのは、途中出場のカカウ。82分、CKからのこぼれ球を、長谷川アーリアジャスール、杉本が立て続けにシュート。これは相手守備陣に阻まれたが、クリアをカットしたカカウが、冷静にゴールネットに叩き込んだ。これでカカウは、最近5試合で3得点。元ドイツ代表FWが、ここぞの場面で、またも決定力を見せつけた。その直後には、染谷悠太が2枚目の警告を受けて退場となり、終盤、10人での戦いを強いられたC大阪だが、徳島の反撃をしのぎ、キンチョウスタジアムでの今季ホームラストゲームを勝利で飾った。
「立ち上がりは少し固くて、不用意な失点をしたが、よく持ちこたえながら、自分たちのペースに引き込めたと思うし、選手もたくましくなったなと思う」と述べたのは、C大阪の大熊監督。チームの成長を感じさせる勝利だった。ただし、順位は17位と、依然として厳しい立場に置かれていることは変わらない。「まだまだ状況は変わっていないし、しんどい試合は続くので、1試合1試合しっかり集中してやっていきたい」と楠神も言うように、残り5試合で、J1残留を果たすべく、桜色の戦士たちに息つく暇はまだない。
徳島としては、今節も複数失点を重ねるなど、今季の課題でもある守備の破綻がそのまま出た試合でもあった。四国初のJ1というチャレンジでは、一度も順位を上げられず、最下位という悔しい結果になったが、残り5試合、「クラブとしても、個人としても、前進できるような戦い方をしていきたい」(衛藤)、「その5試合を100%で戦うしかないと思いますし、1つでも多くの勝利を狙いたい」(アドリアーノ)と、J1での爪痕を残すべく、最後まで徳島らしく全力で戦い抜くことを誓っていた。まずはホームJ1初勝利をかけて、次節、名古屋戦に挑む。
以上
2014.10.23 Reported by 前田敏勝
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