天皇杯の準々決勝で山形に惜敗し、失意の帰郷となった北九州。台風の影響による練習不足が敗因のひとつに挙げられるが、幸か不幸かミッドウィークに試合をしたことで敗戦を引きずる間もなくリーグ戦を迎えられる。対戦相手は東京V。順位こそ離れているもののひとつでも上に行く使命を背負っているのは同じ。高いモチベーションを保ってゲームに臨んでいきたい。
今の北九州に求められていることは少なくとも2つある。天皇杯・山形戦の「結果」に対するメンタリティの回復と、その試合で起きた「内容」に関わるメンタリティの向上だ。
結果に対する部分ということでいえば、まずは早く吹っ切ること。チームはもちろんサポーターにとっても天皇杯をひとつの目標に掲げてきたことは否めず、ベスト8敗退という結果の消化が急がれる。ただチームに限って言えば上述のとおり引きずる間もないというのが救い。「もう1回メンタルを強く持ってエネルギッシュに行けるかがポイント」と柱谷幸一監督。試合翌日は練習開始前に選手たちに時間を掛けて言葉を投げかけ、しっかりと切り替えを意識させた。
より大きな問題は試合後ではなくゲームの中で垣間見えたメンタリティの修正だ。山形戦では北九州らしく粘り強く守っていたが、本来ならばどこかで入れるべき攻撃スイッチが最終盤まで入らず、重心の低いままゲームセット。池元友樹も「押し込める時間をもっと作らないといけない。意思統一が必要だと思う」と硬い表情で振り返った。
上下動がちぐはぐで攻撃スピードが上がらなかった。「それぞれ(の選手)が1.5倍は動かないと。ボールを持てなさすぎた」と話したのは星原健太。得点へと向かっていけるかどうかは「意識の部分だと思う」と説く。八角剛史も呼応するように「噛み合っていないところがある。グループでどうするのかをやっていかないと」と現状を厳しく受け止める。
特に失点し1点を返さなければいけない状況にありながら意識が上がらなかったことは楽観できる状態ではない。リーグ戦で続いているドローゲームを再び白星に変えるには、今一度自分たちのサッカーの良さを思い出すことが重要だ。終盤戦にさしかかってチームの成熟度が高まってきているはず。手を入れるべきは意識レベルの部分だからこそ中3日でも修正は可能。チームが意識を統一させ、組織的なディフェンスと攻める意欲の溢れる攻撃が見られるか、メンタリティの真価が問われる試合となる。
さて、北九州と東京Vは天皇杯を含め今季はすでに2度の対戦がある。しかし、東京Vの首脳陣はもとより、選手の顔ぶれにも変化があり、過去のゲームがどれほど90分を見通す上での参考になるかは分からない。後半戦でキーマンとなっていた中後雅喜が出場停止で直近の試合からも変化が起きるだろう。ただ人数を割いたポゼッションと相手のストロングポイントへの対応という根本的な部分に変化はなさそうだ。
序盤戦こそ奮わなかったが夏以降は若い選手の躍動も光る東京V。若いチームであるがゆえに勢いに乗ればゲームの主導権を握り続けることもできるだろう。過去4戦無失点かつ負けなしで首位・湘南とも善戦している。中盤から前線に掛けては人の入れ替わりがあるが、北九州時代から鉄壁の守りを構築していた佐藤優也、金鐘必のアグレッシブなディフェンスは健在。また天皇杯2回戦ではミスの目立ったニウドがリーグ戦では落ち着きを取り戻し、効果的なボールを供給できている。こうしたストロングポイントを発揮しつつ、相手の長所を抑えていく東京Vらしさを出せれば試合の流れをも引き込めるだろう。
東京Vに比べてリトリートやグループディフェンスが基本線の北九州。サッカースタイルの違いは明白で、サッカーのいろいろな側面を見ることのできる試合となる。ただ心配なのは北九州がベーシックな部分を発揮できるメンタリティを回復させているかどうか。互いがベストコンディションでぶつかれば、それぞれの持ち味を出し合った天皇杯2回戦と似たような好ゲームになる可能性は高い。そのためにも北九州の高い意識が必要だ。
ところで、このゲームでは8月に池元友樹と松本拓也の両選手が船で訪れた北九州市の離島・藍島の子どもたちが招かれエールを送る予定。思い出深い交流だっただけに子どもたちのエネルギーも追い風にゲームに臨みたい。
以上
2014.10.18 Reported by 上田真之介
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