エキサイティングなゲームだった。群馬が、平繁龍一の全3ゴールに絡む活躍で、昇格争いの重圧を受ける岡山を返り討ちにした。1−2のスコアから今季初の逆転勝利を飾ったチームは最近5試合で4勝を叩き出す破竹の勢い。秋葉忠宏監督が今季限りで退任することが決まっているが、シーズン佳境に入りチームは著しい成長をみせている。16位に浮上した群馬だが、勝利数は6位岡山と同じ13勝。この強さはもはやフロックではない。
群馬の先制点は27分だった。劣勢の時間帯だったが3バックに入った黄誠秀が右サイドを一気に駆け上がり、ゴール前へ鋭いクロスを送る。そのクロスをドンピシャのタイミングで合わせたのは平繁龍一だった。岡山3バックのギャップに入った平繁は、右からのボールをヘッドで冷静にとらえてゴールネットを揺らす。「簡単そうに見えて難しいクロス。首を振ると流れていってしまうので、じっくりと待ってニアを狙った」(平繁)。この1点が、点取り合戦の始まりだった。
1点リードした群馬だが、その後は岡山の鋭い攻撃にさらされることになる。前半アディショナルタイムには3バックの背後を妹尾隆佑に突かれて同点とされると、59分には久保裕一の背後からバイタルへ突進してきた押谷祐樹の強烈なショットでニアのネットを揺らされてしまう。これが昇格争いに絡むチームの底力なのか。岡山の勢いに押された群馬は一気に失速。停滞したムードがスタジアム全体を包んでいく。
嫌なムードを払拭したのは、加藤弘堅が繰り出した一本のパスだった。68分、自陣でボールを受けた加藤は前線を走るロビーニョへ約40メートルのロングフィード。それを受けてペナルティエリアに入ったロビーニョはマイナスのラストパスをゴール前へと送る。そのチャンスを逃さなかったのは平繁だった。密集に潜った群馬のエース兼主将は、左足をコンパクトに振り抜いて同点ゴール。一度は静まり返ったスタジアムに魂を吹き込む。
決勝ゴールは、71分の鮮やかなサイド攻撃から生まれた。チーム一体のパスワークから右サイドをえぐったSB久富良輔がゴール前へ。GKとDFの間に入ったボールを平繁がニアでフリック、ゴール前へこぼれたところに駆け込んだのは宮崎泰右だ。「自分の前へ流れてきたのでどんなことをしても押し込むつもりだった」(宮崎)。混戦の中、宮崎が左足で蹴り込んだゴールが決勝点となり群馬が再逆転勝利を収めた。
岡山は痛恨の逆転負けとなった。ビハインドを覆して一度は逆転に成功したものの、68〜71分までのわずか3分間で2失点して勝点3が手元からこぼれ落ちてしまった。結果的には、平繁とロビーニョの2人を守備陣が止めきれずに力負けする形となった。後半、群馬との撃ち合いに付き合ってしまい、岡山らしくない流れになってしまったことが悔やまれる。ただここで気落ちしている暇はない。「自分たちがやってきたことを信じて戦うだけ」(影山監督)。ここからは一戦一戦がサバイバルマッチ。昇格争いから脱落した群馬からすれば、岡山の状況はうらやましい限りだ。
群馬にとって岡山を逆転で下したことは大きな自信となる。夏まで長期離脱していた平繁のコンデションが戻り、ロビーニョとの最強2トップか確立されたことでチームが目覚めた。この5試合で平繁は3ゴール3アシスト、ロビーニョは4ゴール1アシストと、まさに“やりたい放題”。攻守が連動する群馬は、チームの完成形が見えてきている。「選手たちが本当に頼もしいゲームをみせてくれた」(秋葉監督)。最近5試合で4勝を荒稼ぎした群馬は、クラブ史上最強のチームになりつつある。この進撃は、誰にも止められない。
以上
2014.10.12 Reported by 伊藤寿学
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