試合開始前、先の御嶽山噴火による被害者への黙祷が行われた。この噴火によって多くの方が亡くなられたが、その中には前節の試合後に反町康治監督が触れたように松本サポーターも存在していた。その方は特に船山貴之と岩上祐三を応援していたと伝えられ、「何と言っていいのか分からないが、被害に合われた方への思いを背負ってピッチ上で表現したい」(岩上)と更なる健闘を誓って、臨んだ一戦となった。
前節から先発メンバーに変更なしの松本に対し、大分は試合直前の練習で西弘則が負傷。土岐田洸平を右SBに起用し、松本の1トップ2シャドー対策にボランチを2枚配置した4−2−3−1のフォーメーション。序盤はこの並びが奏功したか、大分は攻守にバランスも良く、隙を見せない。後方からのロングボールもダニエルを中心にはね返し、素早くセカンドボールを拾って攻撃に転じる。26分には立て続けにシュートチャンスを作るなど、主導権は完全に大分が握っていた。
しかし、この苦しい時間を無失点で耐え切ると、高い位置でボールを捕獲しはじめた松本に得点の匂いが漂いはじめる。30分には岩上のロングスローをニアサイドの山本大貴が頭でフリック、最後は飯田真輝が飛び込む。このヘディングシュートはGKの正面ながら場内が沸き、しばらく松本が攻勢に転じることになった。一進一退となった前半は、結局スコアレスのまま終了。
後半、エンジンのギアを上げたのは松本。迫力ある攻めで大分を圧倒し、選手を自陣へと押し込む。CKなど多くの好機を作るが、決めきれず。「奪った後のファーストパスをしっかり味方へ」と反町監督もハーフタイムに指示を出していたが、この日の松本はパスの精度があまりにも悪く、せっかくボールを奪ってもそこからの攻撃がぶつぎれになってしまっていた。
それでも、執拗なジャブは相手の体力を確実に奪っていく。最終ラインの裏をしつこく狙う松本の攻撃がはまり、大分の出足も鈍り出した。時間的にも先制点を得た側が大きく勝利に近付く。このような展開でモノを言うのはエースがいるかいないか、だ。71分、カウンターから岩上のパスを受けた船山がそのまま中央へ切り込むと、相手ディフェンダーをかわしてシュート。その直前に同じような流れから打ったシュートを外していたが、今度はバーに当たりながらもゴールネットを揺らすことに成功。その10分後には大久保裕樹のラインの背後を突くパスに反応した船山がペナルティエリア内で慌てることなくGKの頭を超すループシュートで追加点。これで試合の趨勢は決まった。
船山自身は「前半はなかなかチャンスがなかったが、それでも90分の間には1、2回は必ずチャンスが来る。そこを決めようと思っていた」と試合後にさらりと語ったが、「エースが点を取ってくれれば、やはりチームも盛り上がる」という田中隼磨の言葉通りの展開となった。この2得点で自身もJ2得点ランキングでも単独2位へと浮上。大黒将志との差は5点まで縮まり、チームも連勝を飾った。
敗れた大分だが、やはり前半の良い時間帯のうちに先制出来れば、試合展開は大きく変わったに違いない。この日は末吉隼也、為田大貴ら二列目の選手が積極的に飛び出したが、ゴールを割ることが出来ず。膠着状態の試合を決めたのは、やはりエースの存在だった。
以上
2014.10.12 Reported by 多岐太宿
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