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【J2:第35節 横浜FC vs 松本】レポート:西が丘のスタジアム全体に「松本山雅」の世界観を展開。自動昇格に向け見事な圧勝劇。(14.10.05)

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スコアは松本が2-0で勝利。シュート数に至っては松本が20本に対してホームの横浜FCは8本。戦前に予想されていた通り、松本の局面でのハードワークに横浜FCが苦しみ続ける展開で、結果・内容とも松本の圧勝と言える試合だった。横浜FCと松本を分けたのは、今年ちょっとしたキーワードになった「自分たちのサッカー」へのこだわり。その自分たちのサッカーの徹底度の差が、大きな結果の差となった試合だった。

前述の戦前の予想の元になるのは、ボールを繋ぎながら運ぶ横浜FCに対して、松本がハイプレスで、局面を激しく行くことでそのパスワークを分断し、松本のストロングポイントであるショートカウンターがハマるという構図。ポゼッション型のチームが、ハイプレスとショートカウンターに敗れ去るという最近よく見かける形だ。横浜FCは、この構図に弱く、直近でも第32節長崎戦(9/19@長崎県立)でこの形で苦戦し、敗戦を喫している。この構図で、ポゼッション型のチームが活路を見いだせるのは、ボールを早く動かすこと。相手のハイプレスをいなして、当然空いてくるスペースをうまく使うことだ。しかし、この試合は松本が狙い通りのプレーを100%出し切ったのに対して、横浜FCには、自らのスタイルを出し切る思い切りに欠けてしまった。

その構図をはっきりさせてしまったのは、立ち上がり2分の松本の先制点。松本が横浜FCの右サイドの裏を使った攻撃で得たCKを、犬飼智也が決める。「横浜FCはCKからの失点がここまで2点なんですよ。しかも一発でドンっというのは一度もない」(反町康治監督)という横浜FCの守備陣を研究し、ファーでフリーの犬飼を使う練習の成果を見せつけた。この直前、岩上祐三のロングスローのクリアを見送りわざとCKにしているが、その過程すら狙い通りかと思わせる流れだった。この先制点で、流れは一気に松本へ。冒頭に書いた、おあつらえ向きの展開となる。

横浜FCは、この試合いつもの4-4-2から、3-6-1の陣形でスタートさせるが、試合開始時から3バックを採用したのは、第9節の湘南戦(4/26@ニッパ球)以来2度目。湘南も松本と似たタイプのチームだったが、このときは湘南から先制点を奪った。しかし、今節はこの形がハマらない。リーグ後半戦、ハイプレスを受けた時には長身のパクソンホを使うという選択肢を併用しているが、この試合でもその結果として横浜FC側も浮き球のボールが多くなる。しかし、このことで松本の土俵に乗ってしまう。期待されたパクソンホを含め、浮き球となる50:50のボールの大半を松本に先に奪われる展開となる。ハイプレスを受け、浮き球に戦場を移され、そのルーズボールで松本に完敗。松本は奪ったボールをサイドに運び、ロングスローやセットプレーに繋げていく。その構図は、試合の最後まで続いた。そして、31分に岩上祐三の鮮やかなFKで松本が追加点を挙げる。

横浜FCが、パスワークに目覚めたのは前半の40分を過ぎてから。ようやく、ボールを地上に置いた形で、松本のスペースを使い始める。前半が終了し、ロッカールームに引き上げる前にピッチ上では横浜FCのメンバーが緊急会議を開始。「僕たちは本来はそういう風にはやってきていない。繋いでできないとそれまでだし、繋がないと俺たちのやってきたことじゃないと話して、もう一度繋いでやろう」(小池純輝)という話し合いとともに、後半は4-4-2のフォーメーションに戻して後半に入る。後半立ち上がり、松本がカウンターから2本決定機を得るがこれを外すと、ようやくボールを繋ぐ横浜FCのスタイルを徐々に表現する。ただ、それも、松本の途切れないハードワークの前に、本来の姿から比べてもボールの動くスピード、ワンタッチでいなしていく勢いはなく、残り45分という時間はあまりにも短かった。後半のシュートは松本9本に対して横浜6本と改善は見られたものの、全体を通して松本の完勝という構図は変わらなかった。

先にアウェイの松本を総括すると、足踏みしていた9月の停滞感を払拭する勝利となったのではないだろうか。局面でのハードワークの質は、ここ数試合と比べて本来の姿に回復した。単に戦術的な構図だけではなく、相手に脅威を与えるハイプレス、浮き球のボールへの執着など、個々の局面で勝ち続けたことの方が、この試合の大きな収穫だろう。味の素フィールド西が丘に「松本山雅」ワールドを展開したサポーターを含め、全体として自らのアイデンティティを表現しつつけた。

一方の横浜FCは、山口素弘監督が「(システムの)変化をさせる決断をしたのは私なので、負けた原因は監督」と潔く認めたが、いろいろな想定の中で自らの強みを出し切る思い切りに欠けたことが、試合のなかで大きな傷となってしまったのではないだろうか。繋ぐことに120%の力を出す、あるいは浮き球も併用するのであればその競り合いでは絶対に負けない。いずれにせよ、その思い切りで勝つことが出来なかった。ただ、ハーフタイムの緊急会議は、自己修復力の表れとも言える。残り7試合勝ち続けるために自らに必要なことを取り戻せるかどうか。キャプテン寺田紳一は「監督も120%諦めていないと言っていましたし、諦めている人は練習に来なくていいと言っていた。次の練習でわかると思います。来なかった奴は諦めていると」と語ったが、この試合は横浜FCに覚悟を問うている。

お互いに対照的な戦術を持つチームの対決。世の中に万能な戦術はなく、また戦術に上下はない。勝負に直結するのは、いかに戦術の良さを表現できたか。相手が良さを消してきても、それにつられて自らの良さを出さないという選択肢はない。覚悟と思い切りの大事さが浮き彫りとなった。

以上

2014.10.05 Reported by 松尾真一郎
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